共働き離婚で財産分与をしない方法とは?弁護士が解説

共働き離婚で財産分与をしない方法とは?弁護士が解説

離婚する場合には、夫婦は財産を分け合わなければなりません。

共働き夫婦が離婚する場合には「それぞれ稼ぐ力があるので財産を分け合う必要はないのではないか?」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。

お互いに経済的に自律しているような夫婦だった場合には相手と財産をできるだけ分けたくない、特に稼ぎが多い方はそう考える流れが普通です。

そこで今回は、

共働き夫婦が離婚する場合に財産分与をしないで済む方法

について解説していこうと思います。

1、共働き夫婦の離婚で財産分与をしない方法は?

夫婦共働きの場合にはお互いに収入を得ています。仮にこの夫婦が離婚したとしても互いに独立して収入を得ていますので経済的な不安は専業主婦・主夫の場合よりも相当少ないのではないでしょうか。

それでは、共働き夫婦の離婚の場合には、どれくらいのお金を分けなければならないのでしょうか。

そもそも「財産分与」とは、夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた財産について、離婚する際にそれぞれに分配することをいいます。

法律上は、協議上の離婚をした夫婦の一方が、相手方に財産の分与を請求することができると規定されています。

そして、共働き夫婦の離婚の場合も財産分与の割合は原則として2分の1とされています。

しかし例外的に夫婦の事情によっては、財産分与をそれぞれ半分ずつの折半では不公平だといえるような場合には財産分与の割合が修正される可能性もあります。

例外的に財産分与の割合が2分の1ずつではなく修正されるのはどのようなケースなのでしょうか。

次から詳細を説明していきますが、そもそも、この財産分与については絶対しなければならないものなのでしょうか。財産分与を拒否できる方法はないのでしょうか。

(1)財産分与をしない合意があればOK

財産分与をすることは、夫婦それぞれに認められた権利です。

したがって、財産分与請求権を行使するまたはしないかは個人の自由です。

権利は放棄することができますので夫婦それぞれ自由な意思に基づき財産分与請求権を放棄する場合には当然財産分与をする必要はなくなります。

財産分与請求権を放棄するかどうかは完全相手方の自由意思の範疇ですので、権利を放棄してもよいと思える「うまみ」や「メリット」がないと難しいでしょう。

例えば

財産分与を請求しない代わりに自動車を譲る
養育費を上乗せして支払う
親権を譲る

など大きくこちら側が譲歩しているということが分かる条件を出すことが希望通りに交渉を進めるうえではポイントとなります。

(2)離婚協議書に財産分与請求権の放棄について記載

当然ながら財産分与請求権を相手方に強制的に放棄させることはできません。

財産分与は相手方に認められている権利ですのでご自身が財産分与をしたくないのであるならば説得のうえ、相手を納得させて放棄させるしかありません。

話し合いが奏功して財産分与請求権を相互に放棄する旨の合意がまとまった場合には離婚協議書で合意内容を定めます。

必ず離婚協議書にお互い財産分与請求権を放棄した旨を記載してください。

離婚協議書は公正証書で作成することも検討しましょう。公証人が作成しますので記載された内容について後から覆されることはほぼないと言えます。

(3)財産隠しはリスクが大きい

それでは財産分与を拒否したいけれど相手が財産分与請求権を放棄してくれないという場合には財産を隠してしまえば分与する必要がなくなるのでしょうか。

他方で銀行口座に預金として預けている場合には、実店舗がある場合であってもネット銀行の場合であっても相手方の代理人に就任した弁護士が「弁護士会照会」を行うとばれる可能性があります。

2年以内に財産隠しが発覚した場合には、その財産についても財産分与が行われることになります。その場合には適正な財産分与がなされなかったとして再度の財産分与の請求がなされ基本的には折半されることになります。

それでは、2年を経過するまで隠し通せばタイムアウトになるので問題ない、といえるのでしょうか。

そのようなことはありません。

隠し財産は、夫婦共有財産と推定されている財産について秘匿を陰謀しているといえ、相手方配偶者の財産分与請求権を侵害していると評価されるリスクがあります。

そのような場合には相手方の法的な権利を侵害したとして不法行為に基づく損害賠償として請求される可能性があります。

また、損害賠償請求が認められた場合には財産分与よりも高額な損害賠償金の支払いが命じられる可能性もあります。

2、離婚で財産分与をしなくても良いケースは6つ

(1)財産分与請求権が放棄された

上記で説明したとおり、相手方が財産分与請求権を放棄した場合には当然ながら財産分与をする必要はなくなります。

ただし、これは完全に相手方の自由意思によるものですので請求権の放棄を強制させることはできないことがネックです。

(2)特有財産

財産分与の対象とならない財産として法律に規定されているものが「特有財産」です。

「特有財産」とは、夫婦の一方が単独で有することができる財産のことです。

特有財産にあたる財産としては

「夫婦の一方が婚姻前から有する財産」及び
「婚姻中自己の名で得た財産」

と法定されています。

具体的に「夫婦の一方が婚姻前から有する財産」にあたると考えられている財産は、独身時代の預貯金などが典型的です。

また、「婚姻中自己の名で得た財産」とは、婚姻期間中に父母が亡くなり相続によって相続財産を承継取得したような場合などが含まれます。

(3)一方の特殊技能による財産形成

夫婦の一方が特殊な技能によって多額の収入を得ているような場合はどうでしょうか。

例えば、高額な収入の基礎となる特殊な技能が、婚姻前の本人の個人的な努力によって形成されて、婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成されたような場合には2分の1ルールが修正されます。

上記のような場合であれば、夫婦の一方の高収入による財産形成については他方の貢献度がかなり少ないため協力して財産形成したとは評価できません。

(4)婚姻時に夫婦財産契約を結んでいる

「夫婦財産契約」とは、婚姻前から所有している財産や婚姻中に夫婦が取得する財産の所有関係について夫婦間で取り決めた契約のことをいいます。

夫婦財産契約は婚姻届けで前までに締結しておかなければなりません。つまり、夫婦財産契約は婚姻届出までに締結しておかなければ、当事者の間でも効力を生じません。

さらに、婚姻の届出前までに夫婦財産契約を締結したことを登記して公示しておかなければ、第三者に対して夫婦財産契約の内容について主張することができません。

このような厳しい条件のもとで夫婦財産契約は認められていますので、そもそもこの制度を利用する夫婦は少ないですし、夫婦財産制度自体普及しているとは言えないのが現状です。

登記をした後は夫婦財産契約の内容については変更方法も決めておかなければ事後的に変更することも容易ではありません。

(5)離婚から2年が経過している

財産分与を請求できる期間は、「離婚のときから」2年間だけです。

しかし、財産分与には慰謝料を含めて請求することができます。

そして、すでになされた財産分与が慰謝料を含めた趣旨であるとは解されない場合やその額や方法において不十分であると認められる場合には別個に慰謝料請求をすることが認められています。

したがって、離婚から2年を経過して財産分与の請求ができない場合であっても離婚慰謝料を請求される可能性はあります。

(6)住宅ローンなどの債務残額が資産を上回っている

財産分与の対象となる財産はプラスの財産からマイナスの財産を差し引いて残ったものです。借入金などの債務については夫婦の共同生活を送るうえで生じたものであれば夫婦共同の債務として財産分与の対象として考慮されることになります。

住宅については、時価評価額よりも住宅ローンの残債務の方が大きくなってしまう、いわゆる「オーバーローン住宅」の場合はどうでしょうか。

オーバーローン住宅である場合には離婚時には住宅は無価値ですので、離婚後に住宅ローンを返済していく当事者が取得することが多いでしょう。

夫婦二人ともが債務者となっている場合には、第三者に住宅を売却することが難しいので、離婚後も住宅を維持して二人で住宅ローンを返済していく必要があります。

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