托卵女子とは?子どもが自分の子ではないと判明したときの対処法

托卵女子とは?子どもが自分の子ではないと判明したときの対処法

3、托卵女子の夫が養育費(監護費用)の支払いを拒否する方法は?

托卵女子の夫が子どもへの養育費(監護費用)の支払いを拒否するには以下の方法がありますが、必ずしも容易なことではありません。

なお、「養育費」と「監護費用」はどちらも子どもを育てるために必要な費用のことで、同じ意味に捉えて差し支えありません。法律上は「監護費用」と呼ばれますが、日常では「養育費」と呼ばれることが多いです。

(1)嫡出否認の訴え(1年以内)

自分の子ではないことが判明した場合、夫は「嫡出否認の訴え」を起こすことができます(民法第774条)。

「嫡出否認」とは、嫡出推定を覆すことであり、これが認められると嫡出推定が及ぶケースでも法律上の親子関係が否定されます。

手続きとしては、まず家庭裁判所に「嫡出否認調停」を申し立てます。この調停で当事者が「夫の子ではない」という合意をした場合、DNA鑑定などによってその合意が正当であると認められれば、その合意に従った審判がなされます。それにより、夫と子どもは親子ではなくなります。

合意ができない場合、夫はさらに家庭裁判所に「嫡出否認訴訟」提起します。この訴訟で夫が勝訴すれば判決で嫡出が否認され、夫と子どもとの親子関係が否定されます。

ただし、嫡出否認の訴えは夫が子の出生を知ったときから1年以内に行わなければなりません(同法第777条)。自分の子ではないことを知らなかったとしても、1年が経過してしまうと嫡出推定を覆すことはできなくなります。

(2)親子関係不存在確認の訴え(利用条件あり)

夫が子の出生を知ったときから1年が経過してしまった場合でも、「親子関係不存在確認の訴え」を起こせる可能性があります。

手続きとしては、嫡出否認の訴えの場合と同様、まず家庭裁判所に「親子関係不存在確認調停」を申立て、調停で当事者の合意が得られない場合はさらに家庭裁判所に「親子関係不存在確認訴訟」を提起します。

調停で合意が得られるか、訴訟で夫が勝訴した場合は夫と子どもとの親子関係が否定されます。

ただし、親子関係不存在確認の訴えを起こせるのは、妻の妊娠時に夫婦が別居していたり、既に夫婦関係が破綻していたりして、夫婦が性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるような場合に限られることに注意が必要です。

例えDNA鑑定で夫と子どもとの親子関係が否定されていたとしても、上記のような事情がない限り、基本的に親子関係不存在確認の訴えによって父子関係の存否を争うことはできないとした最高裁の判例があります(最高裁平成26年7月17日判決)。

子どもが社会的に安定して生活していくためには、嫡出推定によって法律上の父子関係を確定させ、家庭の平和を維持することが重要です。

そのため、民法の規定は法律上の父子関係と生物学上の父子関係とが一致しない場合が生じることも許容していると最高裁判例で述べられているのです。

そうすると、妻の妊娠時に夫婦が同居していたケースでは、調停で妻が夫の子ではないことに同意しない限り、親子関係の不存在を認めてもらうことは難しいということになります。

(3)実の父親に子どもを認知してもらう

(2)のケースで、実の父親に認知してもらうことができれば、そちらで法律上の親子関係が生じますので、夫と子どもとの親子関係は否定することも可能となります。

したがって、実の父親が判明している場合には、その人に認知してもらうように求めることが考えられます。

任意に認知してもらえない場合は、「認知の訴え」を起こすことが可能です。

認知の訴えを起こせるのは、子どもまたはその直系卑属、および法定代理人に限られますが、夫も現時点では子どもの法定代理人ですので、認知の訴えを起こせます。

手続きとしては、やはり家庭裁判所へ「認知調停」を申立て、調停で合意ができない場合は改めて家庭裁判所で「認知訴訟」を提起します。

調停で合意が得られるか、訴訟で夫が勝訴した場合は認知の効力が生じますので、夫と子どもとの親子関係が否定されます。

(4)妻に対して権利の濫用を主張する

親子関係を否定できないとしても、事情によっては妻からの養育費の請求が「権利の濫用」に当たることを主張し、支払いを拒否できる可能性があります。

養育費の分担に関する事案における最高裁判例で、

  • 夫がこれまでに子どもの養育監護のための費用を十分に分担してきたこと
  • 夫の子ではないことを妻が知っていたにもかかわらず、夫に告げなかったために夫は親子関係を否定する法的手段を失ったこと
  • 離婚に伴い妻は相当多額の財産分与を受けること

といった事情を総合的に考慮し、妻からの養育費の請求を権利濫用に当たるとして認めなかったものがあります(最高裁平成23年3月18日判決)。

ただし、DNA鑑定で夫と子どもとの親子関係が否定されるだけでは、妻からの請求が権利濫用に当たるわけではないことに注意が必要です。

夫がこれまでに十分な養育費を負担していなかったり、離婚後に妻だけで子どもを養育することが経済的に厳しかったりする場合には、妻からの養育費の請求が認められる可能性が高いです。

4、托卵女子と離婚はできる?

事情にもよりますが、夫が妻から「あなたの子よ」と騙されて他人との子どもを育てされられていた場合は、妻と離婚できる可能性があります。

(1)托卵は不法行為に当たる可能性がある

子どもが生まれた時点で他人の子であるということが分かっていれば、通常、その子を自分の子として育てたいと思う男性はいません。

それにもかかわらず妻が夫を騙して自分の子であると信じ込ませ、育てさせる行為は民法上の不法行為に当たります。

ただし、妻が妊娠初期の時点で夫との子か他の男性との子か分からないと正直に告げ、夫が「どっちであっても自分が育てる」と言ったような場合は、不法行為が成立しない可能性が高いです。

この場合は妻が騙したわけではありませんし、夫も自分の意思で判断しているからです。

(2)不法行為が成立すれば離婚が可能

通常、自分を騙して他人との子を自分に育てさせるような妻と夫婦関係を続けることは難しいといえるでしょう。

この場合は、「婚姻を継続しがたい重大な事由」という法定離婚事由(民法第770条1項5号)が認められる可能性が高いです。

法定離婚事由があれば、妻が離婚を拒否したとしても裁判をすれば強制的に離婚できます。

また、結婚後に浮気をして他の男性との子を出産した妻に対しては、「不貞」(同条1号)を主張して離婚できる可能性もあります。

(3)慰謝料を請求できることもある

何年も自分の子だと思って育ててきたのに、実は妻に騙されていて他人の子であることが判明したときの、夫のショックや怒り、失望などの精神的苦痛には計り知れないものがあります。

托卵が不法行為に該当する場合は、夫は妻に対して慰謝料を請求することもできます。ただし、慰謝料の金額は様々な事情によって異なります。

前記「1」でご紹介した例のように、妻が意図的に夫を騙したケースでは高額の慰謝料が認められやすいでしょう。

一方で、妻自身も夫の子か他の男性との子かが分からず、夫も出産直後の時点で血液型などによって自分の子ではないと知る機会があったにもかかわらず、自分の子であると思い込んでいたような場合には、慰謝料は低額となる可能性があります。

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