南海トラフ巨大地震は連続して起きるかも!「その時」どう行動する?


画像説明:昭和年間に起きた東南海地震と南海地震の震源域。南海トラフの巨大地震は短期間に2回続けて起きることがある(東北大提供)

「1週間以内に2回起きる確率は最大77%」

東北大などの研究チームが確率を試算

今後40年以内に発生する確率が90%程度にも上るとされる南海トラフの巨大地震。南海トラフで、ひとたびM(マグニチュード)8以上の巨大地震が発生すると、1週間以内に同規模の巨大地震が再び起きる確率が2.1~77%に高まるという研究結果を東北大などの研究チームがまとめ、2023年1月10日付けの英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表しました。巨大地震が相次ぐことで、被害がより深刻になることも予想されます。どんなことが起こり得るのか、東北大の研究成果をもとに紹介します。

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南海トラフ地震とは

南海トラフは、静岡の駿河湾から紀伊半島、高知の南岸を経て九州の日向灘沖に続く、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界領域です。

日本列島を載せたユーラシアプレートを巻き込みながら、南からフィリピン海プレートが沈み込んでおり、引きずり込まれる力に耐えきれなくなったユーラシアプレートが跳ね上がることで巨大地震が繰り返し発生しています(図)。

(気象庁HPより)

「双子地震」が起きる地域

過去の南海トラフでの巨大地震は、100年~200年の間隔で繰り返し起きていますが、ほぼ全域が割れる場合と、東側と西側で時間を置いて2回の巨大地震が起きることがあるとわかっています。

例えば、江戸時代、1707年の宝永地震では、南海トラフのほぼ全域が同時に割れたのに対し、その約150年後の1854年には、最初に南海トラフの東側、静岡から紀伊半島沖を震源域とする大地震が起き(安政東海地震)、その32時間後に西側を震源域とする大地震(安政南海地震)が起きています。

昭和期、第2次世界大戦の終戦前後にも、南海トラフが半分ずつ割れた大地震が起きています。昭和東南海地震(1944年)と昭和南海地震(1946年)で、この時は2つの巨大地震に2年間もの時間差がありました。

画像説明:巨大地震が続いた過去の南海トラフ地震の例

(内閣府HPより)

このため、気象庁では2019年から、南海トラフでM8.0以上の巨大地震が起きた場合、最短2時間で「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震警戒)」を出し、事前の避難を呼びかけることになりました。

巨大地震警戒の臨時情報が出された場合、自治体が定めた「事前避難地域」に住む人に対して市町村が避難指示などを発令し、1週間、高台にある知人宅や避難所に身を寄せてもらうことになっています。

東北大などの研究

今回、東北大学災害科学国際研究所の福島洋准教授、京都大学防災研究所の西川友章助教、東京大学地震研究所の加納靖之准教授からなる研究チームは、100年以上にわたる世界の地震の統計データと、過去の南海トラフの地震の発生履歴を分析し、南海トラフでM8.0以上の巨大地震が起きた後、別のM8.0以上の巨大地震が続けて起きる確率を時間の経過とともに計算しました。

地震が発生してから24時間以内にもう一つ巨大地震が発生する確率は1.4-64%、1週間以内に発生する確率は2.1-77%でした。また、平時の同じ期間内(1日、1週間など)に巨大地震が起きる確率に比べ、何倍確率が高まるかを調べたところ、1日以内で460倍以上、1週間以内でも約100倍以上、地震の発生率が高まるという結果になりました(表)。

南海トラフの巨大地震が連続して起きる確率を示したのは、この研究が初めてだそうです。過去の地震の履歴が十分得られないため、確率に大きなばらつきがあるという限界はありますが、ひとたび巨大地震が起きると、別の巨大地震の発生率は上昇することがわかります。 


説明:南海トラフで半分が割れる巨大地震が起きた後、残りの部分を震源域とするもう一つの巨大地震が起きる確率と、平時に比べてどのくらい確率が高まるかを示したもの(右)(東北大福島准教授による)

最初の地震が起きたらどう行動するか 

まずは先発地震の津波警報で避難 

巨大地震が2回続く可能性を踏まえ、南海トラフ地震が起きた時には、どう行動すればいいのでしょうか? 

M8級の先発地震が起きた場合、関東から九州までの太平洋沿岸の広い地域に対して大津波警報や津波警報が出ることが予想されます。対象地域の人は、まず警報に従って、最寄りの津波避難タワーや津波避難ビル、避難場所まで避難することが何より大切です。 

臨時情報が出てからでは間に合わない可能性も

国の想定では、その後最短で2時間後に気象庁から「臨時情報(巨大地震警戒)」が出されることになっていますが、福島准教授によると、続発地震が起きる可能性は、最初の地震発生直後から高まっており、臨時情報を待ってからでは避難が間に合わない可能性もあるそうです。 

津波からの事前避難の対象地域に住んでいる人は、津波に関する警報が解除されたら、すぐに高台の避難所や知人宅に避難を開始することが求められます。それ以外の地域でも避難に時間がかかるなど心配な事情がある人は避難を開始するかどうか事前に検討しておいた方が良いでしょう。 


画像説明:津波が来る恐れがある地域に住んでいる人の地震発生後の避難行動(上)と、続けて起きる恐れがある地震に対する避難行動(下)(内閣府HPより) 

津波以外の対策も 

津波の被害が想定されていない地域でも、 

・建物内は緊急安全点検をして落ちたり倒れたりすると困るものを移動させる 

・高所のクレーン作業など、地震発生時に生命に危険が及ぶ可能性がある活動はできるだけ回避する 

など、後発地震への備えは必要です。 

福島准教授は「南海トラフ周辺で大地震が起きたら、その直後から後発地震にも最大限の警戒をしながら対応することが重要です。そのためにも、地震が起きたらまずどこに避難するか、事前避難をするならどこに身を寄せるかなど、地震が起きる前からぜひ1人ひとりが考えておいていただきたいと思います」と話しています。 

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