3、弁護士費用特約を使えないケースや使えないと誤解されやすいケースについて
(1)弁護士費用特約を使えないケース
弁護士費用特約はいつでも使えるわけではありません。以下のように、保険の規約によって利用できないとされるケースがあります。
被害者に故意、重過失がある
自然災害
加害者が家族
自転車事故、日常の事故
事業用の車での事故
事故後に保険に加入した
詳しく確認していきましょう。
①被害者に故意、重過失がある
被害者に故意または重大な過失がある場合には、弁護士費用特約を利用できません。
故意とは簡単に言えば「わざと事故を起こした」ケースです。
過失とは注意義務違反(ある行為をする際に注意を払うという法律上の義務)のことです。
そして重大な過失とは、故意と同視できるようなことや、運転中に簡単にできるはずの注意を怠ったことをいいます。
また、以下のように規約に記載されているケースでは弁護士費用特約が使えないとされます。
無免許運転
飲酒運転
薬物の影響で正常な運転ができなかった
闘争行為、自殺行為、犯罪行為による事故
②自然災害
地震
津波
噴火
台風
洪水
といった自然災害によって損害が生じた場合には弁護士費用特約は利用できません。
③加害者が家族
加害者が、
被害者の父母
配偶者
子
といった家族である場合にも弁護士費用特約は使えないとされています。
④自転車事故、日常の事故
自転車同士の事故
交通事故以外の日常生活における事故
などについては対象とならないことがあります。
もっとも、火災保険、自転車保険や医療保険などで弁護士費用特約が使えるかもしれません。
加入している保険によって扱いが異なるため、契約内容を確認してください。
⑤事業用の車での事故
事業用の車に乗っているときの事故では弁護士費用特約が利用できないケースがあります。
社用車で事故に遭った場合には注意が必要です。保険会社によって対応が異なるため確認しましょう。
⑥事故後に加入した
弁護士費用特約は事故前に加入している必要があります。事故後に契約したとしてもさかのぼって利用することはできません。
(2)弁護士費用特約を使えないと誤解されやすいケース
本来は弁護士費用特約を問題なく使えるのにもかかわらず、使えないと誤解してしまうケースもあります。
非常にもったいないので、以下の内容を必ず確認してください。
①加害者との示談で争点がないケース
加害者との示談交渉において争点がないケースでも、弁護士費用特約の利用が可能です。
争点がないとしても、提示された金額が本当に妥当でしょうか。
弁護士に依頼することにより賠償金額が増額する可能性もあります。
話し合いがスムーズに進んでいたとしても、念のため弁護士に相談して見解を聞いてみるのがオススメです。
②事故の損害が軽微なケース
損害が小さくても弁護士費用特約は使えます。
保険会社としては弁護士を入れる必要がないと考えていても、ご自身で納得できない部分があれば利用できます。
本来は費用倒れになるケースでも弁護士に依頼できること自体が弁護士費用特約のメリットのひとつです。物損事故でも利用を検討してみてください。
③被害者に過失があるケース
過失があっても基本的に弁護士費用特約を使うことができます。利用できないとされているのは「重大な」過失がある場合です。
そもそも、過失が全くないとされるのは停止中に追突された場合など限られたケースのみです。
多くの事故では被害者にも何らかの過失が認められます。ご自身に過失があったからといって弁護士費用特約の利用をためらう必要はありません。
④保険会社が使えないと言うケース
保険会社に利用できないと言われていても、あきらめないでください。
保険会社が嫌がっているだけのこともあれば、担当者が規約を誤解していることもあります。
ご自身で規約をチェックするのが難しければ、弁護士の無料相談などで本当に利用できないケースなのかを確認するのがよいでしょう。
4、保険会社から法律事務所を指定されたらどうする?
弁護士費用特約の利用を保険会社が認めたとしても、特定の法律事務所や弁護士を紹介してくることがあります。
こうしたケースではどう対処すればよいのでしょうか?
(1)法律事務所は自分で選ぶことができる
特約を利用する場合に必ずしも保険会社が指定した法律事務所にする必要はありません。
自由に選ぶことができるため、自分にあった弁護士を探すのがよいでしょう。
また、指定された法律事務所にいったん依頼していても、途中で弁護士を変更することが可能です。
(2)保険会社からの指定には注意が必要
①被害者からの依頼に慣れていないケースがある
保険会社が紹介する弁護士は、被害者側に立った経験が少ない可能性もあります。
基本的に紹介される弁護士は保険会社の顧問弁護士で、加害者の代理をすることが多い傾向にあります。
加害者と被害者とでは、アドバイスするポイントがやや異なります。
たとえば、後遺障害認定を獲得するための方法に関する知識は、被害者の側に立つ経験の豊富な弁護士の方が勝る場合もあります。
保険会社から紹介された弁護士に依頼するのもひとつの手ではあります。
ただし、自分の立場(加害者か被害者か)に応じた実績があるかを事前に確認することを忘れないでください。
②相性が合わないことがある
紹介された法律事務所が交通事故について実績が豊富であったとしても、相性が合わなければ依頼しない方がよいです。
弁護士によってスタイルは様々で、自分に合わない弁護士に依頼してしまうとストレスを抱えてしまう可能性があります。
たとえば、丁寧に説明して欲しいにもかかわらず、雑な対応をする弁護士にあたると不安に感じるでしょう。
反対に「難しいことはわからないのでお任せしたい」と考えている方にとっては、専門的な説明ばかりされると少し面倒に感じてしまうかもしれません。
ご自身の性格に合った弁護士を見つけるためには、保険会社の指定に安易に応じるのではなく、自分で探すのが得策といえます。
配信: LEGAL MALL