なぜめでたい?「明けましておめでとう」
賀詞の超定番といえば「明けましておめでとうございます」。新年を迎えた平和なムードを感じますが、長年見続けていると素朴な疑問も…。「年が明ける」ことって、そんなにめでたいのでしょうか?
この「おめでとう」、実は「年明け」だけを指す言葉ではないそうです。本来の正月とは、家に年神様をお迎えする時期。このため実際の意味は、「年が明けて」(年神様を無事に迎え入れることができたから)「おめでとう!」となるのだとか。なるほど、家に神様がやってくるなら、それはたしかにめでたい話ですよね。
新年の勢いを感じる!「賀正」「賀春」
賀詞は漢文体に由来するため、それぞれの漢字に意味があります。ここで紹介する賀詞の漢字は、昔と比べて意味が激変していないので、そのまま調べると大意をつかむことができます。
まずは、立派な筆文字で書かれていることが多い賀詞「賀正」と「賀春」。「goo辞書」によると「賀」は「よろこぶ。祝う。よろこび」などの意味です。また「正」は「正月」を示しています。
では、賀詞を分解してみましょう。
賀正: 賀(祝う) + 正(正月)
賀春: 賀(祝う) + 春(新春)
「祝う!正月!」「祝う!新春!」と、どちらも年明けらしい清々しさを感じますね。ただし、「明けましておめでとう」も正月や春の訪れ(に伴う年神様の迎え入れ)を祝っているため、おなじ年賀状に書くと連呼していることに。どちらか一方で十分だそうです。
一歩下がってつつしもう!「謹賀新年」「恭賀新年」
「賀正」「賀春」に“とあるニュアンス”をプラスしたものが「謹賀新年」「恭賀新年」です。「goo辞書」によると「謹」は「つつしむ。かしこまる」、「恭」は「うやうやしい。かしこまる。つつしむ」の意味。
では、賀詞を分解してみましょう。
謹賀新年・恭賀新年: 謹・恭(つつしんで。かしこまって) + 賀(祝う) + 新年(新年)
一目瞭然!「謹賀新年」「恭賀新年」は「つつしみ」がプラスされた賀詞です。目上の人に使うとされる根拠もここに。「新年」の部分は「新春」と入れ替えてもOK。仕組みを知ると納得ですね。ちなみに、同年代や後輩には「賀正」「賀春」で問題ありません。
そもそもどう読めばいいの!?「敬頌新禧」
賀詞の分解で意味がわかると、選択の幅も広がりますね。「ありきたりのものは嫌だ」と思うなら、見た目からして立派そうな賀詞「敬頌新禧」はいかがでしょう?「実は読み方に自信がない…」人はこの機会に覚えれば安心!答えは「けいしょうしんき」です。
「goo辞書」によると「敬」は「うやまう。うやまいつつしむ」、「頌」は「ほめる。ほめたたえる」などの意味。
では、賀詞を分解してみましょう。
敬(うやまい)+ 頌(ほめたたえる) + 新禧(新年の喜び)
「なにもそこまで…」と思ってしまうほど、相手をうやまう意識に満ちあふれています。マナーにうるさい上司や目上の知人には最適。「目上には文字が多い賀詞を選ぶ」とシンプルに覚えてもOKです。ただし、自分で書く場合はハードルが高くなりますが…。
年賀状は絶滅の危機!一抹の寂しさも…
郵政博物館によると、日本の年賀状は明治時代に一般化したと見られています。年賀状自体の由来はさらに古く、平安時代の文例集には賀詞の例文が書かれています。また、正月にあいさつ回りをする習慣も当時からのもの。それから時代を経て人間関係が広がり、通信事情が向上するにつれ、書面だけで済ませる傾向が強くなったとする説が有力です。
そして現在は、インターネットの普及により書面での年賀状も衰退へ。時代の流れではありますが、完全になくなってしまうと寂しい気もしますね。手軽なメールやチャットと、風情ある郵送の年賀状。どちらとも上手にお付き合いしたいものです。