「脳卒中」というと、突然バタンと倒れるというイメージを持つ人が多いと思います。しかし、ちょっとした違和感や動かしにくさでも発症することも多いようです。今回は脳卒中の前兆となる症状について、「西原町脳神経外科クリニック」の中村先生に解説していただきました。
脳卒中(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)の症状や原因を医師が解説
編集部
まず、脳卒中について教えてください。
中村先生
正確に言うと、脳卒中は病名ではありません。脳の血管が詰まって流れなくなったり、脳の血管が破れたりすることによって、脳の血流が障害される状態の総称のことです。具体的な病名だと、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」や「くも膜下出血」が脳卒中にあたります。
編集部
それぞれの症状や原因について教えてください。
中村先生
脳梗塞は、脳の血管が狭くなったり、詰まったりして、脳に血液が流れなくなる状態です。血液は酸素や栄養などを脳に運ぶ役割がありますが、血流が滞るとその先の脳が機能しなくなってしまうのです。脳梗塞の原因は、いわゆる「血液ドロドロ」や血液を押し出すポンプである心臓の疾患などがあります。詰まった血管の場所や太さによって、意識障害や片麻痺、感覚障害や言語障害などの様々な症状が起こります。
編集部
脳出血についてはいかがでしょうか?
中村先生
脳出血は脳の中で血管が破れて出血してしまった状態で、原因は高血圧が最も多いですね。症状は出血の部位によって異なりますが、突然起こる頭痛や意識障害などが高頻度にみられます。
編集部
くも膜下出血についてもお願いします。
中村先生
くも膜下出血は、脳の表面近くにある血管が破れることによって、脳を覆っている「くも膜」と脳の間に出血してしまった状態のことです。原因としては、「脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)」という脳の動脈にあるコブが裂けて出血する場合が最も多いとされています。くも膜下出血の主な症状は、頭痛、意識障害、嘔吐で、重症化しやすい傾向にあります。
すぐに病院に行くべき脳卒中の前兆チェックリスト こんな症状があったら放置は危険
編集部
頭痛や吐き気があっても脳卒中と結びつけるのは難しいですよね。
中村先生
そうですね。突然激しい頭痛や嘔吐があった場合などはわかりやすいのですが、そうでない場合は、判断に迷ったり我慢してしまったりする人もいらっしゃるでしょう。
編集部
しばらく様子を見ても問題ありませんか?
中村先生
いいえ。脳卒中は、様子を見ても自然に治っていくケースはほとんどありません。TIA(一過性脳虚血発作)という特別な場合を除けば、どんどん症状が悪化していくのがほとんどなので、一刻も早く医療機関を受診してください。もちろん、仮にTIAであったとしても、医療機関の受診は必要です。
編集部
頭痛や吐き気以外にも、脳卒中の前兆・初期症状があれば教えてください。
中村先生
例えば、「身体のどちらか半分に力が入りにくい」「しびれたような感じがする」「呂律が回らない」などの症状は要注意です。また、「話していることが理解できない」「突然、視界が狭まる」などがあった場合も脳卒中の可能性があります。
編集部
ある程度、脳卒中の前兆となる症状はキャッチできるのですね。
中村先生
そうですね。あとは症状だけではなく、例えば「会社の健康診断などで高血圧や血液ドロドロを指摘されたことがある」「心疾患を持っている」「脳卒中になっているご家族や親戚がいる」といった場合も注意が必要です。
配信: Medical DOC