災害時に、ボランティアや自治会、自主防災会などをはじめ、地域やコミュニティといった周囲の人たちが協力して、助け合う「共助」。発災直後から避難時、復旧・復興時にわたるまで、自助では守りきれなかった命を守り、生活をつなぐために重要な役割を果たします。
前編では、過去の災害での「共助」の事例などをいくつかご紹介しました。
災害時に命を救う鍵は、地域による助け合い。共助できる関係づくりを(前編)
毎年のように、大雨による洪水などの気象災害や土砂災害などが発生しています。また、南海トラフ地震や首都直下型地震も今後30年以内に70〜80%の確率で発生すると言われています。こうした状況の中で、備えのひとつとして、自助・共助の態勢を整えていく重要性はさらに高まっていると言えるでしょう。
しかし、地域によっては高齢化が進み、これまで活発に活動していた消防団や自主防災組織などの活動も縮小されているという現実もあります。子育て世代など、これまで地域の防災活動などにあまり関わってこなかった世代の人たちも、共助に参加しやすい状況を作っておくことも必要です。
いきなり完璧を目指す必要はありません。まずは、できることから。
段階を踏んで、地域などの中で「助け」「助けられる」関係を作っていけば大丈夫です。
日常生活の中に、共助につながるみちすじを少しずつ作っていきませんか?
はじめの一歩は、あいさつから
2014年11月に発生した長野県神城断層地震では、多くの住宅が全半壊したものの、地域の人たちの共助によって、一人も死者・行方不明者が出なかった(白馬村の奇跡)エピソードを前編でご紹介しました。コミュニケーションが平時からできていて、「あの人はこの時間帯であればこの部屋にいるだろう」というように、地域住民がお互いをよく知っていたことが、このエピソードの背景にありましたが、こうした関係性も日常の積み重ねでつくられたもののはずです。
農村部では住宅に鍵もかけず、近所の人が誰でも行き来できるようにしているというようなところもあるようですが、防犯面なども考えると、特に都心部ではそういうわけにもいきません。
はじめの一歩は、もっとシンプルに。「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」「良いお天気ですね」などと、あいさつを交わすことだけでも、関係づくりに役立ちます。
短期間で無理に親しくなろうとするよりも、こうしたあいさつを交わすところから「ご近所には、こんな人が住んでいる」ということをお互いに知っていくことにつながりますし、徐々に親しくなっていくこともできるはずです。
まずはご近所に、災害時にサポートが必要そうなご高齢の方や障害のある方、小さなお子さんのいらっしゃるご家庭があるということを、知ること、知らせることが、非常時に「助ける」「助けてもらう」ことにつながってきます。
平時のあいさつをきっかけに、災害時には避難する前に声をかけあえる関係を築き上げていきましょう。
ちなみに、地域で出会った人にあいさつをすることは、防災だけでなく、防犯にも効果があります。
いつものコミュニティに防災の話題を
お子さんのいらっしゃるご家庭なら、PTAや子ども会、ベビーサークルなどに参加していらっしゃるかも知れません。ご高齢の方なら、敬老会やシニアクラブなどに入っていらっしゃるのではないでしょうか。マンションに住んでいらっしゃれば、住民による総会なども定期的に開催されているはずです。
こうした集まりに参加するのは、少し面倒に思う方もいらっしゃるかも知れませんが、機会があれば参加してみましょう。
また、そうした集まりの中で、防災に関しての話題を提案してみるのも、地域の防災力を高め、共助し合える関係づくりに役立ちます。
お子さんのいらっしゃる方の集まりなら、子どもの非常持ち出し袋の中身についてや、災害時にはどこにどう避難するように考えているかなど、雑談の中から情報交換してみるのも良いかもしれません。
また、地域の社会福祉協議会では、防災ボランティアサークルなどの取りまとめを行なっているところもあり、防災の勉強会などを開く際には講師の派遣を行ってくれることもあります。防災についての勉強会やワークショップなどを行う際には、社会福祉協議会などの地域のボランティア窓口に問い合わせてみてください。
マンションの住民の皆さんの総会では、防災についての取り掛かりができたら、より深く確認したり話し合う必要があります。災害が発生した際に、住民ひとり一人がどのように行動するのかは、お互いの命やそれぞれの財産を守ることに加えて、マンションという住民で共有している部分も多い財産を守ることにもつながります。
できれば、取り決めごとなどを書面にまとめておくようにすると良いでしょう。そうした、防災についての地区での取り決めを文書にしたものを「地区防災計画」と言います。
配信: moshimo ストック