死後離婚とは?配偶者と死別後に選ぶ人が増加中!真相を弁護士が解説

死後離婚とは?配偶者と死別後に選ぶ人が増加中!真相を弁護士が解説

「死後離婚」という言葉がメディアに取り上げられ、10年で1,000件以上も増えているという報道もありました。

死んだ後に離婚をするとはどういうことなのでしょうか。

今回は多くの離婚に関わってきたベリーベスト法律事務所の弁護士が、

死後離婚とは
死後離婚を選ぶ人が増えている理由
死後離婚の仕組み
死後離婚の手続き

などの内容について解説していきます。ご参考になれば幸いです。

1、死後離婚って何?

報道などでは「死後離婚」という言葉が使われていますが、法的には、死後に離婚をすることはできません。「婚姻関係」は、配偶者の死亡によって既に終了しているからです。

死後離婚とは、「姻族関係終了届」を市区町村役場に提出するという手続きのことを指します。姻族関係終了届の提出により、配偶者(夫または妻)と死別した人は、姻族との関係を終了させることができます。

姻族とは、具体的には、配偶者の両親や兄弟姉妹等(以下、本記事の中では「義父母や義理の兄弟姉妹等」といいます)を指します。

要するに、義父母や義理の兄弟姉妹等と赤の他人に戻る目的でおこなわれるのが、いわゆる死後離婚であると言ってよいでしょう。

夫を亡くした女性が舅や姑との関係を断つために行われることがその大半を占めます。

なお、姻族関係終了届を提出しても、亡き配偶者と戸籍が別になるわけではありません。

戸籍も別にして、婚姻前の氏(いわゆる旧姓)を称したい場合は、市区町村役場に復氏届を提出する必要があります。

2、なぜ死後離婚を選ぶ人がいるのか

姻族関係が継続していても、姻族との同居義務があるわけでもないため、通常は姻族関係をあえて終了させる必要性はないようにも考えられます。

ただし、姻族関係が継続する場合には、義父母や義理の兄弟姉妹等の扶養義務を負う可能性があることは知っておいてもいいでしょう。

義父母の扶養義務の場合を例に考えてみましょう。

民法には「民法877条1項 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められています。

つまり、原則として、義父母を扶養する義務があるのは、義父母の直系血族(親、子、孫等)と義父母の兄弟姉妹です。

そのため、義父母の介護をしなくて済むことが死後離婚のメリットと言えます。

他方、「民法877条2項 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、(中略)、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる」と定められています。

したがって「特別の事情」があると認められると、扶養義務を負う可能性はあります。

もっとも「特別の事情」については、裁判所は厳格に判断すべきとの裁判例があり、例外的な場合(例. 義父母から特別な経済的援助を受けていたことがある)に限られると考えてよいでしょう。

それでも、扶養義務を負う可能性をゼロにしたい場合には、死後離婚を選択する意義はあるといえます。

なお、あなた自身が死後離婚を選んだとしても、あなたの子どもと義父母との関係は、祖父母と孫という血族であることに変わりはありません。

そのため、子どもの戸籍も変わりません。

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