5、内縁の夫が死亡したときのために考えておくべきこと
内縁関係では、パートナーが死亡した場合にもさまざまなトラブルが起こり得ます。
内縁の夫が死亡したときのために、次のことについて考えておきましょう。
(1)喪主を誰が務めるか
内縁の夫が死亡すれば、葬儀の主催者となる「喪主」を誰が務めるのか決めなければなりません。
喪主は遺族の代表者になるため、一般的には配偶者や子供がなることが多いです。
ただ、法律で喪主について決められているわけではないため、内縁関係の妻が喪主を務めることも可能です。
内縁の夫側の親族とのトラブルを避けるためには、喪主の指定を記載した遺言書を生前に作成してもらっておくことをおすすめします。
(2)葬儀費用を誰が負担するか
内縁の夫が死亡すれば、葬儀費用の負担についてもトラブルになってしまうケースがあります。
葬儀費用の負担についても喪主と同様に法律で定められているわけではありませんが、喪主が費用を負担することが一般的です。そのため、あなたが喪主を務める場合であれば、内縁の夫側の親族に葬儀費用の分担を求めることが難しくなる可能性があります。
一方で、内縁の夫の親族側が喪主を務めた場合、葬儀費用の分担を求められても請求に応じる義務は法律上ありません。
(3)遺産相続をどうするか
内縁関係は法律婚と同様の法的保護を受けられる部分もありますが、遺産相続においては法律婚と扱いが異なります。
法律婚の場合、妻(夫)が法定相続人になります。しかし、内縁関係の場合は法律上の夫婦ではないため、パートナーに相続権がありません。そのため、内縁の夫の死亡時に遺産を取得するには、生前に遺言書を作成してもらう必要があります。もしくは、生前贈与を受けることもできます。
なお、遺言書や生前贈与がなかった場合でも、内縁の夫と一緒に暮らしてきた自宅については、一定の居住権が得られる可能性があります。
内縁関係の相続についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
6、内縁の夫が浮気をしたら慰謝料を請求できる?
法律婚では夫が浮気をすれば、妻は夫や浮気相手に対して慰謝料を請求できます。
それでは、内縁関係の場合、浮気の慰謝料請求は認められるのでしょうか?
(1)不貞行為に該当すれば請求できる
浮気の基準についての考え方には個人差がありますが、法律婚において慰謝料請求の対象になる浮気とは「不貞行為」のことを指します。
夫婦には貞操義務があり、配偶者以外の人と性交渉することが禁じられています。つまり、不貞行為とは配偶者以外と肉体関係を持つことです。
そして、内縁関係の場合も法律婚と同様に貞操義務があると考えられるため、不貞行為に該当するようなことがあれば慰謝料を請求することができます。
(2)慰謝料を請求するには証拠が重要
内縁関係でも不貞行為があれば慰謝料を請求することができますが、慰謝料を請求するには証拠が必要です。
証拠がなければ、夫や浮気相手が不貞を否定したときに話し合いを進めることができませんし、裁判をしても事実を証明できません。不貞があったことを立証できるような証拠を集めてから慰謝料を請求しましょう。
慰謝料請求に有効な証拠には、次のようなものが挙げられます。
ホテルに出入りしている動画や写真
性行為の動画や写真
肉体関係があることの分かるようなメッセージ内容
浮気を認める音声
ホテルの宿泊や旅行に行ったことが分かるレシートやクレジット明細
不貞があったことを明確にできる決定的な証拠がない場合でも、複数の証拠を組み合わせれば不貞を立証できるケースもあります。そのため、小さな証拠でもできるだけ多く集めることが大切です。
(3)浮気による慰謝料の相場
内縁関係で浮気の慰謝料を請求する場合、慰謝料の金額を決めて請求しなければなりません。
慰謝料の金額は法律で定められているわけではないため、原則的に慰謝料は請求者の言い値で請求することができます。
ただし、慰謝料の金額には相場があるため、法外な金額を請求しても通常は認められません。浮気の慰謝料の相場は数十万円~300万円程度と言われており、内縁関係だからといって法律婚と金額に違いがあるわけではありません。
内縁関係における慰謝料請求に関する詳細については、こちらの記事を参考にしてください。
配信: LEGAL MALL