腹水とはお腹に水が溜まる状態のことを指します。少量であれば自覚症状がないものですが、腹水の量が多くなってくると目に見えてお腹が膨らんできます。
お腹が膨らむだけでなく食欲不信や吐き気を感じるようにもなるでしょう。また腹水の影響で体の各箇所に支障が出てくることにもなります。
腹水によってさまざまな症状が出てくるだけではなく、腹水そのものが他の病気による症状であるケースもみられます。
腹水の詳細を知っておくことは隠れた病気の早期発見につながるでしょう。
腹水の症状と原因
腹水はどのような症状・初期症状か教えてください。
腹水の症状は、お腹に水が溜まることによって、いわゆる蛙腹になるという見た目の変化があります。初期など腹水があまり多くない場合では、自覚症状がないことがあります。
しかし腹水が多量に溜まってくると、お腹の膨らみに伴ってへそが飛び出ることもあるでしょう。さらに胃が圧迫されることで食事が取れない・吐き気がするという症状も現れます。
また肺との境界である横隔膜を押し上げられることによる息切れや、心臓へ血液が戻りにくくなるために足がむくむといった症状が現れることもあります。
腹水を引き起こす病気は何がありますか?
腹水を引き起こす原因となる病気の代表例として、肝臓の病気が挙げられるでしょう。その中でも肝硬変が最も多いとされています。
また肝硬変のないアルコール肝炎・慢性肝炎・肝静脈閉塞などが腹水を引き起こす肝臓病として知られています。肝臓病以外でも腹水を起こしてしまう病気があり、がん・心不全・腎不全・膵炎・結核性の腹膜炎などが該当する病気です。
一般的に内臓で障害が起きる病気などで腹水を伴う症状が現れるといえるでしょう。
腹水の原因・合併症を教えてください。
腹水の原因として代表的な肝硬変によるものを例に挙げます。肝硬変によって血液中のタンパク質であるアルブミンを合成する機能が低下します。
アルブミンは血液中の水分を一定に保つ役割を持つタンパク質です。アルブミンの合成機能の低下により、アルブミンが不足すると腹水成分を血管内で吸収することができなくなってしまいます。
血管内で吸収できなかった腹水成分としての水分は血管外に漏出し、腹水として貯留されることになってしまうのです。また肝硬変によって肝臓内の静脈血管「門脈」の血管内圧が高くなります。これによって腹水が溜まることもあるでしょう。
がんになると腹水が溜まりやすいと聞いたのですが…。
腹水の原因は肝硬変などの肝臓病だけではなく、がんによっても腹水が溜まることは確かにあります。
腹水はがんの種類を問わず、がんが進行して終末期になると溜まることが多くなる症状といえるでしょう。この腹水という症状はがんの患者さんにとって苦しい症状です。
がんによる腹水は「がん性腹水」と呼ばれ、特に腹腔臓器のがんの進行によるものが多く確認されています。なお、がんの種類によっては腹水が溜まった後で様相が変わることもあるといわれています。
腹水の診断と治療
どのような検査で診断されるのでしょうか?
腹水は通常でも20〜50mlほどの量が存在し、腹腔臓器内の運動の摩擦を軽減する働きを持っています。各種の病気によって腹水が溜まってきた場合、以下の項目について検査を行います。
検査するのは、pH・グルコース・ビリルビン・LD・アミラーゼ・TG・T-CHO・ADA・CEAといった各項目です。これらを検査することにより、それぞれの項目から出された検査結果の数値を見て、腹水を起こした病気を考察していくことになるでしょう。
治療方法を教えてください。
肝硬変による腹水では、利尿剤の投与・アルブミン製剤投与・腹水穿刺吸引・腹水ろ過濃縮再静注法(CART/カート:Cell-free anoncentrated Ascites Reinfusion Therapy)といった方法で治療を行います。
また、がんによる腹水への治療としては、がん性腹水に困っている患者さんに対し、腹水ろ過濃縮再静注法を積極的に行うことになるでしょう。
がんによる腹水は滲出性のものであり、利尿剤の投与は効果が出にくいだけでなく、がんの治療にも支障が出るためです。がん性腹水には体に必要な栄養分や免疫を高める成分が多量に含まれています。
腹水ろ過濃縮再静注法によって体内に腹水から有用な成分を戻し、がんの治療を継続することができるようになるでしょう。
どのような薬が使われますか?
肝硬変による腹水では、第一に水分を対外に排出することが求められます。そこで用いられる薬が利尿剤です。なお利尿剤の種類や利用量を調整しても腹水が減らない場合でアルブミンの値が低い患者さんには、アルブミン製剤の点滴を用いることになるでしょう。
一方がん性腹水の場合、利尿剤の効果があまり出ないために利尿剤を用いることはないでしょう。また、がん性腹水の苦痛は医療用麻薬などの医療薬による緩和が難しいといわれています。
腹水ろ過濃縮再静注法によって、がん治療の継続を行うことになるでしょう。
腹水の穿刺について教えてください。
腹水の穿刺とは、腹腔内に針を刺して腹水を抜くことを指しています。腹水の穿刺は主に難治性腹水の患者さんに対して行われ、短期間で腹部膨満感を軽減させることが可能な方法です。
また原因が特定できない腹水の診断や、抗がん剤の注入にも利用されている方法です。ただし腹水の穿刺による安易な腹水の抜き取りは、かえって腹水の貯留を加速させてしまう可能性があります。また腹水の穿刺に必要な製品は現在のところほとんど開発されていないのが現状です。
配信: Medical DOC