「電力ひっ迫」はなぜ起こる? 電力不足の理由と家庭でできる省エネ対策

電力不足の問題が深刻さを増す昨今。2022年の春には電力需給ひっ迫警報が、夏には注意報が発令されたことも記憶に新しく、今後も見透しが厳しい状況にあると言われています。そもそも電力需給がひっ迫するのはなぜなのでしょうか? そして私たちにできる省エネ・節電対策は? それぞれの専門家にお話をうかがいました。

電力需給がひっ迫するのはなぜ? その弊害は?

まずは電力需給ひっ迫について、災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんに聞いてみましょう。

電力需給ひっ迫って何? どんな状況を指すの?

「電力需給ひっ迫とは、発電による供給電力に対して需要電力が大きくなり、供給の上限に迫っている状況のこと。基準となるのは安定供給に必要な予備率で、これが3%を下回るか、下回ることが予想されると“ひっ迫状況にある”と言われます」

2022年3月と6月には電力需給ひっ迫警報・注意報も発令

2022年3月22日、政府から初めて発令された“電力需給ひっ迫警報”。さらに同年6月27日には、“電力需給ひっ迫注意報”も発令されています。この直接的な原因は「福島県沖で発生した地震による火力発電所の停止にある」と、和田さん。

「2022年3月16日深夜、福島沖で発生した地震は、多くの火力発電所で緊急停止を引き起こしました。復旧に時間がかかっている間に気温が低下したことで、電力の需要が急激に増大。この状況を受けた政府から“電力需給ひっ迫警報”が発令され、節電が呼びかけられることになったのです。

火力発電所の再稼働と修理が進まない中、6月27日に発令されたのが“電力需給ひっ迫注意報”。こちらの原因は、全国各地が梅雨明けを迎え、猛暑日が続いたことで電力の需要が急上昇したことでした」

※電力需給ひっ迫注意報……前日の段階で安定供給に必要な予備率が5%を下回ると予想される場合、午後4時をめどに「電力需給ひっ迫注意報」が発令される

電力需給のひっ迫は何を引き起こす?

大規模停電(ブラックアウト)を防ぐために発令される、電力需給ひっ迫警報や注意報。発令されるとどのようなことが起こるのか、具体的な流れを和田さんに聞きました。

「電力の需給がひっ迫すると、まずは経済産業省の管轄となる資源エネルギー庁から“電力需給ひっ迫警報”が発令されます。その後はひっ迫状況に応じ、一般市民や大規模に使用している工場などに節電を要請。それでも足りない状況になると、東日本大震災の際に実施されたような計画停電が行われますが、うまく機能しなければ大規模停電のリスクが高まると考えられます」

発電所の停止だけじゃない! 電力需給ひっ迫の原因

2022年春・夏は火力発電所の停止が理由でしたが、電力需給ひっ迫を引き起こす要因はこれ以外にもさまざま。たとえばどのようなことがあるのか、和田さんに教えてもらいましょう。

①災害による発電所の停止やトラブル

「近年は中規模~大規模の地震により、火力発電所の停止が多発しています。この要因のひとつは火力発電所の老朽化ですが、一方で耐震化も課題ですね。このほか、台風や大雨による浸水の場合にも発電所、変電所などの機材に影響が出ることもあります」

②火力発電所の相次ぐ休廃止

「廃炉の要因にもなっているのが、火力発電所の老朽化。また、世界的な脱炭素化の流れから、火力発電によるCO2の排出にも厳しい目が向けられているのが現状です」

③記録的な寒波や猛暑の発生

「季節外れの寒波や猛暑といった異常気象も、電力をひっ迫する要因の一つです。冬季、夏季のエアコンの使用状況は電力需要の急激な拡大につながり、近年は都市部での需要拡大も拍車を掛けています」

④ウクライナ情勢の悪化による発電用燃料の調達難

「化石燃料の輸出国であるロシアからの調達を段階的に制限していることで、世界的にもエネルギー価格が上昇。日本も割高の化石燃料を他国から購入することになりますが、万が一、必要量が調達できなければ当然、電力需給のひっ迫に陥ってしまいます」

⑤原子力発電所の停止や再生エネルギーへの転換

「そもそも原子力発電所の稼働停止がひっ迫の大きな要因ですが、再稼働、ましてや新設は事故のこともあってハードルは高いですね。風力、太陽光、地熱など代替エネルギーなどにシフトすべきでしょうが、こうした次世代の自然エネルギー利用への転換はあまりに遅れているのが現状です」

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