ケガや病気による入院は、収入の減少に繋がることが多いため、長期間の入院が家計に負担をかけることもあります。
このような状況で借金を考える人々も多く、結果的に収入が回復せずに自己破産に至ることもあるのです。
そこで今回は、入院費用の支払いに困った際の適切な対処法や、債務整理を通じて入院費用の解決を図る際に押さえておくべきポイントをまとめてみました。
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1、入院費負担を軽減させる公的支援
入院の支払いは、患者さんにとって大きな負担です。
特に、大きい手術を伴う入院の場合には、1ヶ月あたりの自己負担額が10万円を超えるケースも珍しくありません。
そのような場合には、医療保険(健康保険)が用意している救済制度を利用することで、入院費の負担をさらに減らすことができます。
(1)高額療養費(医療費)制度
高額療養費制度は、1ヶ月あたりの医療費負担額が基準額を超えた場合に、基準額を超過した部分について、事後に払い戻ししてくれる制度です。
国民健康保険などのいわゆる健保に加入していれば、誰でも利用することができます。
立て替えた医療費の返金は、医療機関への支払いから3ヶ月ほどかかるのが一般的です。
また、複数の医療機関への支払額を合算して処理することもできます。
高額療養費制度による払い戻しの対象となる医療費の金額は、保険者(患者)の年齢・年収ごとに定められています。
また、細かい調整が行われることも少なくないので、下記のウェブサイトや加入している健康保険の窓口などで、最新の情報を取得することが大切です。
【参考】高額療養費制度を利用される皆さまへ(厚生労働省ウェブサイト)
なお、家計がかなり苦しいため、入院費を立て替えることも難しい(返金まで3ヶ月も待てない)という場合には、あらかじめ「限度額適用認定証」の交付を受けておけば、病院へ支払い費用それ自体を減額させることが可能です(※70歳以上の人の場合には、限度額適用認定証の交付は不要です)。
(2) 高度医療費貸付制度
高額療養費制度を利用したときには、医療機関が発行するレセプト(診療報酬明細)の審査を経てからでないと払い戻しができないため、どうしても時間がかかってしまいます。
家計の状況によっては、この期間を待っていたら毎月の支払いに対応できないということもあると思います。
そのような場合には、「高度医療費貸付制度」を利用することで、自己負担分の一部(8~9割)について無利子の貸与を受けることができます。
ただし、この貸付制度は、高額療養費制度による還付が開始されるまでの「つなぎ資金」を貸与するための制度にすぎませんから、還付金を受給したときにはすぐに返済しなければなりません(通常は、返済分を差し引いた金額が還付される対応になります)。
2、毎月の入院費用が支払えなくなった場合の対処方法
入院費は、毎月ごとの支払いとなるのが一般的です。
入院が長期化した場合には、入院による収入減などが原因で、途中で入院費を工面できなくなることもあるかもしれません。
そのような場合には、どのように対応すべきなのでしょうか。
(1)連帯保証人に相談する
入院の際には、入院費用の支払いを担保することなどを目的に連帯保証人を立てなければならないケースが多いといえます。
したがって、入院費用が工面できないときには、連帯保証人となってくれた人に援助をお願いすることが、一番基本的な方法といえます。
連帯保証人をお願いする人は、(別生計の)家族・親類の場合が多いでしょうから、「入院費の支払い」ということであれば、力になってもらえるケースも多いと思います。
家族・親類などからの資金援助であれば、厳格な返済期限や利息の負担などを心配する必要も少ない点でも安心といえます。
(2)病院に相談する
入院の際の連帯保証人は、通常は入院患者と別生計の人を立てる必要があります。
同一生計の家族(たとえば、専業主婦(夫)である患者の配偶者)を連帯保証人にした場合には、入院費用支払いの担保として意味をなさない場合が多いからです。
とはいえ、入院費用の場合の連帯保証人については、金融機関から借金する場合の連帯保証人の場合と違い、厳しい審査が行われるケースは稀といえます。
そもそも病院側には、連帯保証人の収入状況などを詳細・正確に調査できるノウハウ(権限)がない場合の方が多いからです(たとえば、金融機関ではない病院は、信用情報を調査するようなことはできません)。
したがって、連帯保証人に相談をしても、連帯保証人の側にも支払いに応じられるだけの資力がないことも珍しいことではありません。
そのような場合には、「支払いが苦しい事情がある」ということを正直に病院に告げた上で、分納や(退院後収入が回復してからの)後払いの相談をすることも有効な方法です。
病院は、医療費の大半については保険会社から支払いを受けられるのですから、金融機関への借金の支払いの場合に比べれば、分割払いなどに応じてもらえる可能性もかなり高いといえます。
なお、「入院費用が支払えなければ病院を追い出される(診療拒否にあう)」ことを不安に感じる人もいるかもしれませんが、別に解説を加えるように、医療機関は医療費(入院費)の不払いだけを理由に診療を拒否することは禁止されています。
(3)債務整理を利用する
病院への支払いだけが問題であれば、分割払いなどのお願いをすることで、債務整理をせずに入院費用を解決できる場合の方が多いといえます。
とはいえ、入院費用(に加え、生活費やそのほか必要な支払い)のために、金融機関から借金をした場合や、入院費の支払いにクレジットカード(リボ払いなど)を用いた場合には、これらの返済ができなくなってしまうこともあるかもしれません。
特に、大きな病気・ケガが原因でその後の就労にも大きな影響がでた場合には、思うように収入が回復しないということもあるからです。
このような入院のために抱えてしまった借金を返せなくなったときや溜まっている入院費用を支払えなくなったときには、「債務整理」で解決することが有効です。
① 入院の借金の解決は「自己破産」が基本
入院費用が支払えないというケースは、入院(病気・ケガ)による大幅な減収や失職(後、収入が回復しないこと)を原因とする場合が多いといえます。
たとえば、支払うべき入院費用(や他の借金)が100万円を軽く超えてしまったケースでは、「自己破産」によって解決を図ることが基本となるでしょう。
任意整理・個人再生といった他の債務整理の方法では、借金(の一部)を分割で返済できるだけの収入(資力)が必要となるからです。
なお、入院費用が原因の借金を自己破産する場合には、免責不許可などの心配をする必要はありません。
病気・ケガによる失職・減収などが原因で、診療費用などを支払えなくなることは、誰がどう考えてもやむを得ない事情といえるからです。
したがって、入院費用を自己破産すれば、裁判所の決定で免責が与えられることによって、入院費用(や入院のための借金)の支払い(返済)義務が完全に免除されます。
ただし、自己破産によって入院費用を解決する際には、自宅不動産などの高価な資産は、債権者への配当(残額の支払い)に充てるために手放す必要があります。
また、保有財産の状況によっては、自己破産を申し立てても認めてもらえないケースがあることにも注意が必要です。
「保有財産を処分すれば入院費用を支払える」という場合には、自己破産を認められないからです。
② 自己破産できない場合の債務整理
入院費用を自己破産で解決できない(解決すべきではない)場合には、任意整理という方法を選択することが考えられます。
とはいえ、金融機関からの借金がなく「病院への支払い」だけが問題の場合であれば、任意整理をする必要性は高くないといえます。
(弁護士などに依頼をして)債務整理としての任意整理を行わなくても、病院と直接交渉することで分割払いに応じてもらえる場合の方が多いからです。
また、病院の入院費には利息も発生しないので、任意整理による減額の効果もありません。
配信: LEGAL MALL