【医師解説】EXILE・ATSUSHIが発症した「ライム病」の症状・感染経路とは?

【医師解説】EXILE・ATSUSHIが発症した「ライム病」の症状・感染経路とは?

EXILEのボーカルを務めるATSUSHIさん(43)が、公式Instagramのライブ配信で、マダニなどを媒介して感染する「ライム病」を患っていることを発表しました。同ライブの中で、「完治するまでに2~3年かかるらしい。原因が見つかって良かった」と話しています。そんなライム病について、感染経路や症状・診断・治療方法・予防法などを解説します。ライム病とは、スピロヘータという細菌の一種、ボレリアによって引き起こされる感染症のことです。ヒトには、野生のマダニ科マダニ属のダニを介して感染します。登山やキャンプによく行かれる方や、標高の高い山間部にお住いの方は、注意しておきたい感染症です。

ライム病の感染経路や症状

ライム病の原因や感染経路を教えてください。

ライム病の原因は、スピロヘータという細菌の一種、ボレリアによるものです。ボレリアを保菌している野ネズミや野鳥などについていた、野生のマダニ科マダニ属のダニがヒトを刺咬することによって感染します。
ヒトからヒトへの感染はありません。
また、普段よく耳にする、寝具などに発生するイエダニからの感染もありませんのでご安心ください。少し咬まれてしまった程度ではめったに発症しませんが、ボレリアを保有するマダニが36時間以上にわたって付着していた場合には注意が必要です。

ライム病は日本でもみられる病気ですか?

アメリカでは年間数万人のライム病患者が発生しており、さらにその数も年々増加傾向にあることから、社会問題になっています。日本でも、アメリカほど多くはありませんが、感染患者が報告されています。
日本でのライム病感染の原因はシュルツェマダニによる刺咬がほとんどです。シュルツェマダニの生息地は、北海道や東北地方などのやや寒冷な地域・本州・四国・九州の標高の高い山間部です。
とくに北海道や東北地方の一部においては、市街地から離れた平野部でも生息しており、日本での感染患者の多くは北海道に集中しています。
しかし、ボレリアを保菌している野生動物やマダニの病原体保有率はアメリカと同程度であることから、実際の感染患者はもっと多いと推測されています。

感染初期の症状は?

感染初期(ステージ1)では、ライム病特有の遊走性紅斑という皮膚症状がみられます。見た目は一定ではありませんが、刺咬された部分が赤くなり、次第に的(まと)のように二重丸のような輪が5~20㎝ほどの大きさにまで広がるような症状が多くみられるようです。
痛みやかゆみはなく、触れるとほんのり熱をもっている程度です。こちらは数週間程度で消失します。
インフルエンザのような症状を伴うケースも報告されています。具体的には、筋肉痛・関節痛・頭痛・悪寒や発熱・全身の倦怠感などです。症状が軽度だと、気付かないこともあるので注意が必要です。

播種期の症状は?

播種期(ステージ2)では、病原体が血流やリンパ液にのることで全身に拡散されていきます。症状も全身に広がり、皮膚症状・神経症状・心疾患・眼症状・関節炎や筋肉炎などが具体的な症状です。
ほとんどの症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しますが、全身の不調や疲労感は継続します。髄膜炎や顔面神経マヒ、不整脈や胸痛を伴う心筋炎・心膜炎といった重篤な症状に発展するケースもあります。日本での症例はあまり多くありません。

慢性期の症状は?

慢性期(ステージ3)では、重度の皮膚症状や慢性的な関節炎などの症状がみられます。
慢性萎縮性肢端皮膚炎になると、影響を受けてしまうのが末梢神経です。知覚神経障害を伴い、皮膚がちぢれたようになります。慢性関節炎は関節液が関節に溜まることから、腫れや傷みを伴う可動域制限がみられます。
また、慢性脳脊髄炎になると、倦怠感や疲労感・抗うつ症状などが長期的に続き、日常生活にも支障をきたしてしまうでしょう。現在、日本において慢性期の患者はまだ報告されていません。

ライム病の診断や治療方法

ライム病はどのように診断されますか?

ライム病の診断には、まず問診が行われます。マダニと接する機会があったかどうかを判断するためです。
野山にでかける機会はあったか?ライム病特有の遊走性紅斑はみられるか?この二点が診断において大切な手がかりになります。
遊走性紅斑が発生しないケースもあるので、インフルエンザのような症状があるだけでは見過ごされてしまうこともあります。

診断するにあたってどのような検査が行われますか?

紅斑がみられる場合には、皮膚生検という方法で患部の組織をくりぬき、ボレリアが検出されるか検査します。皮膚の一部をくりぬくと聞くと驚いてしまうかもしれませんが、局所麻酔を使用し、長くても30分程度で終わる検査です。
全身麻酔ではないので、検査後に眠くなることもありません。他には、病原体の遺伝子や抗体を調べるための血液検査やPCR検査などが行われます。
アメリカでは、まれにですが関節液や髄液を採取して検査することもあります。

ライム病の治療方法は?

細菌感染ですので、抗菌薬による治療が行われます。
初期症状の遊走性紅斑には、ドキシサイクリンなどの抗菌薬を2~3週間ほど服用します。髄膜炎・関節炎に進行してしまった場合には、セフトリアキソンを2~4週間ほど注射や点滴によって投与することが有効です。
症状が軽度であれば、経口薬でも治療ができます。心臓に症状がでてしまった場合は、ペースメーカーが必要になってしまうケースもあります。
早期にしっかり治療することで合併症を予防できる効果が期待できますので、初期段階でしっかり病原菌を退治することが重要です。

ライム病を治療しないとどうなりますか?

最初の感染から数か月、数年経ってからステージ3にあげた慢性症状があらわれます。すでに病原菌が全身を巡っている状態ですので、どこで炎症が起きてもおかしくありません。
長年にわたる疲労感や倦怠感・末端神経障害などが発生し、日常生活に支障をきたしてしまうでしょう。
ひざなどの大きな関節において、腫れや痛みが数年にわたって繰り返されるケースもあります。良くなったり悪くなったりを繰り返すので、非常にやっかいな病気です。
初期症状である遊走性紅斑が、ライム病を診断する大切な手がかりになります。消失してしまう前に早めに医師に相談し、適切な治療を受けましょう。

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