会社員のAさんは、日頃から「ちょっと風邪ぎみかな?」という程度であれば市販薬を服薬しています。市販薬は数種類、常備薬として自宅用・会社用と分けて買うため、市販薬を購入する機会が多いです。
このような場合、医療費控除やセルフメディケーション税制の対象になるのでしょうか?
医療費控除と特例
一定額以上の医療費を支払ったときは、確定申告で医療費控除を所得金額から差し引くことができることを、知っている方は多くいらっしゃるでしょう。
医療費控除には、実際に医療機関に掛かった場合の「通常の医療費控除」と、軽度の不調は医療機関に掛からず、指定の市販薬を用いて自分で手当てする「セルフメディケーション税制(医療費の特例)」の2種類があります(セルフメディケーション税制は、令和8年12月31日まで延長されています)。
どちらも、申告者本人の分のみならず、生計を一にする家族のために支払った医療費や購入費も合算して申告できます。また、実際に支払った分が、その年の控除額となります。
ただし、確定申告の際、どちらか一方でしか申告できませんし、その後、修正申告・更正の請求をする場合にも変更はできないことに注意しましょう。
通常の医療費控除
ところで、医療費控除の対象となる医療費はどんなものが含まれるのでしょうか。ドラッグストアで買った市販薬は、対象になるのでしょうか。
図表1は、国税庁のホームページで例示されたものです。
【図表1】
(出典:国税庁「医療費を支払ったとき」)
医療費は、治療の対価のほか、通院費や医師等の送迎費用、医療器具の購入や借り入れの費用など、「医師等による診療等を受けるために直接必要なもの」が対象です。
よって、健康診断や特定健康診査の費用は医療費控除の対象となりませんが、診断の結果、重大な疾病が発見されて治療を受けた場合や、医師の指示により特定保健指導を受けたときは、健康診断や特定健康診査の費用は医療費控除の対象になります。
その他、「治療や療養に必要な医薬品の購入の対価」も対象になります。
医師の処方や指示による購入だけでなく、医師の処方箋がなくても、治療や療養に必要なものであって、その症状に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額であれば、医療費控除の対象となります(所得税法施行令第207条)。
通常の医療費控除額は、その年に支払った医療費-保険金などで補てんされる分-10万円、または所得の5%との少ないほうで計算します(最高200万円)。10万円または所得5%の少ないほうを超えないと、医療費を支払っても医療費控除ができません。
もし、購入商品がセルフメディケーション税制の対象商品であれば、セルフメディケーション税制を利用できます。
配信: ファイナンシャルフィールド