7、離婚後の子供との面会交流
現在の家庭裁判所の実務では、親権を獲得できなかった親が、子供と定期的に面会する権利を有することは当然のこととして運用されています。
もちろん、事情によっては子供との面会を認めることが子供の福祉に反することも考えられますので、絶対的な権利とは言えませんが、例外的な事情がない限りは親と子供の面会交流は認められるのが一般です。
ただ、例えば毎月第1日曜日の午前10時から午後5時までの間の面会交流を認めるなど、明確に日時を決めておくことは、親側も子供側も支障がある場合があります。
したがって、面会の頻度や時間を決める場合には、ある程度融通が利くよう、原則として月1回第1日曜日の午前10時から午後5時とするが、具体的には両親がその都度連絡を取り合って調整するという程度に決めておくのが無難です。
もっとも、親権者が子供との面会交流を阻害する可能性が高い場合には日時や一回の面会時間、場所等を細かく設定しておいた方がいい場合もあります。
したがって、どのような内容にすべきかを決めるまえには弁護士に相談するべきでしょう。
面会交流について、さらに詳しく知りたい方は「面会交流調停とは?親が知っておきたい11のことを解説」をご参照ください。
8、ひとり親家庭に対する支援制度
離婚が成立して、単独の親が子供を育てていくことになった場合、国や自治体が様々な支援制度を設けています。
国の制度としては児童扶養手当があり、自治体の制度としては子供の医療費支給、住宅手当、保育料や交通費の減額制度などがあります。
ひとり親支援制度の内容は自治体によって異なりますので、役所に問い合わせて確認しましょう。
9、その他、子供がいる離婚で注意すべきこと
子供がいる離婚で、他にも注意すべきことがいくつかあります。ここでまとめて解説します。
(1)子供の連れ去りについて
離婚しても子供とどうしても離れたくないという理由で、子供を連れ去ってしまう人がときどきいます。
しかし、実の親子であっても、配偶者に無断で子どもを連れ去ることは「未成年者拐取罪」(刑法第224条)に該当する犯罪行為なので、決して行ってはいけません。
ただ、相手方に子供を連れ去られた場合、その状態を長期間放置していると、「継続性の原則」により親権争いで不利になってしまうのが実情です。
もし子供を連れ去られた場合は、早急に適法な手段で子供を取り戻しましょう。
具体的には、家庭裁判所へ「子の引き渡しの審判」と「審判前の保全処分」を申し立てます。家庭裁判所が子の引き渡しを認めれば、子供を取り戻すことができます。
(2)相続について
夫婦は離婚すると親族関係が消滅するため、その後に相手が亡くなっても相続することはありません。
しかし、子供との親子関係は一生続きますので、離婚後に亡くなった相手を相続することになります。
たとえ親権者が再婚して、再婚相手と子供が養子縁組をしたとしても、実の親と子供との相続関係は続きます。
注意が必要なのは、元配偶者が離婚後に借金を抱えて亡くなった場合、子供が知らないうちに借金を相続してしまう可能性があることです。
このような場合、相続したことを知ってから3ヶ月以内であれば相続放棄ができますので、すぐに弁護士に相談するようにしましょう。
(3)子供のケア
前記「2」でもお伝えしたように、子供はいくつになっても両親が離婚することで精神的なダメージを受けてしまいます。
そのため、離婚前や離婚後に子供のケアに努めることはとても大切です。
まず、両親が離婚することについて子供は何も悪くないことを伝えて、罪悪感を持たないようにしてあげましょう。
また、子供から「どうしてお父さん(お母さん)がいないの?」と聞かれたときに、嘘をつくのは避けた方がよいです。
「死んでしまった」などと嘘をつくと、子供が真実を知ったときに余計に傷ついてしまうからです。
たとえ小さな子供に対しても、端的に事実を伝えるようにしましょう。
さらに、別れた相手の悪口を子供に言うのも避けましょう。
たとえ、あなたにとって酷い配偶者だったとしても、子供にとってはたった1人のお父さん(お母さん)です。
その父親(母親)を否定されると、子供は自分を否定された気持ちになり、精神的な成長に支障をきたすおそれがあります。
両親が離れて暮らしていても、2人とも子供に対して深い愛情を持っていることを伝えて安心させてあげることが大切です。
子供を持つ親の離婚に関するQ&A
Q1.子供に寂しい思いをさせてまで離婚すべきではない?
子育ては両親がそろった状態で行う方が望ましいことは、いうまでもありません。
しかし、子供への影響を心配するあまり、離婚を先延ばしにすることが得策とも限りません。
大変難しいことですが、子供に与える影響や夫婦それぞれの精神的状態などの状況をよく考えた上で、ケースによっては離婚を決断すべきということになります。
Q2.子供が何歳になると離婚しても差し支えないのか?
この点については、さまざまな考え方がありますので、一概にいうことはできません。一般的には、子供が高校を卒業する頃までは、やはり両親の離婚は精神的に大きなダメージとなるといえるでしょう。
しかし、そうは言っていられない事情もあるでしょうから、結論としては、子供が何歳であろうと離婚すべきケースでは離婚すべき、というしかありません。その代わり、子供の心を第一に考えて、親としてできる限りの愛情を注いでいくべきということになります。
Q3.子供のケアはどうすればよいの?
まず、両親が離婚することについて子供は何も悪くないことを伝えて、罪悪感を持たないようにしてあげましょう。
また、子供から「どうしてお父さん(お母さん)がいないの?」と聞かれたときに、嘘をつくのは避けた方がよいです。「死んでしまった」などと嘘をつくと、子供が真実を知ったときに余計に傷ついてしまうからです。
さらに、別れた相手の悪口を子供に言うのも避けましょう。
両親が離れて暮らしていても、2人とも子供に対して深い愛情を持っていることを伝えて安心させてあげることが大切です。
まとめ
子供がいる状態で離婚に踏み切るのは勇気のいることです。特に専業主婦など収入に不安がある場合には、離婚後の子供との生活を考えると大変不安なことです。
ただ、最近は母子家庭や父子家庭への行政の支援も充実しつつありますし、何より家庭内が不安定な状態での育児は親にとっても子供にとっても悪影響が生じるおそれもあります。
離婚を考えるときには、親も子も幸せになれる道を選択することが大切です。
子供や自分への影響をよく検討し、また弁護士などの専門家にも相談した上で、離婚をするかどうかを慎重に決断して対応しましょう。
監修者:萩原 達也弁護士
ベリーベスト法律事務所、代表弁護士の萩原 達也です。
国内最大級の拠点数を誇り、クオリティーの高いリーガルサービスを、日本全国津々浦々にて提供することをモットーにしています。
また、所属する中国、アメリカをはじめとする海外の弁護士資格保有者や、世界各国の有力な専門家とのネットワークを生かしてボーダレスに問題解決を行うことができることも当事務所の大きな特徴です。
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