2023年度の年金額はなぜ上がる? そしてなぜ2種類?

マクロ経済スライドによる調整もある

ただし、実際の年金額について、新規裁定者は前年度より+2.8%、既裁定者は前年度より+2.5%、そのまま増えるわけではありません。年金額の改定にあたっては、マクロ経済スライドによる調整があります。2023年度の調整率として-0.3%分あり、その分、上昇が抑制されます。

 

また、賃金や物価の基準からすでにマイナス改定となる場合は、マクロ経済スライドの調整率によるさらなるマイナス改定は行いませんが、その未調整となっていたマクロ経済スライド調整率が翌年度以降に調整されるルール(※2018年度より)があり、2021年度と2022年度で調整できなかった調整率は合計-0.3%分あります。この未調整分は2023年度に調整されることになりました。

 

したがって、新規裁定者も既裁定者も-0.3%(2023年度のマクロ経済スライド調整率)と-0.3%(2021年度・2022年度未調整分)が調整され、実際は、2022年度と比べ、新規裁定者は+2.2%、既裁定者は+1.9%となります。

 

2023年度の実際の年金額

2022年度の老齢基礎年金の満額は、法定額78万900円に2022年度の改定率0.996を掛けて算出した77万7800円(100円未満四捨五入)が満額の老齢基礎年金でした。2023年度は2022年度改定率0.996に1.022(新規裁定者)あるいは1.019(既裁定者)を掛けた率が改定率となり、法定額に掛ける2023年度の改定率について新規裁定者は1.018、既裁定者は1.015です。

 

そして、実際の年金額は、新規裁定者が78万900円×1.018で79万5000円(100円未満四捨五入)、既裁定者が78万900円×1.015で79万2600円(100円未満四捨五入)です(図表2)。2022年度の額から見て、2.2%あるいは1.9%増えていることになります。

 

【図表2】

 

2種類の年金額があるため複雑になりましたが、このような仕組みで年金額の改定が行われます。

 

なお、加給年金、子の加算など新規裁定者の改定率・額のみを使う年金もあります。年金はこれ以外にも種類があり、その計算も細かくなりますが、2023年度の年金は2023年6月15日振り込み分(2023年4月分・5月分の年金)からとなります。

 

すでに受給している人は、6月初旬に届く「年金額改定通知書」で新しい年金額について確認してみましょう。

 

 

執筆者:井内義典

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

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