3、離婚時に子供の親権を決める方法は?
では、離婚時にどのようにして子供の親権を決めればよいのでしょうか。
ここでは、身上監護権と財産管理権の両方を合わせた「親権」を決めるための具体的な方法を解説します。
(1)まずは話し合い
まずは、夫婦間で話し合いましょう。
話し合いによって合意ができれば、どちらでも自由に親権者を定めることができます(民法第819条1項)。
ここですんなり話がつけば、決定した親権者を離婚届に記入して、あとは提出するだけで終了します。
ポイントは、どちらが親権者となるのが子供の成長のために望ましいかという観点から冷静に話し合うことです。
お互いに親権を譲らず、話し合いがまとまらない場合は、次のステップに進みます。
(2)話し合いがまとまらないときは調停
夫婦のみで問題を解決することができないときには、家庭裁判所に離婚調停(離婚届には親権者を記入しないと提出できないため、離婚だけ先行させることはできず、離婚調停のなかで親権者についての話し合いをすることになります)を申し立て、調停委員を間に挟んで話し合いを継続します。
専門的な知識や経験を有する調停委員からの助言や説得を交えて、当事者双方がさまざまな条件を譲り合い、合意を目指していくことになります。
調停は1月に1回のペースで、落としどころを探るために複数回実施される(つまり、数ヶ月にわたる)こともありますので、仕事がある方などは必要に応じてスケジュールを調整しましょう。
(3)最終的には離婚訴訟
調停でも合意できなかった場合、裁判で親権を争うことになります。
裁判では、自分の方が親権者としてふさわしいことを証明できる証拠を提出することが重要となります。
裁判所が証拠を精査し、あなたの方が親権者としてふさわしいと判断すれば、最終的に判決によって親権を獲得できます。
ここまでくると争いの長期化は避けられませんが、自分が折れる=子供と離れ離れになるということなので、後悔しないためにも最後まで最善を尽くしましょう。
(4)子供自身が親権者を選ぶことは可能?
結論から言いますと、15歳以上の子供は自分で親権者を選ぶことも事実上、可能です。なぜなら、親権者を指定する審判が行われる場合、家庭裁判所は子供の意見を聴かなければならず(家事事件手続法第169条2項)、その意見は最大限に尊重されるからです。
したがって、絶対とまでは言えませんが、15歳以上の子供が親権者について希望を述べた場合には、基本的にその希望に従って親権者が指定されることになります。
なお、子供が15歳未満の場合でも、家庭裁判所は審判をするに当たり、子供の意思を把握するように努め、その意思を考慮することとされています(同法第65条)。
おおむね12~13歳以上の子供の意見はある程度尊重されますので、子供の希望に従って親権者が指定されるケースも多くなってきます。
子供が12歳未満の場合、その意見は参考にされる程度に過ぎませんのが、調査官による調査で意向は把握されるでしょう。
4、子供の親権者を獲得するための条件は?
話し合いがまとまらない場合、どのような基準によって親権者が決められるのかは気になるところでしょう。
ここでは、裁判所が親権者を決めるにあたって重視する判断基準について、ポイントをご紹介していきます。
親権を獲得するための条件は、以下の判断基準についてできるだけプラスの評価を得ることです。
(1)子供に十分な愛情を注いでいるか
当然のことですが、子供に対する愛情が深いほど親権を獲得できる可能性が高くなります。
ただ、愛情は目に見えないものですので、裁判では客観的な事情も考慮して愛情の深さが測られます。
したがって、普段から子供とどれくらいの時間を過ごしていたか、どのように子供と接していたのかが重要となります。
父親の場合、平日は仕事で忙しくても休日には子供との時間を優先していたか、学校や保育園の行事に参加していたか、母親の家事を手伝うことによって子育てをサポートしていたかなど、子供との関わり方が重要視されます。
(2)これまで子育てに十分に関わってきたか
これまで子育てに十分に関わってきたかどうかという点は、子供に対する愛情の深さを測る以外にも、非常に重要な意味を持っています。
養育の状況はできる限り変更しない方が子供にとって望ましいと考えられているので、これまで主に子育てを行ってきた側の方が親権争いで有利となります。
一般的には母親が主に子育てを行っている家庭が多いため、離婚後も母親が親権者となるケースが多いのです。
そのため、毎日外で働いている父親がどうしても不利になることは否定できません。
父親が親権を獲得するためには、忙しくてもできる限り子育てに関わる努力をしていたという点をアピールすることが必要です。
(3)今後も子育てに十分な時間を割けるか
子育ては今後も子供が成人するまで続いていきますので、離婚後も子育てに十分な時間を割けるかどうかという点も重要です。
この点、母親は婚姻中に専業主婦として子供の面倒をずっと見ていたとしても、離婚後は自分も仕事をしなければならないことも多いでしょう。
そうすると、子育てに割ける時間は減ってしまいます。
それに対して、父親は仕事を調整したり、場合によっては部署異動や転職をすることによって子育てに割ける時間を増やすことも可能でしょう。
親権を獲得するには、子供のことを第一に考える姿勢が重要となってきます。
(4)子供の面倒を見てくれる人が他にもいるか
離婚後、一人で子供を育てていくのは大変なことです。どうしても子育てに手が回らないということもあるでしょう。
そんなとき、自分の代わりに子供の面倒を見てくれる人がいれば、親権を獲得できる可能性が高まります。
例えば、近くに自分の実家があり、自分が仕事に行っている間は両親が子供預かってくれるなど、子供の世話をする人の手が多ければ多いほど、それはプラスの判断材料になります。
(5)子供の生活環境に大きな変化を及ぼさないか
両親の離婚後に子供の生活環境が変わることは、子供にとって大きな負担となります。
そのため、基本的に今の子供の生活環境をなるべく変えずに済む方が親権を獲得しやすいという傾向があります。
具体的には、家の引っ越しや転校をせずに済む方が、この点では有利になります。
(6)経済状況が安定しているか
子供に人並みの生活や教育を与えるためには、それなりのお金が必要となります。
したがって、経済力がある方が親権争いで有利になるといえます。
ただし、経済力が乏しければ親権を獲得できないわけではありません。
離婚後、親権者の経済力が不足する場合は、もう一方の親から支払われる養育費で補うべきと考えられているからです。
したがって、専業主婦などで本人の経済力がなくても親権を獲得できる可能性は十分にあります。
もっとも、借金を抱えていたり、浪費癖があるなどの理由で、養育費をもらっても生活が苦しいというような場合は不利となる可能性があります。
(7)親の健康状態に問題はないか
親が心身ともに健康であることも、親権を獲得するための重要な条件です。
どれだけ子供への愛情が深くても、病気などのため現実的に子供の身の回りの世話ができないということであれば、やはり親権者としては不適格だからです。
精神的な病を抱えている場合も、症状や生活状況によっては親権者として適していないと判断される可能性があります。
持病があれば親権の獲得は不可能というわけではありませんが、子育てに支障がない程度に心身が健康であることは必要です。
(8)子供がどちらとの生活を望んでいるか
前記「3」(4)でもご説明したように、15歳以上の子供がどちらの親と生活したいかを裁判所に対して述べた場合は、基本的に子供の意思に従って親権者が指定されます。
子供が15歳未満の場合でも、子供の意思はある程度考慮されます。
したがって、子供から慕われているかどうかという点も、親権を獲得するための重要な条件となります。
そのためにも、普段から子育てに積極的に関わり、十分な愛情を注ぐことが大切です。
ただし、子供の気を引くために配偶者の悪口を吹き込むようなことは子育てにおいてよくないことですので、親権争いでもマイナスの判断材料となります。
配信: LEGAL MALL