南海トラフ地震が発生したら…どのくらいの津波が起こるの?

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日本で今後起こるといわれている大地震の中でも、特に大きな被害が予想されているのが南海トラフ地震です。南海トラフ地震では揺れによる被害に加え、大規模な津波被害も懸念されています。

南海トラフ地震が発生した場合に予想される被害や、津波に遭遇した場合の避難行動について今一度考えてみましょう。今回は南海トラフ地震の防災について解説していきます。

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南海トラフ地震とは(概要)

南海トラフ地震とは、西日本から東日本の太平洋側を中心に大きな被害が予想されている巨大地震です。政府の中央防災会議の被害想定では、太平洋側では震度6から震度7の地震が予想されており、日本海側でも震度4から震度6の地震が予想されています。

参考:気象庁「南海トラフ巨大地震の震度分布より」

南海トラフとは、駿河湾から日向灘沖までのフィリピン海プレートとユーラシアプレートが接している区域のことです。

南海トラフ沿いのプレート境界においては、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に1年あたり数cmの速度で沈み込んでいます。ユーラシアプレートが地下に引きずり込まれ、蓄積されたひずみが限界に達したときに跳ね上がって大きな地震を引き起こします。プレートが跳ね上がる際には海水も跳ね上がることから大きな津波も発生します。

津波が起こるメカニズムについては以下の記事も参考にしてください。

津波が起こるメカニズム!予想されている津波被害と防災について

大きな地震が発生してひずみが解消された後も、引き続きプレートは移動するためひずみが蓄積されていきます。そのため、南海トラフ地震は約100~150年間隔で繰り返し発生しているのです。

最後に南海トラフ地震が発生したのは1946年の昭和南海地震です。すでに前の南海トラフ地震から70年以上が経過していることから、南海トラフ地震の発生に緊張感が高まっています。

南海トラフ地震ではどの程度の津波がくると想定されているか

ここでは、南海トラフ地震でどれくらいの震度や津波が予想されているか、太平洋側の都市を中心に図表にしました。国が想定するなかで最も大きいマグニチュード(M)9クラスの地震が起きた場合について、2012年の国の有識者会議がまとめた報告書や自治体の報告書をもとに筆者が作成しました。


平成24年(内閣府南海トラフ巨大地震モデル検討会)と各自治体のハザードマップを参考に作成

東海~九州の太平洋側にかけて最大震度7が想定されています。また浜松市や高知市、宮崎市などは10mを超える津波が想定され、浜松市や津市、高知市などは地震発生から10分以内に津波が到達すると予想されています。

太平洋側は震源が近いことから震度が大きくなりやすく、津波到達の時間もかなり速いのが特徴です。

どんな対策が取られているか

南海トラフの被害は防災対策によって大幅に軽減できるといわれています。

たとえば、南海トラフの津波による人的被害は最大23万人です。日ごろから防災対策を行い、全員が発災してからすぐに避難を開始し、既存の津波避難ビルを有効活用できれば人的被害を4万6000人に減らせるという試算もあります。

津波以外の人的被害も、建物の耐震化や家具転倒落下防止などの防災対策をすることによって建物の人的被害を8万2000人から1万5000人に、感震ブレーカーの設置率を100%にして初期消火成功率の向上を図ることによって火災の人的被害を1万人から300人に減らせる、などの試算も出ています。

出典:内閣府「防災情報のページ・南海トラフ地震対策」

人的被害を最小限に抑えるため、国と自治体は中央防災会議が作成した南海トラフ地震に対する基本計画をもとにさまざまな施策を行っています。

震度6弱以上が想定される地域や津波高3m以上で海岸堤防が低い地域などは国から「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定され、指定された自治体は避難施設の整備や防災訓練の実施などを定めた「推進計画」を策定しています。

特に、地震発生から30分以内に30cm以上が浸水するなど、深刻な津波被害が予想される地域は、「津波避難対策特別強化地域」に指定され、津波対策などに国からの財政支援が受けられるようになっています。

ただし、国や自治体が防災対策を講じていても、地震が発生して命を守ることができるかどうかは、自分の行動次第です。

たとえば、津波による人的被害を減らすためには、全員が発災してからすぐに避難を開始し、既存の津波避難ビルを有効活用する必要があります。災害が発生して迅速な行動をするためには個人レベルでの防災対策がもっとも重要です。

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