5、日本における夫婦別姓の民法改正で問題となる点
「1、(2)夫婦別姓とは」で解説したように、夫婦別姓には「選択的夫婦別姓」と「例外的夫婦別姓」があります。
今現在、法務省では、民法改正にあたって「選択的夫婦別姓制度」と「例外的夫婦別姓制度」の2つで検討されています。
どちらの制度が採択されたとしても、姓以外の点で問題となるのは次の点です。
子どもの姓をどうするか
夫婦別姓制度開始前の同姓夫婦は別姓に変更できるか
また、夫婦別姓を求める声が多く、夫婦別姓の審議も多数行われてきているのに、なぜ民法改正が進まないのでしょうか。
本章では、日本における夫婦別姓の民法改正で問題となる点について、より詳細に解説します。
(1)子どもの姓をどうするか
夫婦別姓が認められた場合、大きな問題となるのは「子どもの氏をどうするか」です。
さまざまな考え方がありますが、今のところ、婚姻の際にあらかじめ子どもが名乗る氏を決めておくという考え方が採用される可能性が有力となっています。
この場合、複数の子どもがいるときには、子ども全員が同じ氏を名乗らなければならないため、注意が必要です。
(2)夫婦別姓制度開始前に婚姻している夫婦はどうなる?
別姓制度導入前に結婚した夫婦は、一定期間内に戸籍法の定める手続きに従って届けるなど要件を満たせば、別姓にできるという方法が有力となっています。
以上の方法は、「3、(2)1996年2月:法務省法制審議会」で解説した1996年の法制審議会の答申において提示された案の内容です。
(3)民法改正が進まない理由
夫婦別姓実現への民法改正が進まない理由として、第一に「家族の一体感がなくなる」と考える人が多いようです。
しかし、一体感とはあくまで心情的なものであり、姓が同じだからといって必ずしも家族が一体になるわけではありません。
外国人夫婦には戸籍を認めずに、日本人夫婦のみに同姓を強要しているという矛盾点もあります。
国際結婚が増えつつある近年では、法の不備が指摘され、民法改正が今後さらに注目されていくのではないでしょうか。
6、別姓夫婦の実録!旧姓を通称にしているご夫婦の例
実際に、旧姓を通称として使用しながら夫婦別姓として生活しているご夫婦のケースを紹介します。
紹介するのは、月間120万PVを誇るプロブロガーの「ヨスさん」です。
ヨスさん夫妻は、別姓を選択しています。夫婦別姓に関する電子書籍も販売しているヨスさん。
戸籍上では、ヨスさんは奥さんの戸籍に入っているため、奥さんの苗字です。
しかし、必要な場合以外ではすべて旧姓を通称として生活しているとのことです。
夫婦別姓を考えている人は、実際の「別姓夫婦」のリアルな声を参考にできるでしょう。
(1)夫婦別姓を選択した理由は?
ヨスさん夫妻は、なぜ夫婦別姓を選択したのでしょうか。
ヨスさんの考える理由は、次の2つです。
子どもに対する男女平等教育のため
夫婦同姓制度に違和感があるため
①子どもに対する男女平等教育のため
ヨスさんは、子どもに「自分の性別だけを理由にして、自分のやりたいことをやめてしまったりしてほしくない」という気持ちを持ってほしくないと考えているそうです。
夫婦同姓では、女性の姓に合わせることも可能であるのに、女性が姓を変更する割合が96%という点は、男女平等に反するとも考えられます。
夫婦の姓を別々にすることで、子どもに対して「男女平等」の手本を示せると考えているとのことです。
②夫婦同姓制度に違和感があるため
ヨスさん夫妻は、夫婦の姓を自動的に同一化させたがる社会の圧力に抵抗感を感じているため、夫婦別姓を選択しているとのことです。
現行民法によって、無理やり変えさせられた戸籍上の姓に違和感を覚えている人は、ヨスさん夫妻だけではないでしょう。
(2)困ったこと
ご自身の信念を持って夫婦別姓を選択したことに満足しているヨスさんですが、困ったこともあるそうです。
「婿養子?」などの質問への対応が面倒
戸籍上の姓を使わなければならない場面が多い
①「婿養子?」などの質問への対応が面倒
ヨスさんの戸籍上の姓は奥さんの姓であるため、「婿養子?」と周りの人に聞かれることが多いそうです。
このような質問を毎回否定し、夫婦別姓を選択していることを説明するのは、なかなか面倒とおっしゃっています。
②戸籍上の姓を使わなければならない場面が多い
職場や親族、友人の間では通称を使用できます。
一方、銀行口座開設やスマホの契約、パスポートの申請など、戸籍上の姓を使わなければならない機会は意外と多く、そのたびに苦労しているというヨスさん。
通称との使い分けが大変と感じることもあるようです。
(3)家族の一体感について思うこと
ヨスさんは、夫婦別姓を選択することによって家族がバラバラになることは絶対にないと断言しています。
ヨスさんが子どもの頃、一緒に暮らす家族のなかで1人だけ名字が違うおばあさんと暮らしていたことが背景にあるようです。
世界のほとんどの国が夫婦別姓を認めていることからも、家族の一体感については姓の選択はほとんど関係ないといえるでしょう。
引用 ヨッセンス
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