替え玉受験は依頼した方も犯罪!刑罰や発覚したときの対処法は?

替え玉受験は依頼した方も犯罪!刑罰や発覚したときの対処法は?

「替え玉受験を依頼してしまったが、罪に問われてしまうのか」とお悩みでしょうか。

替え玉受験は、実行者に犯罪が成立しますが、依頼者も合格を取り消されるだけではなく、共犯として罪に問われることがあります。

また、場合によっては、逮捕される可能性もあり、早期に対応する必要があります。

そこで今回は、

替え玉受験とは
替え玉受験の実行者に成立する犯罪と刑罰
替え玉受験の依頼者に成立する犯罪と刑罰
替え玉受験で罪に問われたらどうなるか

等について解説しています。

この記事が、軽い気持ちで替え玉受験を依頼してしまった方や請け負ってしまった方の参考となれば幸いです。

1、替え玉受験とは

替え玉受験とは、受験者以外の人が、受験者になりすまして試験を受けることです。

替え玉受験といっても、最近ではWebテストなども増えており、態様もさまざまです。

替え玉受験を行うケースとして、代表的なのが次のようなケースです。

(1)大学入試や資格試験を別人が受けるケース

大学入試や資格試験といった、会場で答案用紙に解答を書き込む形式の試験で、受験者ではない別の人物が、受験者本人になりすまして試験を受けるケースです。

受験者から依頼された人物が、受験者から受験票などを受け取って試験官に提示し、受験者の署名を使って答案用紙に解答を書き込みます。

通常、受験者が、受験者よりも知識やノウハウが豊富で、受験者本人よりも合格できる可能性が高い人物に対して依頼します。

従来は、このようなケースが、替え玉受験の典型的な例とされていました。

(2)就活のWebテストを別人が解答するケース

就職活動で、能力検査や性格検査のために、履歴書などのほかに、Webテストを課されることがあります。

Webテストは、自宅などのパソコンから解答する形式と、テストセンターと呼ばれる専用の会場で解答する形式がありました。

しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により、感染防止の観点からテストセンターでの受験は急速に減り、自宅などのパソコンから解答する形式が増えました。

その結果、受験者から依頼された別人が、受験者になりすまして、パソコンで解答をするケースが増えてきました。

(3)就活生が替え玉受験に頼ってしまう背景

Webテストは、多くの企業で、いわゆる足切りのために行われています。

企業には何百通、何千通の履歴書が届き、求人への応募があります。

しかし、企業としても応募者全員の履歴書に目を通したり、応募者全員と面接したりすることは時間的にも不可能です。

そのため、Webテストの点数で一定程度の水準をクリアした応募者のみを選考することで、採用活動を効率的に進めているのです。

一方で、Webテストは過去問をしっかり解いて対策していても解けないほど難しい問題も多いです。

そこで、応募者は何とかしてWebテストを通過するために、替え玉受験やカンニングなどの不正行為に頼ってしまうという背景事情があります。

2、替え玉受験の実行者に成立する犯罪と刑罰

替え玉受験の実行者に成立する犯罪は何か、その刑罰はどのようなものかを解説します。

(1)有印私文書偽造罪・同行使罪

大学入試や資格試験など、答案用紙に書き込む形で解答する試験で、替え玉受験をした場合には、有印私文書偽造罪(刑法159条1項)と同行使罪(刑法161条1項)が成立する可能性があります。

有印私文書偽造罪とは、行使の目的で、他人の印章もしくは署名を使用して権利、義務もしくは事実証明に関する文書を偽造した場合に成立します。

そして、この偽造した文書を行使すると、偽造私文書行使罪が成立します。

替え玉受験の場合、替え玉受験を依頼した人の承諾を得て、文書を偽造しているため、犯罪にならないのではないかと疑問に思うかもしれません。

しかし、判例上、一定の文書において、自己の名義による文書作成に承諾を与えた場合でも私文書偽造罪は成立するとされています。

裁判例でも、大学受験の答案について、答案は、志願者本人の学力の程度を判断するためのもので、作成名義人以外の者の作成が許容されるものではないから、名義人の承諾があっても、私文書偽造罪は成立すると判断されたケースがあります。

替え玉受験の場合は、替え玉受験を請け負った人が、自ら解答した解答用紙を提出して行使しています。

そのため、有印私文書偽造罪と偽造私文書行使罪が成立したうえで、これらの罪が牽連犯(刑法54条1項後段)となり、3月以上5年以下の懲役となります。

(2)偽計業務妨害罪

替え玉受験は、偽計業務妨害罪(刑法233条)が成立する可能性もあります。

偽計業務妨害罪とは、偽計を用いて、業務を妨害した者に成立します。

偽計とは、他人を欺き、あるいは他人の錯誤または不知を利用することをいいます。

替え玉受験では、学校や企業に対して、自分は受験者本人であると騙して、試験を受験します。

騙された学校や企業は、選考業務を妨げられるだけでなく、試験のやり直しや、合格者の繰り上げなどの余計な対応を強いられることにもなります。

替え玉受験は、偽計を用いて、学校や企業の業務を妨害しているとして、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

偽計業務妨害罪は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。

(3)建造物侵入罪

替え玉受験は、建造物侵入罪(刑法130条)が成立する可能性もあります。

建造物侵入罪とは、正当な理由がないのに、建造物に侵入した場合に成立します。また、侵入とは、建物の管理権者の意思に反する立入りのことをいいます。

試験会場となる建物は、一般に立入りが許可されている場所なので、替え玉受験の目的で立ち入っても、管理権者の意思には反しておらず、建造物侵入罪が成立しないようにも思えます。

しかし、替え玉受験という違法な目的での立入りは、その違法な目的が明らかとなれば管理者は立入りを認めないであろうという意味で、建物の管理権者の意思に反する立入りであるとして、建造物侵入罪が成立する可能性があります。

建造物侵入罪は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金となります。

(4)電磁的記録不正作出・同供与罪

最近は、資格試験や就職活動において、コロナ禍の影響で、オンラインでのWebテストが増加しています。

このようなオンラインでのWebテストでは、紙の解答用紙に解答を記入する場合と違って、文書偽造罪の客体となる「文書」が用いられないため、私文書偽造罪が成立しません。

また、会場に赴くこともないため、建造物侵入罪も成立しません。

しかし、Webテストでの替え玉受験は、電磁的記録不正作出・同供用罪(刑法161条の2第1項・3項)が成立する可能性があります。

電磁的記録不正作出罪は、人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務または事実証明に関する電磁的記録を不正に作った場合に成立します。

また、同供用罪は、不正に作られた権利、義務または事実証明に関する電磁的記録を、人の事務処理を誤らせる目的で、人の事務処理の用に供した場合に成立します。

Webテストでの替え玉受験は、Webテストでの選考という事務処理を誤らせる目的で、「受験者Aさんは〇点であり、合格基準に達している」という事実を証明する電磁的記録を不正に作り、提出しているため、これらの犯罪が成立すると考えられます。

電磁的記録不正作出・同供用罪は牽連犯(刑法54条1項後段)となり、5年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。

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