婚約破棄したい|トラブルなく婚約破棄をする方法

婚約破棄したい|トラブルなく婚約破棄をする方法

5、婚約破棄による損害賠償請求の判例

ここでは、婚約破棄による損害賠償請求の可否や金額が争われた判例をいくつかご紹介します。

損害賠償請求が認められた判例も、認められなかった判例もご紹介しますので、参考になさって下さい。

(1)損害賠償請求が認められた判例

まずは、婚約破棄に正当な理由がなく、損害賠償請求が認められた判例をご紹介します。

慰謝料500万円が認められたケース(大阪地裁昭和58年3月8日判決)

女性が差別部落出身であることを理由に婚約を破棄された事案で、裁判所はこのような理由による婚約破棄は極めて違法性が高いと判断し、破棄した男性とその両親に対して連帯して500万円の慰謝料支払いを命じました。

慰謝料200万円が認められたケース(東京地裁平成29年12月4日判決)

同居期間が約3年に及び、その間、破棄された側の女性は2回にわたり妊娠し、中絶したとのことですが、慰謝料額としては相場的な200万円が認められました。

慰謝料50万円が認められたケース(東京地裁平成28年11月1日判決)

婚約中の女性が、他の男性と交際していた上に、少なくとも3件のデートクラブに登録していた事案です。これらの事実が発覚したことにより女性から婚約解消を申し入れたのに対して、男性から損害賠償請求をしたという事案です。

女性からの婚約解消の申し入れに正当な理由は認められませんでしたが、2人の交際期間がわずか3か月であり、結納も結婚式場の予約もしていなかったことなどから、女性が支払うべき慰謝料は50万円にとどめられました。

(2)損害賠償請求が認められなかった判例

婚約破棄に正当な理由があり、破棄された側からの損害賠償請求が認められなかった判例として、以下のものが挙げられます。

結婚式の10日前に相手が無断で家出をしたケース(大阪地裁昭和41年1月18日判決)
相手(男性)が性的不能であったケース(高松高裁昭和46年9月22日判決)
相手(男性)から性交渉を強要された上に侮辱されたケース(東京高裁昭和48年4月26日判決)

3つめの事案では、女性からの婚約破棄には正当な理由がある一方で、男性は婚約破棄を誘致する原因を作った上に、侮辱行為により女性に精神的苦痛を与えたとして、男性に対して50万円の慰謝料の支払いが命じられました。

6、トラブルに発展させない婚約破棄の手続き

婚約破棄をすると損害賠償請求の問題に発展しやすいので、どうしても婚約破棄をしたい場合は、できる限りトラブルを回避できるよう、慎重に手続きを進めた方がよいでしょう。

まずは、相手との合意による「婚約解消」で円満に解決することを目指しましょう。

その際には、なぜ婚約を破棄したいのかを明確にしてください。

「なんとなく結婚したくなくなった」というだけでは、相手が納得できるはずがありません。

本当にこれといった理由がない場合は仕方ありませんが、ほとんどの場合は何らかの理由があるはずです。

そして、相手に対して何が嫌だったのか、どうしてほしかったのか、自分はどうしたかったのかということを、包み隠さず伝えましょう。

本音で話し合うことにより、相手が反省して改善し、婚約破棄の必要がなくなる可能性もあります。

それでも解決できない場合は、関係を解消する方向で相手を説得することになります。

そのとき、相手を非難することはできる限り避けてください。

感情的な対立がエスカレートすると、話がまとまりにくくなります。

「私ではあなたにはついていく自信がありません」「他に良い人を探していただいた方がお互いのためになると思います」といった姿勢で話し合った方がよいでしょう。

先方の親族への報告は必須ではありませんが、トラブルを回避するためには自分で責任を持って報告を行い、お詫びの言葉を伝える方が望ましいです。

結婚式場等の予約のキャンセルは、できる限り自分で行ってください。

相手に任せておくと確実にキャンセルをしてもらえるとは限らず、余分な費用が発生するおそれがあるからです。

婚約指輪や結納金を受け取っている場合は、基本的にはすべて相手に返すべきです。

ただし、婚約破棄の原因が相手にある場合は、婚約指輪や結納金を慰謝料に充てることも考えられます。

その場合でも、必ずしも自分の希望どおりに慰謝料をもらえるとは限りませんので、損害賠償請求の話し合いや裁判が終了して解決するまでは、消費せずに取っておくことが大切です。

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