びまん性胸膜肥厚とは?アスベストが原因で発症したときの救済制度

びまん性胸膜肥厚とは?アスベストが原因で発症したときの救済制度

びまん性胸膜肥厚とは、肺の表面に病変が起きて硬くなり、日常的に息苦しくなったり感染症を起こしたりする病気です。根治しない進行性の病気でもあるので、早期に発見して症状の進行を抑えることが重要です。

その発症原因のひとつとして、法規制が後手に回り続けた過去のある、有害なアスベスト(石綿)の吸入があると言われているので、過去にアスベスト工場や建設・造船作業に携わったことのある家族を持つ方は、びまん性胸膜肥厚その他の関連疾患と診断された場合、医療費その他の補償を申請できる可能性があります。

そこで今回は、

びまん性胸膜肥厚とは
アスベストが原因でびまん性胸膜肥厚を発症するメカニズム
アスベストが原因でびまん性胸膜肥厚を発症したときに申請できる救済制度

などについて、弁護士がわかりやすく解説します。

患者の方の多くは既にご高齢で、救済制度について十分に調べることが困難となっているケースも多くなっています。家族の方もアスベストの影響と各種制度について知ることで、必要な救済を十分に受けられるようにしましょう。

1、びまん性胸膜肥厚とは?

びまん性胸膜肥厚とは、胸膜(肺を覆う膜)が炎症を起こして繊維化し、肺の表面が厚く硬くなっている状態をいいます。診断は主に画像検査(胸部X線画像やCT画像)で行い、肺の片側なら2分の1以上の肥厚、両側なら4分の1以上に肥厚が広がり病変が及んでいる状態が、びまん性胸膜肥厚の基準とされています。

(1)発症する原因

びまん性胸膜肥厚の原因はさまざまで、結核性胸膜炎等の感染症の他、放射線治療や開胸手術後にも起こるとされています。その他に挙げられているのが、この後解説する石綿(アスベスト)です。

(2)主な症状

肺の表面が硬くなって膨らみにくくなると、呼吸困難といった症状が現れます。他にも、反復性の胸痛を覚えたり、肺炎などの呼吸器感染を繰り返したりします。こうした症状は徐々に進行していき、重症化して慢性呼吸不全となった場合には、酸素供給装置を用いて酸素を補給する治療が必要となります。

(3)治療方法

びまん性胸膜肥厚の治療法は見つかっておらず、今のところ出来るのは対症療法(自覚症状を和らげたり一時的に消したりするための治療)のみです。もっとも、早期発見ができれば、診療と生活改善によって進行を遅らせ、重症化を避けられる可能性もあります。そのため、発症の可能性がある場合、日頃から違和感を見逃さないように注意するとともに、定期的に検査を受けることが必要です。

2、アスベスト吸引のリスクとは?びまん性胸膜肥厚との関係

呼吸器の辛い症状が進行するびまん性胸膜肥厚は、かつて建材に多用されていた石綿(アスベスト)ばく露の関連疾患として挙げられています。特に発症が懸念されるのは、建設・造船・解体工事の現場に関わった経験のある人です。

(1)アスベストとは

石綿(アスベスト)とは天然鉱物の一種で、髪の毛の5千分の1程度の微細な繊維で構成されています。安価で耐久性や耐熱性に優れ、発がん性が認められながらも(日本WHO協会より)、かつては建材から家庭の日用品まで様々なものに使われていました。

日本では2006年(平成18年)に労働安全衛生法施行令等が改正され、この時ようやくアスベスト含有量が0.1%を超える製品及び廃棄物が全面的に禁止されるに至っています。

(2)アスベストでびまん性胸膜肥厚が発症するメカニズム

アスベストでびまん性胸膜肥厚を発症するメカニズムには未解明の部分が多いものの、製品加工・解体・使用施設への立ち入りになどよる吸入が病気に繋がっていると考えられています。

微細な繊維状のアスベストは、加工等の作業の際により粉じんとなって空気中に飛散しやすく、人が吸い込むと簡単に肺に侵入してしまいます。そして、ひとたびアスベスト粉じんが人体に侵入すると、変化しにくい性質のため、肺組織内に長く滞留します。その滞留する量は吸い込む期間や空気中の粉じん濃度に応じて増え、肺の繊維化のみならず、肺がん・悪性中皮種等のリスクも高まると考えられているのです。

参考:石綿(アスベスト)関連疾患/環境再生保全機構

(3)アスベストが原因で発症するまでの潜伏期間

アスベストが体内に侵入してから疾病を発症するまでには潜伏期間があり、びまん性胸膜肥厚については30年~40年と考えられています。このように長い潜伏期間があるため、アスベストの吸入と疾病の発症との関連性が見過ごされてしまうことも少なくありません。

(4)アスベストばく露が懸念される人

アスベストばく露には大きく4形態があり、被害者として認定された人の多くは職業ばく露によるものです。厚生労働省のホームページで「石綿にさらされる作業」や「石綿製品」の具体例を確認し、患者の過去の職歴と照らし合わせてみましょう。

アスベスト被害か判断が付かない場合は、各地の保健所や専門医療機関に問い合わせるか、トラブル解決経験のある弁護士に相談しましょう。

▼アスベスト吸入による健康被害が懸念される人

建設作業員、造船作業員、石綿が使用された現場の作業員等(職業ばく露)
石綿が使用された施設に立ち入ったことのある人(施設立ち入りばく露)
自宅に石綿製品または加工道具等がある人(家庭内ばく露)
石綿工場の近くに居住していた人等(環境ばく露)

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