3、協議離婚で知っておくべきルール|協議離婚で話し合うべきこととは?
話し合いの方法にルールはありませんが、話し合うべき内容については法律上のルールを知っておくことが重要です。話し合いで合意すれば自由に決めることが可能とはいえ、ルールを知らなかったのでは大切な条件を決めることを忘れたり、決めたとしても一方的に不利な条件となっていることに気付かなかったりすることになりがちだからです。
協議離婚で話し合うべき「条件」は、大きくは以下の3つです。
子どもについて
財産について
不法行為の清算について
以下、1つずつみていきましょう。
(1)子どもについて
未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合には、必ず夫か妻、どちらが親権を持つのかを決めなければなりません(日本では共同親権が認められていません)。
親権をどちらが持つかを決める際には、これまで主にどちらが子育てをしてきたのか、今後の養育環境はどちらの方が整っているか、子どもの年齢、子ども自身の意思など、様々な事情を総合的に考慮します。
そして、今後どちらが子育てをする方が子どもの成長のために望ましいかという観点から決めます。
調停離婚や裁判離婚では、「現状維持の原則」(これまでの養育状況をできる限り変更しない方がよい)と「母性優先の原則」(子どもの身の回りの世話をするスキルは一般的に母親の方が長けている)とが重視されるため、妻が親権者に指定されるケースが圧倒的に多いのが実情です。
ただ、子どもが15歳以上の場合は子ども自身の意思が重視されるため、子どもの意思により夫が親権者となるケースも増えてきます。
協議離婚では自由に決めて構いませんが、「どちらが子どものためになるか」という視点は忘れないようにしましょう。
親権者が決まったら、「養育費」についても取り決めるべきです。
夫婦は離婚しても子どものとの関係は切れませんので、離婚後も子育てに要するお金は分担して負担していかなければなりません。
そのため、親権者となった側の親は相手方(非親権者)に対して養育費の支払いを請求できます。
養育費の金額は各家庭の実情に応じて取り決めることが望ましいですが、意見がまとまらない場合には、裁判所が公表している「養育費算定表」を参照して取り決めることが一般的です。
この算定表には、両親それぞれの年収、子どもの人数・年齢に応じて適切と考えられる養育費の金額が掲載されています。
一方、非親権者には、離婚後も子どもと定期的に会って親子の交流を図る「面会交流」を求める権利があります。
子どもにとっては両親から愛情を受けて育つ方が望ましいので、適切な頻度で面会交流を行うように取り決めた方がよいでしょう。
面会交流の頻度は月に1回、半日程度が相場的ですが、両親の合意で自由に決めて構いません。
極端に言えば毎日でも可能ですし、毎週土日は子どもが非親権者の家で過ごすといった内容にすることも可能です。
ただ、子どもに過度な負担がかからないように配慮することは不可欠です。
(2)財産について
夫婦でいる間に築いた財産は、離婚時に分け合うことができます。このことを「財産分与」といいます。
財産分与では、原則として夫婦の財産を折半するのが原則です。
どちらかが圧倒的に稼いでいた、という場合はそれが考慮されることもありますが、基本的には2分の1の割合です。これは、お互いの相互扶助により財産を築き上げたと考えられているからです。
また、夫婦でいる間に納めた年金保険料も分与の対象となります。婚姻中の年金保険料の納付記録を分割することを「年金分割」といいます。
例えば夫が会社員で妻が専業主婦だった場合、夫の年金を分割することで妻がもらえる年金が増えることになります。婚姻中に納めた厚生年金(旧共済年金)の納付記録を、やはり0.5ずつに分割するのが一般的です。
年金分割は老後の生活を支えるために重要な事柄なので、忘れずに取り決めるようにしましょう。
ただし、国民年金の部分は分割されないことにご注意ください。
そのため、夫の年金を分割しても、夫に支給される年金の半分を妻がもらえるようになるわけではありません。
また、夫が自営業者等で国民年金にしか加入していなかった場合は、年金分割を求めることはできません。
(3)不法行為の清算について
離婚のきっかけは様々ですが、好きで結婚した同士であれば、なんらかの問題があった場合も多いもの。
浮気
DV・モラハラ
生活費を渡さない
正当な理由なく同居に応じない
セックスレス
など、苦痛を与えるような行為(不法行為)があったことを原因とした離婚では、法律上「慰謝料」が発生します(民法第709条、第710条)。
慰謝料の相場は数十万円~300万円程度と幅広いですが、不法行為の内容だけでなく、婚姻期間、離婚時の年齢、子どもの有無、夫婦双方の収入や社会的地位など様々な要素を総合的に考慮して決めます。
協議離婚では「被害者側がいくらなら納得できるか」「加害者側がいくらまで支払えるか」で意見をすり合わせていくことになるのが実情ですが、法外な金額を要求しても話し合いがまとまるものではありません。
ちなみに、浮気・不倫を理由として離婚する場合には、慰謝料額を200万円程度と取り決めるケースが多くなっています。
また、慰謝料を請求するなら、その根拠となる証拠を確保しておくことが重要です。
協議離婚は裁判ではないので証拠が不可欠というわけではありませんが、相手が不法行為の事実を否定して慰謝料の支払いを拒否する場合には、証拠を突きつけなければ話し合いが進みません。
不倫・浮気のケースで言えば、2人でラブホテルに出入りする動画像や、メール・SNSなどのやりとりで肉体関係があったことが分かるものなどが重要な証拠となります。
4、協議離婚が進まない!相手が協議してくれない時の進め方
相手が話し合いに応じなければ、協議離婚を進めることはできません。話し合いが進まないというケースも、大別すれば次の2つのケースに分けられます。
相手が離婚そのものに頑なに応じない
離婚条件で折り合えない
このような場合には調停へ進むのも一つの方法ではありますが、協議離婚のメリットを享受するために、以下の対処法を試してみましょう。
(1)離婚そのものを拒否されている場合
相手が話し合いに一切応じないときは、離婚そのものに反対していることが多いものです。
その場合には、夫婦関係が冷め切っているにもかかわらず離婚に応じない理由は何かを探ることが重要となります。
直接話し合えない場合は、メールや手紙などで自分の思いを伝えて、話し合いを試みると返事が返ってくることもあります。
それでも事態が進まない場合は、別居をしてみることが有効です。
別居すれば相手もことの重大性を認識し、何らかの働きかけをしてくる可能性があります。
そうでなくても、別居生活が続くと夫婦としての実態がなくなっていくので、相手の気持ちも次第に離婚を受け入れる方向に変化することが期待できます。
すぐに別居することが難しい場合は、「家庭内別居」という選択肢もあります。
とにかく、相手に対して「もう夫婦としてやっていくつもりはない」という意思を明確に示し、距離をとることで、時間はかかるかもしれませんが協議離婚できる可能性が高まるはずです。
(2)離婚条件に応じない場合
話し合いで自由に離婚条件を決めることができるのが協議離婚のメリットですが、離婚条件については自分の希望もあれば相手の希望もあります。
自分の希望を全面的に通すことは難しいので、多少の譲歩は必要となります。
ただ、譲歩しすぎると一方的に不利な条件を押しつけられ、後悔することにもなりかねません。
前記「3」の解説を参考として、譲れない一線を決めた上で、譲歩する姿勢を示しつつ話し合いを進めるとようにしましょう。
とはいえ、相手が相手自身の希望に固執し、話し合いが進まないことも少なくありません。
そんなときは、上記(1)と同じように別居や家庭内別居で相手との距離をとってみるのがよいでしょう。
(3)弁護士に間に入ってもらう
当事者だけでの話し合いが難しい場合には、弁護士に間に入ってもらうという方法があります。
家庭裁判所に間に入ってもらうと、もはや協議離婚にはなりませんが、弁護士に間に入ってもらえば協議離婚を目指すことも可能です。
弁護士は依頼者に代わって相手と冷静かつ論理的に話し合います。
相手も、弁護士が相手なら冷静に話すことがあります。
弁護士が法律のルールを説明して相手を説得することによって、協議離婚の成立が期待できるでしょう。
また、弁護士が介入することによって相手が諦めの境地に入り、離婚の方法に話し合いが進むこともよくあります。
配信: LEGAL MALL