抗生物質が効くのは細菌だけ
風邪などの感染症の原因となる主な病原体は「細菌」と「ウイルス」ですが、この2つの違いの一つは「細胞でできているかどうか」です。
細菌は細胞からできていますが、ウイルスはDNAやRNAといった核酸を蛋白質の殻が包んだ構造をしていて、細胞ではありません。
細菌は、人の体と同様、細胞でできていますが、細菌や植物には人などの動物細胞にはない「細胞壁」という構造があります。
ペニシリンのような抗生物質は、細菌の細胞にある「細胞壁」を作るのに必要な酵素をブロックすることで、人の細胞には影響を与えることなく細菌の増殖を抑えることができるのです。
一方、そもそも細胞ではないウイルスには、抗生物質は効果がありません。
風邪は原因が一つではない「症候群」。さまざまな合併症も
風邪は正式には「かぜ症候群」と呼ばれ、鼻や喉といった上気道に急性の炎症がおこる病気の総称です。
発熱など全身の症状が見られたり、気管支などの下気道に多少の炎症が及ぶこともありますが、通常は数日で自然に治っていきます。
風邪の80~90%はウイルスが原因といわれますが、そのウイルスも多くの種類があり、一部の細菌やマイコプラズマも原因となります。
また、かぜ症候群には合併症が起こることがあります。
耳の痛みや耳だれが出てきた場合は中耳炎、黄色っぽい鼻水が長く続いたり顔面や頭の痛みがある時は副鼻腔炎、喉の痛みがひどい時は扁桃周囲膿瘍、黄色い痰が出たり咳が強い時は肺炎など、さまざまな合併症が考えられます。
こうした合併症の中には、抗生物質が有効なものもあります。
そのため、医師は風邪症状の患者さんを診察する際には、特定の病原体によるものを区別し、合併症がないか、風邪以外の病気ではないかといった点に、常に気を配って診療を行っています。
その結果、風邪で受診した患者さんに抗生物質を処方することもあれば、抗生物質を処方しない場合もあるのです。
配信: いまトピママ