5、離婚後に子供の親権を獲得するために
先ほども述べたとおり、親である以上は子供の親権を確保したいと考えるものです。
したがって、親権を獲得するにはどのようなことが必要なのかは、離婚する親にとって最も気になるところだと思います。
(1)親権決定の視点
まず、いずれかの親に親権を与えるかは、あくまで子供の立場から決まることだということを再認識する必要があります。
子供の成長のために必要な精神的・経済的援助を行うのが親権者の仕事ですから、いずれの親がこの援助をよりよく行うことができるのかという視点から親権者は決定されるべきものです。
家庭裁判所でも、このような「子供の福祉」という視点から親権者の判断が行われています。
(2)親権獲得に必要な要素
具体的には、以下に掲げる要素がご自身にあればあるほど、「子供の福祉」の視点から親権を獲得しやすくなります。
①子供との接触
何より、子供との関係がよくなければ親権の獲得など問題外です。
普段から子育てを配偶者に任せっきりで子供のことを気にかけていないというのでは、親権を得ることはできません。
仕事を持っている場合にも、普段から子供と接する時間を持ち、子供との信頼関係を築いておくことが親権獲得の前提条件といえるでしょう。
子供が15歳以上の場合には、親権者を決めるに当たって裁判所は子供の意見を聞かなければならないことになっていますので、なおさら子供との普段からの関係が重要になります。
②相手方の問題点の指摘
相手方の配偶者に、これまで子供の養育に関する態度や方法に問題があった場合、例えば虐待・遺棄や放置などの事実があった場合には、そのことを積極的に主張・立証する必要があります。
したがって、相手方に子供の養育に関する問題を感じた場合には、そのことについての証拠を確保しておくと役に立つでしょう。
③離婚原因など離婚自体にかかわる事情
離婚の原因がいずれかにあり、その内容がどのようなものかも、親権者の決定に影響します。
例えば、離婚原因が夫の暴力に合った場合には、暴力をふるう夫に親権者としての資質があるかは疑問だということになるでしょう。
したがって、離婚原因など親権とは直接関係がないと思われる離婚自体の事情についても、十分主張・立証をしておくべきです。
④母親側の優位性
現在の家庭裁判所の実務では、親権を獲得するにはやはり母親側が有利であることは否めない現実でしょう。
法律的には親権者として母親が優先するということの根拠は何もありませんが、家庭裁判所は、特に子供の年令が低ければ低いほどその成長には母性が必要だとの考えを持っていることが多いようです。
したがって、父親側がこの家庭裁判所の考えを覆すには、自分の方が親権者にふさわしい個別的な事情を綿密に主張していく必要があります。
親権について、さらに詳しく知りたい方は「離婚調停で親権を獲得するための7つのポイントを弁護士が解説」をご参照ください。
6、離婚後の子供の養育費の計算方法
親権者にとって、子供の養育費の問題は大変深刻な問題です。
親権者は子供を適切に育成する義務を負っている一方で、子育てには一定の費用がかかるのが現実ですから、養育費はなるべく十分に確保したいものです。
逆に、養育費を支払う側からすると、なるべく自分の生活を圧迫しない金額に抑えたいと考えるでしょうから、養育費を幾らにするかは争いになりやすい点です。
この点、家庭裁判所は一定の基準に基づいて養育費を算定しています。
両親それぞれの収入と子供の年令・人数を当てはめると、養育費の概算が算定できる一覧表が利用されていますので、養育費を幾らにするかを考える場合にはこれを参考にして検討するとよいでしょう。
なお、この基準はあくまで一般的なものですし、法的な強制力があるものでもありませんので、特別な事情がある場合にはそれを主張して基準とは異なる養育費を主張することも可能です。
基準にとらわれ過ぎないよう注意しましょう。
養育費について、さらに詳しく知りたい方は「養育費を正しく計算するためのポイント【養育費計算ツールあり】」をご参照ください。
配信: LEGAL MALL