年金の繰下げ受給による増額率は、普通預金や株式投資の利回りより高いにもかかわらず、あまり利用されていません。「繰り下げ中にまとまったお金が必要になったら」、「受け取る前に亡くなったら」などと心配に感じることもありますが、対応を知ることで不安を解消できる場合もあります。
65歳になったときに生活資金に余裕がありそうであれば、本記事を参考に繰下げ受給も検討してみてはいかがでしょうか。
年金の繰下げ受給とは
老齢基礎(厚生)年金の繰下げ受給とは、年金を65歳で受け取らずに66歳以後75歳までの間で繰り下げて受け取ることをいいます。66歳まで受給していなければ、75歳まで毎月0.7%の割合で年金額が増額され、その増額率は一生変わらないのがメリットです。なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げできることも覚えておきましょう。
年金の増額率を式で表すと次のとおりになります。
増額率=0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数
65歳以降、請求時の年齢ごとの増加率は次のとおりです(ここではそれぞれの年齢の0ヶ月の場合のみ記載)。
・66歳(8.4%)
・67歳(16.8%)
・68歳(25.2%)
・69歳(33.6%)
・70歳(42.0%)
・71歳(50.4%)
・72歳(58.8%)
・73歳(67.2%)
・74歳(75.6%)
・75歳(84.0%)
現在、国内のとある大手金融機関での普通預金の年利は0.001%(定期預金は0.002%)、株式の配当利回りは約2%、10年ものの日本国債の利回りが約0.6%であることを考えれば、1年繰り下げるだけでも大変有利な運用方法といえます。
年金の繰下げ受給でいくら増えるか
年金を繰り下げて66歳で受け取った場合の金額を試算してみましょう。2023年度に受け取れる年金額に、繰り下げによる増加率を乗じます。
・基礎年金(67歳以下で満額受け取れる場合)
月額6万6250円×12月×8.4%=6万6780円
・厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)
22万4482円×12月×8.4%=22万6277円(端数切り捨て)
1年繰り下げただけで、年間で約1月分が増えることになります。
配信: ファイナンシャルフィールド