婚約破棄したい|トラブルなく婚約破棄をする方法

婚約破棄したい|トラブルなく婚約破棄をする方法

3、婚約破棄の法的性質

ここからは、婚約破棄に関する法的な問題について解説していきます。

(1)婚約破棄とは?

そもそも婚約とは、男女が結婚することをお互いに約束することであり、法律上は「契約」の一種です。婚約破棄は、この契約を一方的に解除することを意味します。

婚約して契約が成立した以上は、お互いに結婚の実現に向けて準備を進めていく義務を負うことになります。この義務を果たさなければ、契約によって負った債務を履行しない「債務不履行」に該当します。

また、不当な婚約破棄は相手の正当な権利・利益を侵害する「不法行為」にも当たります。

債務を履行しなかった者や不法行為を行った者は、相手に生じた損害を賠償する責任を負います(民法第415条1項本文、709条、710条)。

ただし、正当な理由による債務不履行では、損害賠償責任を免れます(同法第415条1項ただし書き)。

また、正当な理由による婚約破棄では、通常、不法行為は成立しません。

そのため、婚約破棄によって法的な責任を負うかどうかは、正当な理由があったかどうかにかかっています。

(2)相手に原因がある場合

婚約した2人が結婚しても円満で正常な夫婦生活を営めないような原因を相手が作った場合は、婚約を破棄する正当な理由があると認められます。

例えば、以下のような事情が相手にあれば正当な理由と認められる可能性が高いといえます。

浮気をした
暴力を振るった
暴言や侮辱行為をした
年齢、年収、職業など重大な事情について嘘をつかれていた
働けるのに働かず収入が激減した
多額の借金があることを隠していた
性交渉を求めても応じない
無断で行方をくらましたり、連絡を絶ったりした

状況によっては、むしろ婚約を破棄せざるを得なかったことについて、相手の責任を問うことも可能です。

(3)相手に原因がない場合

一方で、相手に上記のような原因がない場合は、婚約を破棄する正当な理由があるとは認められない可能性が高いといえます。例えば、以下のような事情は正当な理由とは認められないでしょう。

性格や価値観が合わないと思う
他に好きな人ができた
もっと仕事(または家事)ができる人だと思っていた
もっと優しい人だと思っていた
相手の(または自分の)親から反対されている
なんとなく結婚したくなくなった

4、婚約破棄をする場合の費用負担・損害賠償の相場金額はいくら?

正当な理由なく婚約を破棄した場合は、結婚に向けて既に支払った(あるいは支払い義務が生じた)費用を負担したり、相手に対して損害賠償請をしなければならない可能性があります。

ここでは、どれくらいの金銭的負担がかかるのかを解説します。

(1)費用負担

婚約を破棄するときには、以下のような費用を既にどちらかが支払っているか、あるいは支払い義務が生じていることが多いでしょう。

結婚式・披露宴・新婚旅行などのキャンセル費用
新居の契約金
新居で使う家具・家電などの購入費用
仲人への謝礼金 など

婚約解消の場合であれば、これらの費用をどちらが何割負担するかを話し合って決めます。

婚約破棄の場合でも、話し合いで合意できるのであれば、負担割合を決めることが可能です。

しかし、正当な理由のない婚約破棄の場合は、破棄した側が全面的に負担しなければならないのが原則となります。

(2)慰謝料だけじゃない!損害賠償における損害の種類

正当な理由のない婚約破棄で相手に損害が生じた場合には、その損害を賠償する責任も負わなければなりません。損害の種類としては、以下のものが挙げられます。

①精神的損害

精神的損害に対する賠償金とは、慰謝料のことです。

婚約した時点で、相手はあなたと結婚して幸せな夫婦生活を送り、家庭を築いていこうという期待を抱きます。婚約という契約が成立した以上、この期待は法的に保護されます。

婚約破棄によってこの期待が裏切られることにより相手に精神的損害が発生しますので、あなたは慰謝料を支払わなければなりません。

②財産的損害

婚約破棄では、慰謝料だけでなく相手の財産的損害についても賠償しなければならないことがあります。

財産的損害は、主に物的な損害(積極損害)と逸失利益(消極損害)の2種類から成ります。

【積極損害】

積極損害とは、婚約破棄に伴って不要になった結婚の準備のための費用全般を指します。上記(1)でご紹介した「費用」のことです。

【消極損害】

一方、消極損害とは、結婚することを前提に会社を退職・転職したものの、結果的に婚約破棄となったことで本来得られていたはずの利益が得られなかった…というようなケースのことです。過去の判例では約1年分の逸失利益(=退職しなかった場合に受け取れていたはずの給与)が認められた事例もあります。

ただ、最近は昔に比べて共働きの夫婦が増え、結婚=退職の必然性も薄くなっていることから、消極損害については認められないパターンが増えていることも事実です。

(3)婚約破棄による損害賠償の相場金額

それでは、損害賠償金がどの程度の額となるのか、相場をみていきましょう。

①相手に原因がある場合

婚約破棄の原因が相手にある場合は、損害賠償金を支払う必要はありません。

むしろ、相手が浮気やDV、モラハラなどの不法行為を行った場合は、こちらから不法行為に基づく慰謝料を請求することが可能です。

慰謝料の相場は数十万円~300万円程度です。幅が広いですが、以下のような個別の事情に応じて金額が決まってきます。

【慰謝料が高くなる事情】

たとえば、

交際期間が長い
婚約破棄される側の女性が妊娠している
婚約破棄によって中絶を余儀なくされた
結婚の準備がかなり進んでいる
結婚準備のために会社を退職している

これらの事情に当てはまるケースでは、それだけ結婚への期待度が高い=婚約解消のダメージが大きいということで、高額な慰謝料が認められやすい傾向にあります。

【慰謝料が低くなる事情】

上記に対して、

スピード婚(交際期間が短い)
両親や友人、会社の同僚などにまだ結婚の報告をしていない
慰謝料を請求する相手の支払い能力が低い

こういった事情がある場合、認められる慰謝料の金額も低くなりがちでしょう。

②相手に原因がない場合

婚約破棄の原因が相手にない場合は、こちらから債務不履行、あるいはさらに不法行為に基づく損害賠償金を支払わなければなりません。

財産的損害に対する賠償額については、上記(2)の解説をご参照ください。

慰謝料の相場は数十万円~300万円程度で、慰謝料が高くなる事情と低くなる事情については、上記②の解説と同様です。

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