男に騙されて性的関係に〜貞操権侵害の慰謝料請求について弁護士が解説

男に騙されて性的関係に〜貞操権侵害の慰謝料請求について弁護士が解説

3、貞操権侵害で慰謝料請求が難しい具体的ケース

既婚男性に騙されたと思っても、以下のようなケースでは貞操権侵害が成立せず、慰謝料請求はできません。

(1)肉体関係を伴わないプラトニックな関係だった

たとえ既婚男性に「独身」であると騙され、心を奪われて結婚したいと思っていたとしても、肉体関係がなかった場合は「貞操権」が侵害されていませんので、慰謝料請求は認められません。

(2)結婚の話を一切されていない

独身であると偽った既婚男性と性的な関係を持ったとしても、結婚の話を一際されていない場合は、騙されたとはいえません。したがって、貞操権を侵害されたことにはならず、慰謝料請求はできません。

(3)少し注意すれば相手が既婚者であると分かる状況だった

相手が独身であると言っていたとしても、こちらが少し気をつければ既婚者であると分かることもあります。

例えば、左手の薬指に指輪をしている、自宅の住所や連絡先を教えてくれない、休日には会ってくれない、携帯電話やスマートフォンの待ち受け画面に子どもの画像が設定されている、などの状況であれば、一般的な人なら「既婚者ではないのか?」と思うはずです。

このような状況であるにもかかわらず、相手の言うことを疑いもせず軽信して交際に至った場合は、男性の行為の違法性が軽いことから、慰謝料請求が認められない可能性があります。

4、貞操権侵害の慰謝料請求、その額はいくら?

貞操権侵害による慰謝料請求が認められる場合、いくらもらえるのかは気になるところでしょう。

慰謝料の金額は、被害者が受けた精神的苦痛の程度に応じて決められるのが法律上の原則ですが、当事者間の話し合いで合意できるのであれば、自由に決めることができます。

ここでは、裁判をした場合に認められる慰謝料額の相場と、増額される要素・減額される要素をご紹介します。

(1)一般的な相場

貞操権侵害による慰謝料の一般的な相場は、数十万円~300万円程度と言われています。

ほとんどのケースで、この幅の範囲内で具体的な事情を総合的に考慮して金額が決められます。

その中でも、数十万円~200万円となるケースが比較的多くなっています。200万円~300万円が認められるのは、相当に男性の行為が悪質なケースや、女性が受けた被害が大きい場合に限られてきます。

(2)増額される要素

以下のような事情がある場合は、慰謝料相場の幅の中でも高額の慰謝料が認められやすくなります。

長期間にわたって交際した
性交渉の回数が多い
女性が交際や性交渉に消極的だったのに男性が積極的に誘いかけた
女性が交際や性交渉を拒否したのに男性が強要した
男性が巧妙に嘘をつき、計画的に女性を騙した
女性が妊娠した
女性が低年齢で判断能力が未熟であることに男性がつけ込んだ
交際の解消時に男性の態度が不誠実であった

さまざまな事情が挙げられますが、要は、客観的に見ても男性の行為が悪質であればあるほど、また女性が受けた被害が大きければ大きいほど、慰謝料は増額される傾向にあります。

(3)減額される要素

反面、客観的に見て男性の行為の悪質性が低い場合、および女性が受けた被害が小さい場合には、慰謝料は減額される傾向にあります。

以下のような事情がある場合は、慰謝料請求が認められたとしても低額となる可能性が高いです。

交際期間が短い
性交渉の回数が少ない
女性側が交際に積極的だった
男性の嘘が簡単に見破れるようなものであった
女性の年齢が比較的高い
交際解消時の男性の態度が誠実であった

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