暖房を入れても部屋が寒い原因と、お財布にやさしい防寒対策

暖房器具を使っているのに、部屋がなかなか暖まらない……。冬が訪れるたび、そんなお悩みを抱えている方も多いのでは? そこで、暖房の効きが悪くなる原因と対策を、一級建築士でリフォームコンサルタントのYuuさんこと尾間 紫さんに教えてもらいました。節電対策としても役立つので、ぜひご活用ください!

部屋がなかなか暖まらない……原因は家の断熱性能にあった!

家で過ごす時間が増えると、気になるのが室内の快適さ。特に冬は、暖房がなかなか効かないと困ってしまいますよね。実際にYuuさんも、「これまで気付いていなかったけれど、在宅勤務をしていると足が冷えて辛い」「背筋がぞくぞくする」「どこからともなく冷気を感じる」といった声を、よく聞くようになったのだとか。

室内の快適さに大きく影響するものは?

「家の中の寒さの原因は、主に住宅の断熱性能不足にあります。断熱性能とは、簡単に言うとポットの保温性能のようなもので、断熱性能が低い家は外気の影響を受けやすいため、外が寒いと家の中もグッと冷えてしまうことに。しかも、いくら暖房を使っても寒いので、光熱費が高くもなります」

特に築年数が古い家は、断熱性能が低いことが多いそうです。

「古い家の場合、暖房を消すと外の気温と同じくらいまで室温が下がってしまい、朝起きてみたらコップの水に氷が張っていた……なんてケースもあるんですよ。一方、断熱性能の高い家なら、小さなエネルギーで家の中の暖かさを維持しやすいので、快適で省エネ。光熱費も抑えることができます」

時代を反映して見直される住まいの断熱性能

「最近では家を暖かくする重要性が、改めて注目されています」と、Yuuさん。この背景には、前述のとおり在宅時間が長くなったことのほか、「家の中の暖かさと健康に深い関係があるとわかったこと」や、「地球環境の保全や光熱費の高騰から、省エネの重要性が改めて考えられるようになったこと」があるそうです。

「断熱性能が低い家が多い賃貸住宅でも、昨今は断熱性能の高いものを建てようという動きは生まれているんです。冬が暖かい家なら居心地がいいし、光熱費も安くて入居者が付きやすいですから」

暖かい部屋を作りたいなら、窓と床を中心に考える

部屋がいつまでたっても暖まらないと、暖房器具の設定温度を上げたくなるもの。でも、効果的な防寒対策を考えるなら、注目すべきは窓と床なのだそうです。

窓の断熱性能が低いと何が起こる?

Yuuさんによると、家の断熱の弱点は窓にあるのだとか。ある調査によると、1枚ガラスの窓の場合、家から流出する熱の半分以上は開口部から逃げていることがわかっているそうです。

出典:財団法人建築環境・省エネルギー機構「住宅の省エネルギー基準早わかりガイド」

「断熱性能が低い窓ガラスに触れると、冷たくてヒヤッとします。そんな窓に近付くと、とにかく寒い! 冷気の流れを感じることもありますね。以前、大きな窓で眺めの良い素敵なカフェがあったんですが、冬は窓際に座ると寒くていられませんでした。その時期になるとみんな、窓から離れて店の奥に座っているんです。これも窓の断熱性能が低いからですね」

その隙間風、実は窓からやって来た冷気かも!

断熱性が低い窓ガラスが影響を及ぼすのは、窓の周辺だけではありません。Yuuさんによると、床付近まで冷やしてしまう原因となることも多いのだとか。

「室内で暖められた空気は、冷たい窓ガラスに触れて冷やされると、足元に落ちるように流れていきます。冷たい空気は下に、暖かい空気は上に移動することで、対流が起きるんですね。この冷気は床に沿って、室内へと広がっていきます。これが“コールドドラフト現象”と呼ばれるもの。よく、“足元が寒い”“冷たい隙間風を感じる”という声がありますが、これは隙間から入り込んだ冷気ではなく、窓ガラスで冷やされた空気が対流しているケースが多いんです」

このコールドドラフト現象のせいで足元が寒くなったからといって、暖房を強めるのはおすすめできません。

「いくら空気を暖めても、その端から窓ガラスで冷やされますからコールドドラフトは収まりません。結局、足元は寒いまま、顔ばっかりほてって暑いということになりがちなんです。つまり、冬に部屋を暖かくするためには、まずは窓の断熱性能を上げる工夫をすること。そして冷気が足元にたまるのを防ぐため、暖気が部屋中に行き渡るように気流をコントロールすることが大切なのです」

床の断熱性能を高めれば、足元の寒さはさらに軽減

「コールドドラフトだけでなく、床下の断熱不足も足元が冷える一因です。床からも熱は流出するので、断熱材を入れるといったリフォームが効果的。また、床暖房やホットカーペットなど、足元から暖かくする暖房器具を使うのも良いでしょう。ただし、断熱性能が低いままでは、暖めても暖めても熱が流出してしまい、光熱費がかさみます。まずは窓や床下の断熱性能を向上させながら、同時に足元を暖めてあげるように考えることが大事ですね」

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