財産分与の対象はどこまで?財産分与で後悔しないための4つポイント

財産分与の対象はどこまで?財産分与で後悔しないための4つポイント

離婚のとき財産分与をすることはわかっているけど、その対象となる財産はどこからどこまでなのだろう。

そんな疑問を持つ方は少なくありません。

財産分与の対象となる財産の基本は、「婚姻生活中につくられた財産」です。

その理由は、婚姻生活中につくられた財産は、共同作業によってつくられたからということが前提となるからです。

しかし、場合によっては「共同作業によってつくられた」かどうか、疑問がある財産もあるでしょう。

そこで今回は、

財産分与の対象と例外
財産分与の注意点

などを解説しています。

離婚の財産分与で悩んでいる方や、協議を有利に進めたいという方は、是非参考にしてください。

1、財産分与の対象を知る前に〜財産分与をおさらい

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して得られた財産を離婚する際に、分割することをいいます。財産分与は、「清算的財産分与」、「扶養的財産分与」、「慰謝料的財産分与」の3つの方法に分類することができます。

(1)夫婦の財産を1/2ずつ分けるのが基本(清算的財産分与)

夫婦が離婚する際の財産分与は、特別な事情がない場合には、婚姻生活中につくられた財産を折半する(1/2ずつわける)のが原則的な方法です。このように、夫婦の財産を公平に清算する方法のことを清算的財産分与とよびます。

なお、清算的財産分与の場合には、夫婦の収入の程度は財産分与の内容を決める際に一切考慮しないのが基本です。つまり、夫婦の一方のみが働きに出ている(他方は専業主婦(夫))という場合であっても、離婚の際の財産分与は1/2ずつというわけです。このような考えは、「家庭を守ってくれる配偶者がいるからこそ安心して勤めにでられる」という考え方に基づいているものといえます。

(2)財産分与の内容を調整する場合

上で解説したように財産分与は最も公平な折半が原則ではありますが、離婚する夫婦で合意ができれば、どちらかの財産が多くなるような財産分与をすることも可能です。一般的には以下で紹介する3つの事情がある場合に、折半ではない財産分与が行われているといえます。

①扶養的財産分与

扶養的財産分与とは、離婚後も収入の多い側が他方の生活を一定程度支援することを念頭においた財産分与のことです。

たとえば、今まで専業主婦だった人が離婚をした場合には、自立して生活できるようになるまで数か月から数年かかる場合の方が多いといえます。このような場合に、生活力の乏しい配偶者が自立した生活を送れるまでの期間の生活費分を増額して行う財産分与を扶養的財産分与と呼びます。

どの程度を増額して分与するかということは、夫婦や子の年齢、フルタイムで働けるかどうかといったさまざまな諸要素を総合的に判断して決めることになりますが、仕事をしていた側の配偶者にも経済的な余裕がないという場合には、扶養的な財産分与が難しい場合もあります。

②慰謝料的財産分与

浮気やDV(家庭内暴力)が原因で離婚することになった場合のように、夫婦の一方に離婚原因があるケースでは、もう一方の配偶者(離婚原因のない配偶者)の財産分与の割合を多めにすることがあり、このような財産分与を慰謝料的財産分与とよんでいます。

しかし、本来慰謝料と財産分与は別の問題と考えるべきであるので、財産分与を受けた金額が本来の慰謝料額よりも少なかった場合には、財産分与がなされた後であっても(不足している)慰謝料分を相手方に請求することも可能です(妻が慰謝料として300万円受け取れるケースにおいて200万しか財産分与がなされなかった場合には、残りの100万円の支払いを求められる場合があるということです)。

③財産獲得・維持への貢献度に差がある場合

夫婦の一方の努力、特別な才能などで高収入を得ていた場合には、財産分与の割合が1/2ずつとはならないことがあります。この場合には、夫婦が財産を一緒に築き上げてきたという財産分与の大前提を当てはめることが公平とはいえない場合もあるからです。

たとえば、夫婦の一方が大手企業の代表取締役、プロスポーツ選手、病院経営者などのケースでは、収入の低い配偶者が財産の獲得・維持へどれくらい貢献してきたかを考慮し、財産分与の割合を決めることになります。

2、財産分与の対象となる財産の範囲と2つの例外

財産分与の対象となる財産は、婚姻中に夫婦の協力で得た財産です。この財産を「共有財産」といいます。財産の名義人がどちらであるかにかかわらず、婚姻の開始から別居(離婚)までに夫婦で取得した財産はすべて共有財産として考えるのが原則です。

ちなみに、配偶者に内緒で貯めた「へそくり」は、貯めていた側の財産と思われがちですが、法律上は夫婦の共有財産とされています。なぜなら、へそくりは婚姻期間中の生活費の中から貯めたお金であるからです。

以下では、財産分与の対象とはならない「特有財産」とされる2つのケースについて解説していきます。

(1)婚姻前から取得していた財産

婚姻前から取得していた財産は、そもそも結婚生活のなかで築かれた共通財産ではないので、財産分与の対象とはなりません。「特有財産」とされ財産分与の対象にはなりません。

たとえば、婚姻前に貯めていた貯金や所有していた自動車などは、その額などを問わず特有財産となります。

それとは逆に、財産などの取得が婚姻前のものであれば、それがプラスの財産であれ、借金のようなマイナスの財産であれ「特有財産」となるので財産分与の対象(考慮対象)とはなりません。

(2)婚姻後に個人で取得した特別の事情のある財産

婚姻後に個人で取得した特別の事情のある財産も「特有財産」とされます。

このパターンに当てはまる典型例は、親や親族などから相続・遺贈で得た財産です。

また、婚姻後に取得した財産であっても、婚姻生活とは無関係なギャンブルや浪費が原因でつくってしまった借金も財産分与の考慮対象とはなりません。

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