幼稚なイメージはもう古い?「オノマトペ」で子どもとのコミュニケーションを“グッと”豊かに!体感イベントも開催中

オノマトペは効率が良い言葉

「オノマトペは一言で端的に物事を表せる効率の良さがあります」と話すのは、認知・心理言語学を専門とする秋田喜美先生。

「例えば子どもに『ぴょんしよう』と言っただけで、どんなふうに飛ぶのかイメージを共有することができます。でも『ぴょん』というオノマトペを使わなかったら、『足をそろえてカエルみたいに大きく飛ぶ』なんて長い説明になってしまいますよね。『ぴょん』なら体の動きに合わせて言うこともできる。『ぴょん』に『する』をつけることで動詞になるわけですが、実は一般的に動詞は名詞に比べて習得が難しい言葉なんですよ」。

確かに子育てにおいて小さな子どもに何かの動作をしてほしい時、「ポイ」や「もぐもぐ」などのオノマトペに、「する」と組み合わせて伝えることが多いもの。

「飛行機も『とぶ』だし、カエルも鳥も『とぶ』ですよね。動作として考えてみると、助走やとぶ距離、体の動きなどいろいろな要素が含まれます。それをぴょーんって言いながら体の動きを見せるだけで、大人がイメージするさまざまな動作を一言で共有できるようになるわけです」。

オノマトペは何に役立つ?

子どもの思考力を育てつつ、言語習得できる

大人は状況に応じて言葉を自然に使い分けますが、例えば「捨てる」という言葉も、「処分する」「投げ捨てる」などさまざまな意味合いがあり、語彙の少ない子どもには抽象的に感じて難しく感じるのだそう。それを「ゴミをポイして」と言い換えることで動作が具体的になり、子どもは行動と言葉を結びつけやすくなることがわかっています。

また知っている言葉がほとんどない小さな子どもでも「わんわん」と聞けば、犬が吠える音と言葉を頭の中で結び付けて、言葉と犬とのつながりを理解しやすくなります。言葉とその意味を結びつけやすいオノマトペは、その音から意味を想像することで、言葉の習得はもちろん、思考力を育むことにも役立つのだそう。

「オノマトペはカラダに根差し、感覚に強く結びついている言葉なんですね。そう言った感覚を語彙の少ない子どもが大人に伝えるのは、本来非常に難しいことですが、オノマトペを使えば、かなり具体的で複雑な情報を伝えることができるのが魅力ですよね」。


物を触ったり、嗅いだり、五感を使ってオノマトペを表現してみよう

文字でもニュアンスを伝えられる

「言い方の工夫で微妙なニュアンスを調整できるように、オノマトペは文字を工夫することでもニュアンスを伝えることができます」と秋田先生。

「もこもこ、ふにゃふにゃ、にょろりなど、いずれも柔らかい感じがしますよね。これはひらがなの方が合うし、カチカチやクッキリ、パキン、シャーとかは硬いイメージなのでカタカナが合う。さらにその書体をイメージに近付けて描けば、子どもに文字でニュアンスを表現できることを教えるのにも役立つだろうなと思います」。


オノマトペは文字でニュアンスを表現できる

オノマトペが医療現場で活躍!?

直感的で頼りないイメージから、医療現場で使われるのは避けられることもあるオノマトペですが、最近はその実用性が見直されつつあるそう。秋田先生は今、言語研究からの社会貢献を目指して、医療現場におけるオノマトペについて調べているそう。

「オノマトペを感覚的に使い分ける時、その個人差はきちんと調査されていません。オノマトペは微妙な感覚や感情まで表現できますから、その表現に個人差が小さく、正確性が高い部分があるのなら活用しない手はないですよね」。

「キリキリ」と「シクシク」の痛みの違いや、「チクッ」と「チクーーーーーーッ!」のように感情を込めたニュアンスの区別までオノマトペを使えば可能。「通常の言葉では伝えきれない辛い感覚も、医療の現場で伝えられる可能性がオノマトペにはある」と秋田先生は話します。

日常生活の中でも、小さい子どもの不調を把握するのは難しいもの。普段から子どもとオノマトペで感触などを共有する経験を重ねておくことで、いざという時の違和感や症状を共有しやすくなることも考えられます。


体に違和感があるとき、体調が悪いときにも、オノマトペを使えば、症状を上手に伝えやすくなります

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