会社経営者の夫と有利な条件で離婚するための5つのポイント

会社経営者の夫と有利な条件で離婚するための5つのポイント

会社経営者の夫と離婚を考えているが、こちらに有利な流れで離婚をするにはどうすればよいのだろう……。

会社経営者の夫と離婚するときには、サラリーマンなどの一般的な夫婦の離婚の場合とは異なり、特有の注意点があります。

特有の注意点として考えられるのは、以下の5点です。

財産分与
慰謝料
離婚後の仕事
親権
養育費・婚姻費用

今回は、上記の5点について、

経営者の夫との離婚において有利な条件を獲得するために妻が知っておくべき知恵

をベリーベスト法律事務所の弁護士が紹介します。会社経営者の夫と離婚したいとお考えの方は、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

1、会社経営者の夫と離婚する場合に財産分与で注意すべきこと

まず、会社経営者の夫と離婚する場合には、財産分与について以下の点に注意しましょう。

(1)財産の2分の1をもらえない場合もある

「財産分与」とは、婚姻中に夫婦か共同で築いた財産を分け合うことです。

原則として、夫婦共有財産を2分の1ずつ分け合うのが基本です。妻が専業主婦であっても、家事労働をすることによって夫の収入に貢献していると考えられるので、2分の1の取り分が認められます。

ただし、夫婦のどちらかまたは両方が会社経営者で収入が多い場合には、この「2分の1ルール」が修正される場合があります。会社経営をしている場合には、一般的な労働とは異なり個人的な才覚や努力によって、相場よりも多くの収入を得ていると考えられるケースがあるからです。

妻の家事労働による貢献に見合う収入を超える収入や、資産を会社経営者の夫が得ている場合には、財産分与における妻の取り分は2分の1よりも少なくなります。

具体的にどの程度の割合で財産を分け合うべきかについては、夫婦ごとに個別の事情を考慮して決めましょう。

妻の取り分が40%や30%となるケースも多いですが、裁判例では5%とされた事例もあります(東京地裁平成15年9月26日判決)。

(2)会社名義の財産は分与できない

会社名義の財産は、基本的に財産分与の対象とならないことにも注意しましょう。

会社名義の財産は、個人である夫の財産とは区別されるものであり、夫婦共有財産には該当しません。

ただし、夫の経営する会社が中小または零細企業で、実質的に個人経営と変わらないよう場合には例外があります。

形式的には会社名義の財産であっても、実際には私用で使う割合が高いものもあるでしょう。そのような場合は、実質的に個人の所有物とみなして、財産分与の対象になることもあります。

また、会社名義の車が問題になることが多いですが、他にも事業形態によってさまざまなものが問題になります。

会社名義の預金についても、財産分与の対象となる余地はゼロではありません。

ご自身の状況でどのようなものが財産分与の対象になるのかについては、弁護士に相談してみることをおすすめします。

経営者によっては、あえてほとんどの財産を会社名義にすることによって個人名義の資産をほとんど持っていないという人もいます。あきらめずに、ひとつひとつの財産について確認することが大切です。

(3)可能な限り分与額を上げる方法

ここまで説明してきたことに対して、「会社経営者の夫と離婚すると、一般的なサラリーマン家庭よりも財産分与で不利になるのでは?と思われる方も少なくないでしょう。

決してそうではありません。

あくまでも、相場よりも有利になるとは限らないというだけのことです。

会社経営者の夫との離婚に際して、可能な限り多くの財産の分与を受けるためには、以下の3点を検討しましょう。

①分与の対象となる財産についてもれなく請求する

まずは、財産分与の対象となる財産をもれなくピックアップして、請求することが大切です。

会社経営者の夫であれば、一般的なサラリーマンよりも保有資産が多いことが一般的です。

例えば、不動産や高級車、有価証券、ゴルフ会員権、貴金属などが挙げられます。

分与の対象となる財産が多くあれば、たとえ分与割合が夫よりも低くなったとしても、一般的な夫婦の場合よりも多額の財産を取得できることもありえるでしょう。

②自社株は分与できる

夫の経営する会社が株式会社であれば、通常は夫自身も自社株を所有しているはずです。

株式にも財産的価値がありますので、自社株も場合によっては財産分与の対象となります。

日本の会社の多くは閉鎖的な会社や、親族だけで経営している同族会社です。これらの会社では、大企業のように広く世間一般に株式を流通させることは予定しておらず、自分たちだけで株式を保有し続けようとします。なぜなら、株式が流通すると会社の経営権が株主へ分散してしまいます。そのため、自分たちの思うように会社を経営していくことが難しくなってしまうからです。

離婚で財産分与を求める際には、自社株を交渉の材料として活かすことが可能です。

夫が所有する自社株については分与を求めず、妻が所有している自社株についても夫に譲ることにします。

それと引き換えに、他の財産を多く分与してもらうように提案するのです。

閉鎖的な会社や同族会社の性質上、以上のような交渉方法の効力に大きなものがあります。

③退職金を分与できる場合もある

夫の退職金も財産分与の対象となります。

しかし、社長に退職金はないとお考えの方も多いのではないでしょうか。

実際には、社長(経営者)にも退職金に相当するものがあるケースは少なくありません。

例えば、「長期平準定期保険」や「小規模企業共済」などは、毎月の掛け金を支払うことによって将来に大きなお金を受け取ることができるものです。

退職金の代わりとして、これらに加入している経営者は多いでしょう。

夫が退職金代わりの保険金や共済金を受け取るのが何十年も先になる場合は、財産分与が認められないこともあるので注意が必要です。

しかし、離婚の時期によっては「解約返戻金見込額」が財産分与の対象となる可能性があります。忘れずに請求しておくべきでしょう。

2、会社経営者の夫と離婚する場合に慰謝料で注意すべきこと

つぎに、慰謝料について注意すべきことをご説明します。

(1)夫が有責配偶者でなければ慰謝料はもらえない

離婚の慰謝料とは、夫婦のどちらかが離婚原因を作った場合に、被害を受けた側の精神的苦痛に対して支払われる損害賠償金のことです。

したがって、妻が慰謝料を請求できるのは、夫が離婚原因を作った場合に限られます。

慰謝料を請求できる離婚原因は民法第770条1項で以下のとおり定められています。

第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

引用元:民法

代表的なものとしては、不倫や浮気、DV、モラハラなどです。

ただし、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として、さまざまな事情が離婚原因に該当する可能性があります。

ご自身の状況で慰謝料の請求が可能かどうかについては、弁護士に相談してみることをおすすめします。

(2)必ずしも高額の慰謝料を受け取れるわけではない

基本的には、夫が高収入だからといって高額の慰謝料を受け取れるとは限りません。

慰謝料の金額は、あくまでも離婚原因となった不法行為の内容や被害の程度、婚姻期間の長さなどによって決まります。

ただ、実際には夫が高収入であれば、高額の慰謝料を受け取っている妻が多いのも事実です。

事業に専念したい夫が離婚問題を円満に解決するために、高額の慰謝料を提供しているケースもありますし、妻が上手に請求しているケースもあります。

そこで、慰謝料を増額させるための上手な請求方法を説明します。

(3)慰謝料を増額させる方法

①離婚によって妻が受ける損害を主張・立証する

慰謝料増額のためには、離婚によって妻が受ける損害を具体的に主張・立証しましょう。

会社経営者の夫と離婚すると、妻の生活水準が大きく低下するケースが多いです。

婚姻中は夫の収入や財産の維持、増加に妻も貢献し続け、夫の収入や財産によって相応の生活が保障されていました。

離婚によって生活の保障が失われることは、それ自体が大きな損害に当たるといえます。

したがって、離婚後の生活が困難であるという事情を主張・立証することで、慰謝料の増額が認められる場合もあるでしょう。

②可能な限り話し合いで決着を付けることを目指す

慰謝料の増額を求める場合は、裁判にいたる前の話し合いで決着を付けるのが得策です。

裁判になってしまうと、具体的な事実を指摘したり事実を裏付ける証拠を提出したりしなければなりません。

しかし、事実の指摘や証拠の提出は、容易でないことも多いでしょう。

話し合いのなかで相手の虚栄心をくすぐったり、ステイタスの高い家族の一員から抜けたりする苦痛は一般の比ではないことを説得的に説明しましょう。

話し合いで説得させて相手の理解を求める方が、良い結果につながることが多いです。

ただし、話し合いには高い交渉力が必要となるので、早い段階で弁護士に依頼するのがおすすめです。

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