腰痛が表れる病気と聞くと、腰椎椎間板ヘルニアや腰椎狭窄症などの病気を思い浮かべるでしょう。しかし、年齢や状況によっては当てはまらない病気もあります。
スポーツをしている成長期のお子様が腰痛を訴えた場合、もしかしたら腰椎分離症を発症しているのかもしれません。
しかしあまり聞き慣れない病気のため、どのような症状かわからないこともあるでしょう。
ここでは、腰椎分離症の症状や原因をはじめ、ステージ・治療方法・放置するリスクを詳しく解説します。
腰椎分離症の症状と原因
腰椎分離症はどのような病気ですか?
腰椎分離症とは、腰椎部位の疲労骨折のことです。後ろ部分にある橋状の椎弓(ついきゅう)に亀裂が生じることで2つに分離します。椎弓は細く弱いため、強い衝撃が繰り返し腰椎に加わることで分離しやすいのが特徴です。
第5腰椎という1番下の部位で頻繁に発症します。発症率はスポーツ選手の場合は30〜40%、一般の方は5%程度です。このことからも、スポーツをされている方はやっていない方と比べると確率が高いことがわかります。
症状を教えてください。
多くみられる症状は腰痛です。運動している時に表れますが、特に体を反らす・捻る動作で強めの腰痛が表れます。前かがみでも痛みが表れることもあり行動が制限されます。
普段の生活で痛みが出ないものの、体を動かしている時に痛みを強く感じる場合は腰椎分離症を疑っても良いでしょう。腰椎以外に下肢痛やしびれも表れます。
初期症状はどのようなものがありますか?
初期症状から腰痛が表れます。体を反らした時に限定された部位のみ痛みを感じるでしょう。
普段の生活では気づきにくく、運動中や運動が終わった後に腰部分に違和感を覚えます。この小さな痛みが今後を左右するため、少しでも違和感を覚えたら速やかに受診しましょう。
発症する原因は何でしょうか?
腰椎分離症は、前述のとおり腰部に強い衝撃(体を回旋する・飛んだり跳ねたりするなど)が繰り返し加わることで発症します。発症はスポーツをしている成長期のお子様に多いです。
野球・サッカー・卓球などほとんどのスポーツが原因で起こっています。成長期の骨は弱く、衝撃を受けやすいため腰椎分離症になりやすいです。お子様以外に大人のスポーツ選手でもみられ、毎日繰り返す練習により腰部に負荷がかかり発症しています。
ほとんどの場合、後天性(繰り返し衝撃が加わったことが原因)ですが、稀に先天性(生まれつき)の方もいます。しかし、体質によっては発症しない方もいるため、必ず発症するとは限りません。
腰椎分離症のステージと治療
診断方法を教えてください。
主な診断方法は詳細な問診・身体所見・レントゲン撮影です。スポーツ歴と疼痛発現の原因を聞くことが早期発見には不可欠です。
問診や身体所見にて疑われる場合、側面や斜めからレントゲン撮影をし、椎弓の分離の有無を確認します。それでもはっきりしない、もしくは神経を圧迫しているなどの状態によってはCT検査やMRIを使用し、骨の状態をはっきりさせることもあります。
腰椎分離症のステージについて教えてください。
大きく3つのステージに分かれます。ステージの分類は以下のとおりです。
ステージ1(初期)
ステージ2(進行期)
ステージ3(終末期)
初期は分離しはじめの状態、もしくは骨にひびが入った不全骨折の状態です。進行期は分離し骨にひびが入った状態になり、終末期は完全に骨折し偽関節の状態を指します。初期、もしくは進行期であれば再び骨がつきやすいですが、偽関節の終末期からの回復は難しいです。
しかし、症状悪化を防ぐためにも、終末期であっても経過観察が重要といえるでしょう。
治療方法を教えてください。
まずは、原因となったスポーツや運動を中止することです。お子様やスポーツ選手の方にとって中止という選択は辛いですが、治療しなければ状態は進行します。次にひびの入った腰部の安静を目的に硬性コルセットを着用します。
固定することで腰の動きを制限し、ひびの部分に負荷がかからないようにします。この他に、柔軟性を高めるためにストレッチも行いましょう。太ももと胸をつけて曲げ伸ばしをするジャックナイフストレッチがおすすめです。
朝晩2回と時間をかけてゆっくりやると良いでしょう。しかし、骨の状態によっては痛みのコントロールを必要とするケースもあります。この時点で痛みは解消されないため鎮痛剤を併用しながら、筋力のバランスをとるための訓練やストレッチも行います。訓練やストレッチの内容は以下のとおりです。
腹筋訓練
太もものストレッチ
背部のストレッチ
太ももの裏側ストレッチ
こちらもゆっくり行うようにし、これ以上症状が悪化しないようにしましょう。
手術は必要でしょうか?
早期に腰椎分離症を発見できれば、保存治療にて対処できるので手術は必要ありません。腰椎分離症になったからといって今すぐ手術とはならないため安心してください。しかし、個々の状況によっては早期に回復し元の生活に戻りたい方もいるでしょう。
または状態によっては保存治療ができない方もいます。そのような方は手術も可能ですが、状態によって手術の規模は変わります。分離した部分が偽関節になっていなければネジで固定するだけになり、傷も1〜2cm程度と小さいです。3〜7日程度と入院期間も短く、元の生活にいち早く戻れます。分離した部分がすでに偽関節になっている場合、手術は大かがりになってしまいます。偽関節についた筋肉を剥がさなければなりません。
余程のことがない限り手術を選択することはないですが、手術をしなければ元の生活を送るのが難しい状態に陥るのは避けたいところです。早期に発見し治療を行えば早く元の生活に戻ることができるため、痛みを感じたら早めに受診し痛みを解消しましょう。
配信: Medical DOC