弁護士法72条違反とは?グレーゾーンの問題と非弁行為への対処法

弁護士法72条違反とは?グレーゾーンの問題と非弁行為への対処法

「弁護士法72条違反になるのはどんなケース?」日常生活を送る中で、弁護士法72条違反なのではないかと疑問に思うケースに出くわしたことがあるかもしれません。

弁護士法72条違反はいわゆる非弁行為というものであり、弁護士以外の人が弁護士の担う業務を行うことは禁止されています。

弁護士法72条違反になることが明確な場合もあれば、グレーゾーンになっている場合もあり、どのようなケースが弁護士法72条違反になるのかは慎重に判断していく必要があります。

そこで今回は、

弁護士法72条違反とは?
NHKの委託業者による受信料回収業務は弁護士法72条違反?
退職代行サービスは弁護士法72条違反?

等について解説します。本記事が、弁護士法72条違反なのではないかと疑問に感じている方にお役に立てば幸いです。

1、弁護士法72条違反とは?

弁護士法72条違反という言葉を聞いたことがある人でも、これが具体的に何を表すのかを明確に理解している人は決して多くありません。

日常で遭遇した出来事が弁護士法72条違反なのかどうかを判断するためにも、まずは弁護士法72条違反とは何なのかを確認していきましょう。

(1)いわゆる非弁行為のこと

弁護士法72条違反とは、いわゆる非弁行為のことをいいます。

非弁行為とは、弁護士のみに認められている業務を弁護士以外の者が行うことであり、これは弁護士法72条により禁止されています。

非弁行為に該当するのは、報酬を得る目的で、調停・訴訟代理、示談交渉の代理、法律相談を受ける等の法律事務を業とする場合です。

報酬を得る目的が必要になってくるので、報酬を得ていない場合は弁護士法72条違反とはなりません。

ただし、報酬は金銭に限定されるわけではないので、金銭以外の形で利益を得ていると判断されれば弁護士法72条違反に該当し得ます。

(2)非弁行為に当たらないケース

ここまで読んでいただいた方の中には、交通事故に遭ったときに保険会社が示談交渉を代行してくれたが、あれは非弁行為に該当しないのか?と疑問に感じた方がいるかもしれません。

自動車保険会社の示談代行サービスは、確かに、損害賠償請求等を含めた当事者同士の示談交渉を保険会社が代行しますので、一見すると非弁行為に該当するようにも思えます。

実際に、交通事故の件についても当初は弁護士のみに示談代行の権限が認められていました。

しかしながら、保険会社と日弁連の協議のもと、現在では保険会社の示談代行サービスは非弁行為に当たらず合法とされています。

保険会社は示談の代行をしますが、実際に被害者に賠償金を支払うのは保険会社です。

保険会社は当事者のために示談の代行をしているわけではなく、保険会社が支払う賠償金の額を確定するために示談代行をしているだけであり、示談代行は保険会社の法律事務を全うするために行っていることから、非弁行為には当たらないと解釈されています。

もっとも、保険会社があらゆる交通事故の件について示談代行できるわけではありません。保険会社は交通事故が発生しても、無責事故(被保険者に責任がなく、保険会社が保険金を支払う必要がないケース)、免責事故(免責事由に該当することから保険会社が保険金を支払う必要がないケース)、自賠責保険の限度内におさまる事故(こちらも同様、保険会社が保険金を支払う必要がないケース)、保険金額を超える事故(被保険者が支払う保険金が保険会社の支払うべき保険金額を超えるケース)については示談代行を行うことができません。

(3)非弁行為の罰則

非弁行為を行った場合の罰則は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金となっています(弁護士法77条3号)。

非弁行為になる例・ならない例の詳細については、下記もご参照ください。

2、弁護士法72条のグレーゾーンとは?

非弁行為は違法ではありますが、実際のところ、企業活動が多様化している状況においては非弁行為への該当性を瞬時には判断しがたいケースも少なからず出現しています。

従来とは異なる企業活動やサービスは今後も出現してくるでしょうから、それぞれの活動につき非弁行為の該当性を慎重に判断していく必要があります。

近年、特徴的な非弁行為のグレーゾーン行為としては、①NHKの委託業者による受信料回収業務、②リーガルテック(AI契約書審査等)、③退職代行サービスの3つが挙げられますので、順番に確認していきましょう。

関連記事: