暴力行為等処罰に関する法律とは?刑法との違いや逮捕されたときの対処法

暴力行為等処罰に関する法律とは?刑法との違いや逮捕されたときの対処法

「暴力行為等処罰に関する法律」は、集団的な暴行、脅迫、器物損壊あるいは常習的な暴行、脅迫、傷害、器物損壊など、特に可罰性が高い犯罪行為類型に対して重い刑罰を規定した特別刑法です。

立法当時は労働運動や学生運動をターゲットとしたものでしたが、現在では、集団的ないじめやDVの事案などにも適用されています。

つまり、刑法上の暴行罪や傷害罪などで処罰される行為であっても、「暴行行為等処罰に関する法律」に抵触する限りは、刑法上の暴行罪や傷害罪等よりも重い刑罰が科される場合があるということです。

そこで今回は、

「暴力行為等処罰に関する法律」違反に該当する犯罪行為の詳細
「暴力行為等処罰に関する法律」違反を問われやすい事案
「暴力行為等処罰に関する法律」違反で逮捕されたときの対処法

などについて、弁護士がわかりやすく解説します。

「暴力行為等処罰に関する法律」違反を問われる状況にある方やそのご家族の手助けとなれば幸いです。

1、「暴力行為等処罰に関する法律」とは?

まずは、「暴力行為等処罰に関する法律」という耳慣れない法律がどのようなものかについて具体的に見ていきましょう。

(1)この法律で規定されていること

「暴力行為等処罰に関する法律」とは、1926年に公布・施行された古い法律です。

同法は、治安警察法第17条が削除される代わりに制定されたという経緯もあり、制定当時はストライキなど労働運動の過激化を防止する目的で運用されていました。

その後、学生運動や暴力団関係者を取り締まる法律として機能してきました。

そして、今日では学校内などにおける集団的ないじめや家庭内のDVなどにも適用されるケースが認められつつあるので、いじめやDVにより傷害や器物損壊の結果が生じた場合、同法違反を問われる可能性も考慮しなければなりません。

(2)刑法との違い

同法には、刑法の暴行罪、傷害罪、器物損壊罪などの適用を受け得る犯罪事実のなかでも、特に可罰性の高い行為類型が集約され、重い刑罰が定められています。

たとえば、同法の規制対象である集団的な暴行、脅迫、器物損害等(1条)や常習的な暴行、脅迫、傷害、器物損壊(3条)、凶器を示しての暴行など(1条)は、刑法に規定される暴行罪・傷害罪・器物損壊罪などによっても処罰可能です。

しかし、「集団で凶器を用いて他人に暴行を加えた場合」と「単独で暴行を加えた場合」をイメージしてみると、両者を同じ刑法上の暴行罪で処罰するのはバランスを欠くと言わざると得ません。

両者の違法性には相当の乖離があると考えられるからです。

そこで、次項で紹介する行為類型については、特別刑法たる同法により厳しい刑罰を科すことで、科刑上の衡平と凶悪な犯罪の抑止を図っています。

2、「暴力行為等処罰に関する法律」違反に該当する犯罪と刑罰

「暴力行為等処罰に関する法律」で規制される犯罪類型は以下7種類に分類できます。

各行為類型の内容と刑罰について、それぞれ具体的に見ていきましょう。

集団的な暴行・脅迫・器物損壊等(1条)
凶器を示して行う暴行・脅迫・器物損壊等(1条)
数人共同して行う暴行・脅迫・器物損壊等(1条)
銃砲刀剣類を用いた傷害(1条の2)
常習的な暴行・脅迫・器物損壊(1条の3)
不正な利益を得る目的で行う面会強請等(2条)
利益供与による犯罪の請託(3条)

(1)集団的な暴行・脅迫・器物損壊(1条)

団体若しくは多衆で、又は、団体若しくは多衆であるかのように装って、威力を示して、暴行や脅迫を加える行為、器物を損壊等する行為を行った場合、3年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

「団体」とは、共同の目的を達成するために、多数の自然人が継続的に結合したものをいい、その目的の種類や適法・不適法を問いません。

暴力団・暴走族等の団体のほか、労働組合・学生団体・政治結社等の団体であっても、これを背景としてその威力を利用することのできるものである限り、ここにいう「団体」に当たります。

「多衆」とは、多数の自然人の単純な集合をいい、団体のように目的性、継続性を有しないものの現実に同一場所に集合していることを要します。

「威力」を示すとは、団体を背景として人の意思を制圧するに足りる勢力を相手方に認識させることをいいます。

(2)凶器を示しての暴行・脅迫・器物損壊等(1条)

凶器(条文上は「兇器」)を示したうえで、暴行や脅迫を加える行為、器物を損壊等する行為を行った場合、3年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

「兇器」とは、その構造上・性質上又は用法上、人を殺傷しうる器具(性質上の凶器:鉄砲、刀剣、爆弾、火炎びん等。用法上の凶器:包丁、ナイフ、鎌、木刀、鉄棒、角材、斧、金槌等)をいいます。

凶器を「示し」とは、相手方をして現に凶器を携帯していることを認識させる一切の行為をいいます。

(3)数人共同しての暴行・脅迫・器物損壊等(1条)

数人が共同して、暴行や脅迫を加え、又は器物を損壊等した場合、3年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

「数人」とは、2人以上の者をいい、数人が「共同」するとは、2人以上の者が犯罪を共同して実行する意思を有し、かつ現実に2人以上の者が現場で実行行為を行うことをいいます。

(4)銃砲刀剣類を使った傷害(1条の2)

鉄砲や刀剣類を使って人を傷害した場合、1年以上15年以下の懲役が科されます。

「鉄砲」又は「刀剣類」とは、鉄砲等刀剣類所持等取締法2条の定義するものをいいます。

(5)常習的な暴行・傷害・脅迫・器物損壊等(1条の3)

常習的に暴行・傷害・脅迫・器物損壊等の罪を犯す者がこれらの行為を行った場合、人を傷害したときには1年以上15年以下の懲役が、人を傷害した以外の場合には3カ月以上5年以下の懲役が科されます。

「常習として……犯した」とは、特定の罪を反復累行する習癖を有する者が、その習癖の発現としてその犯行を行った場合をいいます。

(6)不正な利益を得る目的での面会強請等(2条)

財産上不正な利益を得る目的で第1条の方法によって面会を強請し(1項)、又は強談威迫の行為をする(2項)と、1年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。

「財産上不正な利益」とは、その利益を取得する手段・方法が違法であり、かつその利益自体が健全な社会通念に照らし不当なものであることを意味します。

「面会を強請」するとは、相手方に面会の意思がないことを知っているのに、強いて面会を求める行為であって、脅迫の程度に至らないものをいいます。

(7)利益供与による犯罪の請託(3条)

第1条に規定される方法によって、殺人罪、傷害罪、暴行罪、脅迫罪、強要罪、威力業務妨害罪、建造物等損壊罪、器物損壊等罪(以上、1項)、公務執行妨害罪(2項)に当たる行為を行わせる目的で第三者に金品その他財産上の利益若しくは職務を提供する行為をすると、6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます(公務執行妨害罪についてのみ、6カ月以下の懲役・禁固または10万円以下の罰金)。

関連記事: