「ヌーナン症候群」という病名をご存知でしょうか?あまり聞き慣れない人も多いかもしれません。
ヌーナン症候群は、難治性の遺伝子疾患です。生後間もない時期に発見されることもあれば、成長段階で異常が発見されることもあります。
ヌーナン症候群では、特徴的な顔貌・先天性の心疾患・低身長などの症状が現れることがありますが、その他にも症状は多岐にわたります。
症状の出方や重症度は人によって異なるため、その人に合わせた治療を行っていくことが特に重要です。
それでは、ヌーナン症候群の原因・症状や治療方法・日常生活の過ごし方での注意点を確認していきましょう。
ヌーナン症候群とはどんな病気?
ヌーナン症候群とはどのような病気なのでしょうか?
ヌーナン症候群(Noonan syndrome)は、新生児期に発症することが多い遺伝性の病気です。主に、特徴的な顔貌・心臓の異常・消化器系の異常・先天性の骨異形成などの症状がみられます。症状には個人差があるものの特徴的な顔貌に関しては、小さい頭・大きな瞳孔・眼瞼下垂・小さな鼻・小さな耳・大きな口・肥大した頬などが特徴的です。その他にも、免疫系の異常や発達遅延などがみられるケースもあります。また、この病気は難治性の疾患で、難病にも指定されています。国内では約600人ほどの患者さんがいると推定されているものの、未だ明らかになっていないことが多いです。
ヌーナン症候群は何が原因で発症しますか?
ヌーナン症候群は、細胞内のRAS-MAPK経路に関連する遺伝子の異常が原因で発症すると考えられています。異常が発生する遺伝子は様々で、PTPN11・SOS1・RAF1・KRAS・NRASなどが知られています。これらの遺伝子に異常が生じることで、特徴的な顔貌や疾患などが現れる病気です。しかし、約4割の患者ではこれらの遺伝子に変異が認められていないため、原因となる遺伝子が他にも存在すると考えられています。また、RAS-MAPK経路の異常と症状の詳しい関連については明らかになっていません。
ヌーナン症候群にみられる症状を教えてください。
特徴的な顔貌・心疾患・骨異形成・消化器の異常・免疫系の異常・発達遅延などがよくみられる症状です。特徴的な顔貌とは、頭が小さい・目と目の間が離れている・瞳孔が大きい・まぶたが垂れ下がっているというものです。他にも、鼻が小さい・口が大きい・耳が小さい・頬が大きく膨らんでいるなど、骨格の異常がみられることがあります。心疾患では心筋症や狭心症、骨異形成では肩甲骨が小さいことや腕の骨が短いことなどが挙げられます。さらに、消化器系の異常では胃が小さい・食道狭窄・消化不良などの症状がみられることも特徴です。しかし、症状には個人差があり、重症度もそれぞれ異なります。そのため、実際にはヌーナン症候群と診断されていない患者さんもいると考えられています。
ヌーナン症候群は生まれてすぐに発見するものなのでしょうか?
ヌーナン症候群は生まれてすぐに発見されることもあれば、成長してから発見されることもあります。生まれてすぐに発見される場合は、特徴的な顔立ちや心臓の異常などによって発見されることが多いです。しかし、症状が軽い場合・特徴的な顔立ちがみられない・心臓の異常がみられないなどの場合、ある程度成長してから症状が明らかになることもあります。その多くは、小児期の発達段階で見つかることがほとんどです。例えば、定期的な乳幼児健診などで発達遅延や異常が発見されることもあります。
ヌーナン症候群の診断・検査や治療方法
ヌーナン症候群はどんな検査を行うのでしょうか?
まずは特徴的な顔貌や骨格について検査します。また、ヌーナン症候群では心疾患が合併することが多いです。そのため、心電図検査で特徴的な所見がないか確認します。その他、身長や胸郭のつくり、家族歴などを含めて総合的に判断するのが一般的です。このような所見を満たす場合には、遺伝子検査を行い、確定診断へと至ります。しかし、遺伝子検査については遺伝子変異の検出率は約6割程度というデータがあります。そのため、すべてのヌーナン症候群患者に遺伝子に変異がみられるわけではありません。
ヌーナン症候群の治療方法を教えてください。
ヌーナン症候群は先天性の疾患です。遺伝子が大きく関連しているため、根本的な治療方法はありません。そのため、基本的には対症療法となります。例えば、低身長であれば、早い段階から成長ホルモンの治療を開始します。その他にも、発達遅延がみられる場合には、療育を行うことで周囲とのコミュニケーション能力を少しずつ向上させていきます。場合によっては、ファミリーカウンセリングなども有効です。患者の家族が病気に対して対処していけるように支援していきます。
配信: Medical DOC