11月5日、愛知県愛西市の集団接種会場で、4回目の新型コロナワクチンを受けた42歳の女性の容態が急変し、死亡が確認されました。このニュースについて郷医師に伺いました。
監修医師:
郷 正憲(医師)
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。
今回のニュースの内容は?
BA.5型対応の新型コロナワクチン接種後に女性が亡くなったことについて教えてください。
郷先生
厚生労働省によると、亡くなった女性は10月5日午後2時18分頃、愛知県愛西市の集団接種会場で新型コロナウイルスワクチンの4回目接種を受けました。午後2時25分頃、女性に咳などの症状が現れて、処置室で医師や看護師が対応にあたったとのことです。女性は息苦しさを訴えて酸素投与を受けましたが、嘔吐の症状が現れて一時的に呼吸停止するなど容体が急変しました。医師が強いアレルギー反応「アナフィラキシー」の治療に用いるエピネフリンの投与を試みましたが、静脈のルートが確保できなかったとのことです。その後、女性は病院に搬送されましたが、接種から約1時間半後に死亡確認がされました。
愛知県医師会は今回の死亡事例について、11月17日に記者会見を開きました。会見では、ワクチンの接種後であることと最重症のアナフィラキシーの可能性が強く疑われたことから、「アナフィラキシーが疑われる場合は、診断に躊躇することなくアドレナリンの筋肉注射をすべきだった」との見解を公表しました。また、愛知県医師会の野田正治副会長は、「与えられていた時間は15~30秒ほどだった」と判断する猶予が少なかったことを示した上で、「酷ではあるが、打つべきだった」とアドレナリンの筋肉注射を打つべきだったとの見解を示しました。
愛知県医師会が示した接種体制の見直しポイントとは?
愛知県医師会の会見では、接種体制の見直しについても言及されました。この内容について教えてください。
郷先生
愛知県医師会によると、接種体制については次のような5つの観点を検討する必要があるとしています。
①まず、アナフィラキシーを疑う場合はアドレナリンを打つこと
②安価な医療用のアドレナリン製剤を用意しておくなど、必要な人に適量を筋肉注射できる体制を整えること
③接種前の備品確認を実施すること
④接種会場で容態が急変した際の指示系統を事前に確認しておくこと
⑤容態が急変した人が出た場合、作業を一時中止して緊急時対応をおこなうこと
配信: Medical DOC