「突発性過眠症」の特徴・日常生活での注意点はご存知ですか?医師が監修!

「突発性過眠症」の特徴・日常生活での注意点はご存知ですか?医師が監修!

あなたは特発性過眠症という病名を聞いたことがありますか?特発性過眠症とは、不眠症などと同じ睡眠障害のひとつです。

特発性過眠症はナルコプレシーと同じ過眠症という睡眠障害のため、日常生活に支障が出る場合もあります。

ここでは特発性過眠症の特徴・原因や、日本人に多いナルコプレシーとの違い・治療方法・日常生活での注意点を解説しましょう。

特発性過眠症の特徴・原因

特発性過眠症にはどんな特徴がありますか?

特発性過眠症の特徴は、夜の睡眠時間をしっかり確保しているにもかかわらず日中に強い眠気に襲われることです。特発性過眠症では10時間以上の睡眠をとっている場合と、通常の人と同じくらいの睡眠時間(約8時間程度)をとっている場合のふたつがあります。いずれの場合も睡眠の質自体はとても良好であるということが特徴といえるでしょう。
良質の睡眠をとっているにもかかわらず、起きたとき熟睡できたという感覚はほとんどありません。そのため日中も頭がボーっとしてしまい「まだ寝たい」という睡眠欲求が続いてしまいます。また頭痛やめまい・立ちくらみなどの自律神経の異常がみられることもあります。特発性過眠症では、昼寝をする場合、少なくとも1時間以上眠ってしまうといったケースも多いです。
ときには昼寝で4時間以上眠ってしまうこともあります。昼寝時間が長時間に及び、睡眠の質・量ともに正常であってもすっきり感はありません。入眠を繰り返すこともあるでしょう。特発性過眠症の症状が重くなると、目が覚めたときに「ろれつが回らない」・「記憶があまり残らない」などお酒による酩酊状態に近い症状が見られます。これを「睡眠酩酊」といいます。
患者によっては一日16時間程度眠ってしまうケースもあることが特徴です。ただ、ナルコプレシーのように喜怒哀楽などの感情の高ぶりによって眠気が引き起こされることはありません。長い睡眠時間を必要とするため、日常生活に支障がある場合がほとんどです。このような症状が3か月以上続く場合、特発性過眠症の可能性があるといえるでしょう。

特発性過眠症の原因はなんですか?

「特発性」という名前がついている疾患は、一般的にその発症メカニズムが解明されていません。そのため特発性過眠症がなぜ発症するのかという原因は、はっきりわかっていないのが実情です。
ただ、睡眠をつかさどる中枢神経に何らかの原因があるのではないかといわれています。2022年には遺伝的要素が見られるという研究結果が発表されていますが、原因の究明はこれからの研究にゆだねるほかないといえるでしょう。

ナルコプレシーとの違いはなんですか?

ナルコプレシーは日本人に最も多く発症する過眠症といわれています。特発性過眠症は、その発症例がとても少ないことが特徴です。一般的に、ナルコプレシーは激しい喜怒哀楽などが引き金によっておこる筋緊張の喪失(カタプレキシー・情動脱力発作)をともなうことが多く見られます。
特発性過眠症ではカタプレキシーは見られません。ただ、ナルコプレシーにもカタプレキシーが見られない場合があります。そのため特発性過眠症と区別をするには、髄液中オレキシン濃度低下の有無などさらに詳しい検査が必要になってきます。
また特発性過眠症では日中の眠気がありますが、ナルコプレシーのように我慢できないほどの眠気ではありません。特発性過眠症の場合、一旦眠りに入ると1時間以上眠り続けます。MSLT(反復睡眠潜時検査)などの検査を受けることで、よりはっきりした診断ができるでしょう。

有病者は若年層に多いと聞いたのですが…。

特発性過眠症を発症する人は若年層に多いといわれています。とくに16歳から22歳程度までの若者に多く見られ、有病者の男女差は見られません。また、子どもは発症しないといわれています。なお、突発性過眠症は一般的には治療が必要な病気ですが、自然治癒する場合もあります。

特発性過眠症の診断・治療

特発性過眠症は何科を受診すればいいですか?

日中もつねに眠気を感じる・長時間の睡眠をとってもすっきりしないなど何らかの症状があると、「睡眠障害かもしれない」と考え方も多いでしょう。この場合、病院へ行くには何科を受診したらいいのか迷ってしまう方も少なくありません。
実際、日本において睡眠障害などを専門に扱う病院や医師はとても少ない状況です。そのため睡眠に関する悩みが生じた場合は、まず最初にあなたのかかりつけの医師に相談することをおすすめします。かかりつけの医師が適切な病院や専門医を紹介してくれます。医師の紹介状を持って専門医を受診するといいでしょう。

特発性過眠症はどのように診断されますか?

特発性過眠症の診断は、ナルコプレシーと類似の症状がみられることがあるためしっかりとした検査を必要とします。おもに終夜睡眠ポリグラフ検査
で睡眠中の質や量を調べます。その後MSLT(反復睡眠潜時検査)で日中の昼寝の状態を検査するという流れです。この検査で入眠までの時間とすぐにレム睡眠に入るかなどを調べます。
また、患者自身が睡眠日誌をつけることも診断に役立つため、ぜひ実施してみてください。このほかポリグラフ検査や手首に装着したアクチグラフで、一週間程度の睡眠リズムを検査することもあります。これらの検査を総合的に判断して特発性過眠症かの診断を行います。

治療には薬を使いますか?

特発性過眠症を完治させるための治療方法は現在見つかっていません。基本的にはナルコプレシーと同じ治療を行いますが、カタプレキシーを抑えるための薬は使用しません。
突発性過眠症で処方される薬は、日中の眠気を抑えるためです。もし夕方服用すると夜に眠れなくなるなどの弊害が生じることもあるため、医師の指示に従って服用しましょう。また、処方される薬の効果や服用数などはかなり個人差があるといわれています。
なかなか薬の効果が現れないこともあります。さらに特発性過眠症の治療は長期間に及ぶことが多いため、専門医による薬のコントロールなどがとても重要です。

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