退職金は大卒で「2230万円」!? 受け取り方次第で金額が変わるって本当?

一時金で受け取った方が税金面では優遇される

退職一時金と退職年金ではそれぞれにメリットがありますが、税金面を考慮した場合には退職一時金で受け取った方が有利になります。なぜなら前述で解説した通り、退職一時金は退職所得として、「退職所得控除」が適用されるからです。

 

以下のケースでシミュレーションしてみましょう。

【モデルケース】

・Aさん60歳

・勤続年数 42年

・退職金 2018万円(大企業、高校卒の平均額)

・退職一時金として全額を受け取る

前述で解説した退職所得控除の計算式にあてはめてみます。

800万円+70万円×(42年-20年)=2340万円

 

退職所得控除額は2340万円となります。

 

Aさんの退職金は2018万円なので、退職所得控除2340万円を差し引けば、所得は0になり、税金はかかりません。このように、退職一時金として受け取れば、2018万円の退職金が支給された場合でも、税金がかからないケースがあります。

 

一方、退職年金として分割で受け取る場合は、まず老齢厚生年金と老齢基礎年金に退職年金を合算します。その後、合算した金額から公的年金等控除額を差し引き、残った金額が所得税の課税対象になるので、どうしても課税所得が増えてしまうのです。

 

こちらもシミュレーションしてみましょう。

【モデルケース】

・Bさん60歳

・勤続年数42年

・公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)の年間支給額は236万円(※1)

・退職年金として年間100万円を受け取る(※2)

(※1)老齢基礎年金78万円、老齢厚生年金158万円の合計。老齢厚生年金は、平均標準報酬額57万円、加入月数504月(42年)として「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」で算出。

(※2)退職金2000万円を20年に分割して毎年100万円受け取ると想定。

 

前述で解説した雑所得の計算式にあてはめてみます。

(236万円+100万円)×0.75-27万5000円=224万5000円

 

224万5000円が課税対象になり、所得税、住民税などが課税されます。

 

自身のライフスタイルに合った方法を選びましょう

 

ここまで、退職金の平均額と、受け取りは「退職一時金」と「退職年金」の2通りの方法があることを解説してきました。

 

税金面を考慮した場合は退職一時金の方が有利であることがわかりましたが、税金面だけで判断し、退職一時金を選べばいいかといえば決してそうではありません。

 

一時金でまとまった資金が手に入ると、無駄遣いをしてしまう可能性が高い人は退職年金を選択した方がいいでしょうし、退職後すぐにまとまった資金が必要な人は退職一時金を選択した方がいいでしょう。

 

自身のライフスタイルに照らしあわせた上で、どちらを選択するか決めるようにしましょう。

 

出典

厚生労働省(中央労働委員会) 令和3年賃金事情等総合調査(確報)

東京都産業労働局 中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)

国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係

国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)

 

執筆者:辻本剛士

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士、証券外務員2種

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