幻のびやびやかつおを味わいに、カツオの漁獲高四国一の愛南町へ~港町ホッピングで見つけた一期一会めし01~

幻のびやびやかつおを味わいに、カツオの漁獲高四国一の愛南町へ~港町ホッピングで見つけた一期一会めし01~

お魚がすごいという噂の愛媛県・南予エリアへ港町ホッピング。まずは、松山空港から美しい海岸線を一気に南下して高知県境にある愛南町へ。カツオの水揚高が四国一の深浦漁港に水揚げされる愛南びやびやかつおの噂を聞きつけて訪れた。食後には醤油、岩牡蠣と驚きの連続!ライターの岡田カーヤさんとフォトグラファーの関めぐみさんが訪ねてきた海街の日常をリアルに綴ります。

【愛媛県・愛南町】県内唯一のカツオ水揚港へ。幻ののびやびやかつおは幻だった

【一期一会めし】
市場食堂のかつおさしみ定食びやびやかつおには出会えず、前日に水揚げされたカツオの刺身。口の中でほどけるようなやわらかな食感。刺身に味噌汁と副菜、ごはん付きで1050円

びやびやとはなんぞや。松山空港から愛南町へ向かう車の中、何度もびやびやという言葉を発しながら愛南町で水揚げされるカツオへと思いをはせた。

そのカツオは、カツオであるはずなのにかみ切れないほどモチモチしているらしい。愛南町の深浦漁港に隣接する「市場食堂」店主、田下安宏さんは「包丁で切るのが難しいくらい弾力があるんです」という。

カツオの水揚げで四国一を誇る愛南町では、条件をクリアしたものだけを「愛南びやびやかつお」と呼ぶ。個人販売はなし。ほぼ愛南町でしか食べられない「幻のカツオ」なのだ。びやびやとは、「鮮度が非常に高く、身の締まった状態」の魚に使う愛南地域の浜言葉だと教えてもらった。通常、カツオは釣った翌日または翌々日にならないと市場へ出荷されないのに対し、深浦漁港では1日に2回競りがあるため、釣り上げてすぐに出荷できる。「びやびやかつお」と呼ばれるためには、釣ったその日に戻ってきた漁船による“日帰りカツオ”であること、さらには船上で活け締めして血抜き処理済のもの、鮮度を保って保管されたもので、愛南漁協が品質を認めたものである必要がある。

もちろん、水揚げがないときは食べられない。天気は回復傾向にあったものの、愛南へ向かう前日、海が荒れていた。そのため、この日、漁に出た船はいなかったという。落胆でがっくりと肩を落とすと、市場食堂の田下さんは「いやぁ、ここのところ連日水揚げがあったんですけどねぇ」と笑いながら、前日に水揚げされたカツオの刺身を出してくれた。びやびやでもなく、日戻りでもない。けれども、厚く切られた先端がぴんと鋭角に立っているカツオは、透明感があり薄いピンク色をしている。食べてみると、モチモチはしてない。けれど、口の中でふわっとほどけるほどにやわらかい。甘めの醤油が、ほどよくのった脂と絡まり、うまみを倍増させてくれている。なんと、おいしや! 肉厚のカツオを夢中になって次々とほおばった。

それにしても愛媛の醤油はかなり甘めだとは知っていたけれど、この醤油は特に甘い。しかも、みたらし団子のようなとろみまである。聞くと町内にある醤油蔵が百年使い続けている杉樽で2年間熟成させたものだという。

それはぜひ見てみたいと、急遽訪ねた「フジマルツ醤油」は、明治39年の創業時から時間が止まっているかのようだった。週2回丁寧に撹拌しながら、2年間かけて熟成させたもろみを1週間かけてじわじわ搾る。それが彼らの当たり前。素晴らしい宝だと思った。

さらにもうひとつ、愛南町にはとんでもない隠し球があった。それは御荘湾で養殖された岩牡蠣。5つの川が流れ込む湾には山の栄養分も貯えられ、海水が緑になるほど植物プランクトンが豊富。

愛南町で唯一牡蠣小屋を持っている「上甲商会」が養殖した岩牡蠣は驚くほど大きく、手のひらサイズのものまである。「こんなサイズのものは、めったに市場に並びませんよ」と代表の上甲仁さんはにやりと笑う。

「大きいのは大味と思われがちですが、岩牡蠣は例外。今の時期は卵を持っていてそれがどんどん大きくなっていく。岩牡蠣は卵を食べるようなもの。濃厚なんです」と上甲さん。

そう言えば、岩牡蠣を牡蠣小屋で食べるのは初体験だ。まずは生で。ふるふるの岩牡蠣へと吸いつくと、ぼんと破裂するかのように濃厚なミルクが流れ込んできた。焼き牡蠣にすると、磯の香りがさらに濃くなるようで、ぷるぷるする身にかぶりつくと、白子のようなクリーミーな卵があふれ出す。これはたまらない。

合わせるのは愛南町産の稀少柑橘、河内晩柑で作ったリキュール「愛南ゴールドサワー」。ウォッカとジンがベースで、柑橘の爽やかさが牡蠣の香りを引き立ててくれる。土地の食べ物と土地の酒はよく合う。最高だ


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