労災保険に通院費をスムーズに請求するための4つのポイント

労災保険に通院費をスムーズに請求するための4つのポイント

労災保険で通院費を請求できるのでしょうか。

労災で傷病を負ってしまい通院が必要となってしまったが、通院頻度が高く通院費を負担し続けるのは厳しい……という状況の方も少なくないでしょう。

今回は、

労災保険における通院費の立ち位置
労災の通院費請求方法

について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

他にも、労災の通院費に関する注意点や、労災問題を弁護士に相談するメリットなどについても紹介します。

この記事が、労災の通院費請求でお困りの方の手助けとなれば幸いです。

1、労災保険における「通院費」とは

(1)労災保険で通院費は支給される!

まず、療養(補償)給付には、「療養の給付」と「療養の費用の給付」の2種類があります。

「療養の給付」とは、労災病院や労災保険指定医療機関、薬局等(指定医療機関等と呼ばれます。)で、無料で治療や薬剤の支給などを受けることができます。

このように治療自体が直接受けられる給付を「現物給付」といいます。

「療養の費用の支給」は、近くに指定医療機関等がないなどの理由で、指定医療機関等以外の医療機関や薬局等で療養を受けた場合に、その療養にかかった費用を支給するものです。

この場合は負担した費用が給付されるので「現金給付」になります。

「療養の費用の給付」には 治療費、入院費、移送費(通院費など通常療養のために必要な範囲のもの)が含まれています。これらは傷病が治癒(症状固定)するまで支給されます。

ここでいう「治癒」とは、身体が健康時の状態に完全に回復した状態のみを指しているわけではありません。

傷病の症状が安定し、医学上一般に認められ医療を行っても医療効果が期待できなくなった状態のことも指します。このような状態を症状固定とも表現されます。

通院費の給付については2008年11月1日以降より支給対象が見直され拡大されています。

(2)労災の通院費支給条件

①距離

被災労働者が居住地や勤務先から、原則として「片道2km以上」の通院の場合に支給対象となります。

ただし、通院距離が往復4km以内でも交通機関を利用する距離が2kmを超える場合や、診療に適した医療機関が自宅から4kmの範囲内にない場合でもそれが最寄りの医療機関であれば4kmを超えても通院費が支給される場合があります。

移送には上記のような通院に伴う移送のほかに、「災害現場等から医療機関への移送」や「転医等に伴う移送」も含まれます。

「災害現場等からの移送」とは、災害現場等から医療機関へ傷病労働者を緊急搬送する場合や自宅療養中の傷病労働者の状態が悪化して医療機関に収容するような場合があてはまります。

「転医に伴う移送」には、医師の指示による転医のほか、労働基準監督署長の勧告による転医や医師の指示により退院して帰宅する場合の移送があてはまります。

②医療機関の種類

労災で通院費が支給される条件としては、被災労働者が「適切な医療機関」へ通院したことが必要となります。

この適切な医療機関とは、傷病の診療に適した医療機関をいいます。

傷病を診療するための設備や人的・技術的な能力がないことが明らかな医療機関は適切な医療機関とは認められないでしょう。

③場所

労災で通院費が支給されるための条件として、医療機関の場所は、被災労働者の居住地または勤務先と同一市町村内の医療機関に通院しなければなりません。

同一市町村内に適切な医療機関がないため、隣接する市町村内の医療機関へ通院した場合や、同一市町村内に適切な医療機関があっても隣接する市町村内の医療機関の方が通院しやすい場合であれば通院費が支給されます。

さらに、同一市町村内にも隣接する市町村内にも適切な医療機関がないため、それらの市町村を超えた最寄りの医療機関に通院した場合であれば通院費が支給されます。

④交通手段

交通手段についても通院費が支給されるための条件があります。

原則として、公共交通機関や自家用車を利用した場合に通院費が支給されます。

一方でタクシーの場合には注意する点がありますが、詳細については後述します。

(3)労災で支給される交通費の金額

①公共交通機関

バス・地下鉄・電車などの公共交通機関を利用した通院の場合には通院費が支給されます。

この場合、規定の運賃分が支給されるため、領収書は必要でなく、移動した場所の記載と金額をもって申告するだけで足ります。

②自家用車

自家用車を用いて通院した場合にも通院費が支給されます。自家用車の場合には1kmあたり37円で計算された通院費が支給されます。

自家用車の場合には自分で運転する場合のほかに、家族の運転で病院まで送り迎えをしてもらう場合であっても支給の対象となります。

③タクシー

タクシーを利用した場合にその運賃が移送費に含まれるのかという点が問題になります。この点、実務上、限定的に認められていますので詳しくは後述します。

2、労災の交通費請求方法

(1)労働基準監督署に必要書類を問い合わせる

必要書類の入手方法については労働局や労働基準監督署に行って書類を取りに行くか、電話で依頼して郵送してもらう方法があります。

ご自身の判断で必要となる申請書が分からない場合には労働局や労基署の窓口で、災害の内容や請求したい労災保険の内容を伝えることで、適切な申請書をもらうことができるでしょう。

また、通院費の請求のためには、通院の明細や領収書などの添付書類が必要なケースがありますので管轄の労基署へ問い合わせてください。

また、厚生労働省のホームページから必要書類をダウンロードすることもできますのでインターネット環境とプリンタがあればご自宅でも申請書を入手すること自体はできます。

(2)所定の請求書作成・労働基準監督署へ提出

労災に移送費(交通費)を請求するときには、

業務災害の場合には「療養補償給付たる療養の費用請求書_業務災害用(様式第7号(1))」に,
通勤災害の場合には「療養給付たる療養の費用請求書_通勤災害用(様式第16号の5(1))」に必要事項を記載する必要があります。

上記書式に病院や事業主から証明書などを取得したうえで、管轄の労働基準監督署に提出します。タクシー代を請求する場合には後述のように領収書の提出が必要になることがありますので注意してください。

上記の請求書も最寄りの労働局・労基署に常備されています。

関連記事: