盗撮の時効は何年?時効完成を待つ間も安心できない理由を解説

盗撮の時効は何年?時効完成を待つ間も安心できない理由を解説

盗撮をしてしまったものの、逮捕されたり自分が犯人だとばれていなかったりする場合、いつ逮捕されるのかおびえながら過ごしている人が少なくありません。

多くの人にとって、時効が完成するまでビクビクしながら毎日を過ごすのはかなりの精神的ストレスになります。

また、時効が完成した後、被害者から損害賠償請求をされる可能性もあります。 

そこで今回は、

盗撮の時効
時効完成を待つ間も安心できない理由
正しい対処法

について解説します。

本記事がお役に立てば幸いです。 

盗撮 逮捕については以下の関連記事をご覧ください。

1、盗撮の時効について知る前に〜そもそも盗撮とは〜

(1)そもそも盗撮とは 

盗撮とは何を指すのでしょうか。警視庁の公式サイトには以下のように記載されています。

盗撮とは、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置することです。

引用:警視庁

 つまり盗撮とは理由もなしに通常衣服で隠されている人の身体や下着を無断で撮影する行為及び撮影する目的で機器を向けたり設置する行為を指します。

(2)盗撮はどんな罪に該当するのか?

「盗撮」と一言で言っても「盗撮罪」という罪が存在するわけではなく、どんな罪に該当するのかはケースによって異なります。 

一般的に、盗撮行為は

迷惑防止条例違反
軽犯罪法違反
住居(建造物)侵入罪

などに該当する可能性があります。

これらとは別に、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求をされるケースがあります。

2、盗撮の時効は何年?

ここからは、盗撮行為をした場合の時効について、該当する犯罪ごとに確認していきましょう。

(1)そもそも時効とは

①時効の計算方法

盗撮の時効を考える際、まずどの時点から時効が計算されるのかを確認しておきましょう。

刑事事件では「犯罪行為が終わった時」から時効の計算が開始されます。

盗撮の場合、盗撮行為が終わった時から時効の計算が開始されることとなります。 

②時効が完成するとどうなる?

 時効期間が経過すると時効が完成します。時効が完成すると、検察官は盗撮行為につき被疑者を起訴することができなくなります。

被疑者を起訴することができないということは、有罪として処理することができないため、逮捕されることもなくなります。

(2)迷惑防止条例違反に該当するケース 

①該当ケース

盗撮行為は迷惑防止条例違反に該当する場合があります。

たとえば、東京都の迷惑防止条例では、

住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいるような場所
公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定または多数の者が利用し、または出入りする場所または乗物

引用:迷惑防止条例

において盗撮行為をした場合、迷惑防止条例違反に該当します。

なお、実際にカメラやスマートフォンで撮影行為をした場合だけでなく、撮影目的で撮影機器を差し向けるまたは設置する行為も迷惑防止条例違反に該当するので注意しましょう。

東京都の迷惑防止条例では、画像・動画データが残っていないからといって迷惑防止条例違反に該当しないのではなく、カメラやスマートフォンを設置したことで迷惑防止条例違反に該当します。 

また、迷惑防止条例違反では、被害者とされる人(撮影の対象とされた人)の意見が重視される傾向があります。

盗撮をしている意識がなかったとしても、被害者側に盗撮を主張されると迷惑防止条例違反の該当性を疑われる可能性があります。

間違った解釈をされないよう、普段から注意しておきましょう。 

②刑罰

東京都の迷惑防止条例違反の場合、盗撮行為の法定刑は、カメラやスマートフォンを差し向け、又は設置しただけでも6月以下の懲役または50万円以下の罰金、撮影した場合には1年以下の懲役または100万円以下の罰金となっています。 

盗撮が常習であると判断される場合は、カメラやスマートフォンを差し向け、又は設置しただけでも1年以下の懲役または100万円以下の罰金、撮影した場合には2年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。

盗撮で逮捕された場合、48時間以内に検察へ事件が送致され、送致を受けた検察は24時間以内に被疑者を勾留するかどうかを決定します。

この際、勾留とならなければ釈放されますが、勾留が決定すれば原則として最大20日間捜査を行い、起訴・不起訴が決定されます。

③時効

盗撮が迷惑防止条例違反に該当する場合、時効は3年となります。

(3)軽犯罪法違反に該当するケース

①該当ケース 

続いて軽犯罪法違反に該当するケースです。

「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」は軽犯罪法違反に該当します(軽犯罪法第1条23号違反)。

迷惑防止条例については自治体による差異が大きく、ある自治体では迷惑防止条例違反に該当するものが他の自治体では迷惑防止条例違反に該当しないというケースもあります。 

迷惑防止条例違反に該当しなくとも軽犯罪法違反に該当する場合には、刑罰及び時効は軽犯罪法違反に定められたとおりとなります。

②刑罰 

軽犯罪法違反の罰則は、1日以上30日未満の拘留、もしくは千円以上1万円未満の科料となります。 

③時効

軽犯罪法違反の場合、時効は1年となります。

(4)建造物侵入罪に該当するケース

①該当ケース

続いて、刑法130条前段の建造物(住居)侵入罪に該当するケースです。

盗撮をするために人の住居や建造物に侵入した場合は、建造物(住居)侵入罪も成立します。同条に該当する「侵入」行為とは、建造物の管理権者(住居権者)の意思に反する立ち入り行為です。 

住居や建造物に侵入した上で盗撮行為をした場合、盗撮行為と侵入行為それぞれに犯罪が成立します。

②刑罰 

建造物(住居)侵入罪の場合、刑罰は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金となります。

③時効

建造物(住居)侵入罪に該当する場合、時効は3年となります。

(5)民法上の不法行為

上記は刑事事件の手続きに関することでしたが、盗撮行為は民事事件にも該当します。具体的には民法709条の不法行為に該当します。 

不法行為に該当する場合、被害者から不法行為に基づく損害賠償請求をされる可能性があります。

この場合、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は3年となります。

時効の起算点は、被害者が、盗撮された損害及び加害者を知ったときとなります。

なお、民法上の損害賠償請求権と刑事事件では時効の完成時期がずれるケースがあります。

たとえば、被害者が盗撮された瞬間ではなく後日盗撮の事実を知った場合は、被害者が盗撮された事実を知ったときが消滅時効の起算開始日です。

盗撮日から3年経過し刑事事件の時効期間が経過した場合でも、民法上の損害賠償請求をされる可能性がありますので注意してください。

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