こぼした水「親が拭く子」と「自分で拭く子」の決定的な違い【モンテッソーリ教育の視点から】

こぼした水「親が拭く子」と「自分で拭く子」の決定的な違い【モンテッソーリ教育の視点から】

かわいい我が子のためには、なんでもやってあげたい!  そんな気持ちは親なら誰しも持つものでしょう。しかし、その「親がなんでもやってあげる」の方向性を誤ると、子どもの成長を邪魔してしまいかねない状況に……!?

10年以上の保育園・幼稚園での現場経験を持ち、国際モンテッソーリ協会0-6歳ディプロマもある北川真理子さん。2023年に男の子を出産された3児の母でもある北川さんは、『ゆる~く楽しく続く!おうちモンテッソーリの知育あそびアイデア帖』(日本文芸社)など、子どもの育ちに役立つ本を多数書かれています。

インタビュー連載(全3回)の第二回となる本記事では、前回の「乳幼児期に大事なこと」に続き、北川さんに「子どもの“やりたい・できた!”の大切さ」についてお伺いしました。

お話をしてくださった方

北川 真理子 さん

(国際モンテッソーリ協会0〜3歳/3〜6歳ディプロマ、元幼稚園教諭・保育士)

おうちで育む 子どもの「やりたい!」「できた!」の気持ち

―― モンテッソーリ教育を実践するうえで、家庭生活で大切にしたいことはどんなことですか?

北川真理子さん(以下、北川) 家庭で一番大切なことは、「家族の一員として過ごすこと」です。家族という枠組みの中で生活することによって、協調性が養われます。また人のために何かをして感謝されることで、自分は誰かの役に立つ人間なんだ、と感じることができます。

―― 家族の一員として家事も分担して、できたら「ありがとう」と感謝を伝えるのがいいのですね。

北川 そうですね。家族はお客さんではありません。お客さん=何でもやってもらえる存在になると、成長して社会に出たり家庭を持ったりしてからも「やってもらえてあたり前」と思ってしまうでしょう。

家族は誰かが一方的にやってもらうのではなく、協力しあう存在です。子どもが小さくても、よちよち歩きでも、食卓にスプーンを運ぶことはできます。みんなで家のことをやることで協調性も育ちますし、家族に「ありがとう」と言われることで、「自分は役に立つ人間なんだ」「お母さん、お父さんに感謝された、自分はすごいぞ!」と思います。そうやって大人になると、自然と人の役に立つようなことができるようになります。小学生になったらクラスや友だちのために自ら動いたり、中高校生になったらボランティアなどで誰かのために、働き始めたら社会や仲間・会社のために、結婚したら家族のために……と、人のために何かができるような人になっていくんです。

―― 家族の役に立つことを経験しながら育つことで、人のために自分から動けるようになるのですね。

―― 書籍では、日常生活の練習としてバナナやリンゴを切ることが紹介されていました。これも家族のために切って食べさせてあげることで、自分が役に立つ人間だと思えるということでしょうか。

北川 子どもと料理をするメリットは、料理を覚えることではありません。おままごとをやり始める時期の子どもは、本物でやったらとにかくうれしい。「こんなのできた!」とうれしいんです。そんなとき、家族みんなで作った料理を食べて「今日は〇〇くんが作ってくれたごはんおいしいね」などと褒められると「感謝された、誰かの役に立った」とすごい自信につながりますね。

役に立つことは、ちょっとしたことでもいいんです。和え物で材料を入れて混ぜるだけでもいい。食育にもつながりますし、調理は工程が多いこともポイントです。おもちゃで遊ぶことは、そんなに工程は多くないものです。料理をすると材料を出して、切って、作ったら運んで、とただ座って遊ぶよりも多くの工程をこなすことになります。小さいうちから料理をしていると、ものごとを順序立てて考えることができるようになりますよ。いきなりすべてすることはハードルが高くても、まずは一緒に準備をするところから始めて、次は1工程だけでもいいんです。それで様子を見てできるようであれば、もっとお願いする工程を増やしていけばいいと思います。

『ゆる~く楽しく続く!おうちモンテッソーリの知育あそびアイデア帖』より

―― おもちゃでなく、大人と同じ本物を使う体験が大切なんですね。

北川 大人はおもちゃを使わないし、生活に、生きるために必要なことしかしないものです。子どもは好きでおままごとをやったりしますが、本当の料理をやらせてあげると子どもも一人前になれます。すると達成感を味わうことができて、自立心を育てることにもつながります。それが大きな自信となって、その自信が次に挑戦する心になるんです。

―― コップやお皿は割れるものを使うこともモンテッソーリの基本となっていました。

北川 自分でコントロールができない1歳くらいの小さなお子さんが食器洗いをするときは、木製の食器ではじめてもいいと思います。気をつけて両手で持つことができるようになったら、陶器を持たせてあげるといいですね。ただ割れるものといっても、うすはりのような割れやすいものは危険でもあるのでおすすめできません。

―― 大人がある程度危険を除きながら、本物を使わせるということですね。

北川 大人もプラスチック製の食器はぞんざいに扱いがちです。これがガラス製になると、割れないようにそっと扱ったり、やさしく置いたりしますよね。それを子どもは観察しているんです。

―― 大人の行動を見て学んでいるなら、食器は日頃から気をつけて扱うものを使っていきたいですね。

北川 そうですね。子どもは本当に大人をよく見ているので。

「自分でおそうじできる!」が挑戦できる心を作る

―― おそうじには、まちがいの自己訂正の効果があるとのことでした。

北川 親御さんは普通、子どもがこぼしちゃうから、ばらまいてしまうからやらせたくない、と思うことがありますよね。モンテッソーリ教育を実践する親や先生はその逆で、むしろこぼすから・バラバラにするからやらせたい!と思っているんです。こぼしたら「こぼしちゃったね!」と言って、でも先生は実は喜んでいるんです。そのあと「これはこうやって拭くんだよ」とか、「これは拭いてもとれないから、バラバラになったからホウキではこうね」、などと言って、「間違ってもいいんだよ」という想いを伝えることができるから。「間違えてしまっても、自分で戻せればいい」ということを行動として伝えていますし、精神的な面でも「間違えてもいいんだよ、元に戻せれば大丈夫だよ」と伝えることになり、大人になっても間違えてもへこたれない、もう一度やってみよう、という精神を作っていくことになるんです。

―― 親は、子どもが何か失敗したら教えるチャンスと思った方がいいのですね。

北川 そうなんです。だから何かやらせてあげる前に、まちがいの自己訂正をできる環境を作っておいた方がいいですね。ふきんを子どもの手の届くところに置いたり、子どもが使えるようなホウキや塵取りを用意したり。

―― なるほど。失敗しても自分でリカバーしてくれれば、大人も助かりますね。

『ゆる~く楽しく続く!おうちモンテッソーリの知育あそびアイデア帖』より

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