【対談】今すぐ読みたい、炊飯器のおいしい解説書。

樋口 直哉(料理研究家)×塚原 知里(パナソニック ライスレディ)

樋口直哉さんは、科学の視点から料理のおいしさを探求されている料理研究家であり、「新しい料理の教科書」という本の著者でもあります。今回の対談では、炊飯器の中で科学的にどんなことが起きているか、パナソニック「Wおどり炊き」のソフト開発に携わる炊飯科学のプロ“ライスレディ”に質問を投げかけていただきました。ごはんをおいしく楽しむ極意満載です。

※この対談は、2019年に実施されました。ご紹介している商品の名称や特長は、当時発売されていたものです。

お水は、ごはんの調味料。

樋口:「炊飯器の中で何が起きているか?」は外からはわかりません。そんなブラックボックスの中をメーカーの方にお聞きできるのが、とても楽しみです。

塚原:よろしくお願いいたします。

樋口:ごはんの調理で使われるのは、お米と水と火だけです。火については、炊飯科学のプロである塚原さんにお話しいただくとして、私は水の話に触れたいと思います。お米以外の材料はお水だけですから、お水はごはんの唯一の調味料。同じお米なのに、お水という調味料を変えるだけで様々なおいしさが楽しめます。こういう話をすると、「どのお水がいちばんですか?」と質問されますが、正解は1つではない気がします。

塚原:そうですね。どんなお水で炊いても、ごはんのおいしさを引き立てるのは炊飯器の役割です。

樋口:新潟のお米なら新潟の水というように、産地のマリアージュにこだわる人もいます。一般的には、日本のお米は軟水で炊くのがおいしいと言われていますが、同じ軟水でもPHやミネラルバランスが異なります。遠く離れた土地の天然水で炊いてみるのも面白いですし、浄水器の水など、いろいろ試してみてください。

最新技術で、かまど炊きを超えていく。

樋口:先日「Wおどり炊き」でごはんを炊いてみて、とても驚いたのですが、どうやってこのおいしさが生まれたのかをお聞きできればと思います。

塚原:私たちは、かまど炊きを超えるおいしさを目指して、かまど炊きの火加減を徹底的に分析してきました。

樋口:“はじめチョロチョロ”ではじまる、火加減の手順の言葉がありますね。

塚原:その通りです。“はじめチョロチョロ”の工程で、お米の芯まで水を吸わせ、“中パッパ”のところで、強い火力でムラなく沸騰させ、釜の中が沸騰したら吹きこぼれないように中火で今度はお米一粒一粒の中まで均一に火を通すように沸騰を維持させます。

樋口:なるほど“大火力おどり炊き”と“可変圧力おどり炊き”という2つの炊き技を使って、お釜の中の対流を変化させているのは、そういう理由だったのですね。

塚原:さらに15分くらい加熱を続け、釜の中の水分がなくなった段階で火力を止めます。最後に“赤子泣いてもふたとるな”の工程、15分程度蒸らしています。

樋口:私がすごいなと思うのは“お米一粒一粒の中まで均一に火を通す”技術です。私たち料理のプロにとって“一粒一粒、均一”という言葉が響きます。それがおいしいごはんを炊くためにとても重要だからです。

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