本格デビュー間近!埼玉発の最高傑作いちご~注目の新品種はこうして誕生した。No.001

本格デビュー間近!埼玉発の最高傑作いちご~注目の新品種はこうして誕生した。No.001

「10年に一度の逸材」と呼ばれ、瞬く間に市場を席巻した人気のぶどう、シャインマスカットのように、末永く愛されるヒット品種を―。次世代のスターを生み出そうと奮闘を続ける、日本の農林水産の舞台裏を訪ねます。初回は、かつてはいちご王国だったこともある、埼玉県へ。

濃厚な甘みと爽やかな酸味のいちご!
新星「べにたま」はこうして生まれた

埼玉県農業技術研究センターが育成した新品種のいちご「べにたま」

埼玉県のごく一部の量販店でのみ手に入る「べにたま」。品種改良に9年をかけた待望の新品種です。

育成の中心を担った埼玉県農業技術研究センターの研究員、尾田秀樹(おだひでき)さんによれば「県内ではいちご摘みを楽しむ観光農園が増えていましたが、そこで栽培されているのは他県のブランドばかり。埼玉ならではの品種を望む生産者の声が高まったのがきっかけ」

実は埼玉県では1960年代頃からいちご生産が盛んになり、一時は全国首位の作付面積を誇ったこともあるそう。しかし、他県の有名ブランドが登場するにつれて、埼玉=いちご、というイメージは次第に薄れていきました。

県の代名詞になるような品種を、という期待を受けて、尾田さんたちは2007年から10年をかけて観光農園・直売所向けの「かおりん」と「あまりん」の2品種を育成。その試験栽培を迎えた2012年頃、今度は市場出荷向けの品種が望まれるようになります。


「べにたま」誕生の立役者、埼玉県農業技術研究センターの尾田秀樹さん

そこから9年。約8000株の中から選抜し、香りがよくて味が濃厚な「かおりん」と、三重県の品種「かおり野」とを掛け合わせて誕生したのが「べにたま」です。

元々いちごは専門分野ではなかったという尾田さん。苦みや渋みが強かったり、焼け焦げたゴムのような臭いがしたりと思いがけない結果が続き、やっと納得の味にたどり着いても、試験栽培に協力する生産者から傷みやすさや栽培しづらさを理由に却下されたこともありました。

「ようやく肩の荷が下りた、というのが正直な感想です」と振り返る尾田さんが、専門外だったからこそ味にこだわることができたと話す「べにたま」は、大粒でジューシー、濃い甘みと爽やかな酸味とのバランスがよくて食べ飽きることのないおいしさが魅力。さらに、収穫量も多くて、輸送にも強いという自信作です。

「べにたま」の流通は、2024年の年末頃から本格的に始まります。

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9年がかりの品種改良の末に誕生した「べにたま」

埼玉県熊谷市にある県の農業技術研究センターで生まれた新品種のいちご。オレンジ色を帯びた明るい赤色、大粒で整った円すい形も特徴。

SPECIFICATION

品種/べにたま
育成地/埼玉県
登録出願/2021年
交配/かおりん×かおり野

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