「大腸がんの手術内容」はご存知ですか?術後の合併症や入院期間も医師が解説!

「大腸がんの手術内容」はご存知ですか?術後の合併症や入院期間も医師が解説!

大腸がん手術後の合併症

大腸がんの手術は、時に合併症を引き起こすことがあります。ここでは大腸がんの手術の主な合併症を解説します。大腸がん手術の主な合併症について理解を深めましょう。

出血・血便

手術中に出血をすることがあります。ほとんどの場合は輸血を要するような大量出血を招くことはありません。手術後、まれに手術のつなぎ目の部分から出血をすることがあり、腸の内側からの出血であれば、血便が出る場合があります。通常、経過観察で症状が消失することが多い症状なので、過度な心配は不要です。

排便異常・麻痺性イレウス

手術や全身麻酔の影響で、腸の動きが通常通りにならないために、下痢や便秘などの排便異常が起こることがあります。さらに消化管運動が障害され、腸管が拡張することで腹痛やお腹のはり、吐き気がでてしまう状態を麻痺性イレウスといいます。排便異常の治療には原因に応じて内服の調整や歩行などの運動も効果的です。麻痺性イレウスの場合は消化管の安静のため、食事摂取を中止し、点滴や内服などで症状が改善するのを待ちます。

手術創部の感染

手術部位の感染が創部に起こると、創部の痛みや発赤、腫れなどが起こります。手術創部の感染は一般的には重症な状態にはなりにくく、適切に洗浄などで創部の清潔を保つことで改善します。

縫合不全

手術後、最も重症になりやすい合併症に縫合不全があります。縫合不全とは様々な理由で手術をした大腸のつなぎ目がうまくくっつかずに、便がお腹の中にばらまかれてしまう状態です。便には大腸菌などの多くの細菌が存在するため、縫合不全を起こした場合には激しい発熱や腹痛などの症状が出現します。大腸がんの手術で縫合不全が起こってしまった場合は、再手術や人工肛門を造設する手術が必要になる場合があります。

廃用症候群

廃用症候群とは、手術前後で体を動かせない状態が続くことで生じる症状の総称です。具体的には筋力の低下や関節の拘縮(こうしゅく)、心肺機能低下などを指します。手術後の安静の期間が終われば積極的に歩行練習などを行い、早期の日常生活の復帰を目指しましょう。

大腸がんのステージ別・治療法

大腸の壁の層構造は内側から、粘膜層、粘膜下層、粘膜固有層、漿膜下層、漿膜、外膜の5層構造をしています。大腸がんは粘膜層にでき、徐々に外側に成長する性質があります。大腸がんはがんの深さを示す深達度やリンパ節転移や遠隔転移の有無によって、ステージが決まります。決まったステージと患者さんの健康状態を考慮して治療法を選択します。

大腸がん・ステージ0とステージ1(T1a)の治療法

ステージ0とは大腸がんが粘膜内にとどまるものです(Tis)。ステージ1(T1a)とは大腸がんが固有筋層までにとどまるステージ1のうち、がんが粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が1mm未満のものです。ステージ0とステージ1の一部(T1a)の治療では、内視鏡的治療を行います。治療を担当するのは内視鏡治療の専門病院の消化器内科医が行います。入院期間は短期であるケースが多いです。手術後も定期的な内視鏡検査が勧められます。

大腸がん・ステージ1(T1b)とステージ2の治療法

ステージ1(T1b)とはがんが固有筋層までにとどまるステージ1のうち、がんが粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が1mm以上のものです。ステージ2とはがんが固有筋層を超えて浸潤するもののうち、リンパ節転移がないものです。
大腸がんステージ1(T1b)とステージ2では、がんを含む腸管と、転移の可能性があるリンパ節を、外科手術で同時に切除します。開腹手術や腹腔鏡下手術、ロボット手術が選択されるケースが多いです。麻酔科やICUなど体制が整った大きな病院の消化器外科医が手術を担当します。手術後は定期的な通院による経過観察を行います。

大腸がん・ステージ3の治療法

ステージ3とは、がんの深達度は問わず、リンパ節転移があるものです。大腸がんステージ3の場合も、がんを含む腸管と、転移の可能性があるリンパ節を、外科手術で同時に切除します。担当の消化器外科医が開腹・腹腔鏡下・ロボット手術のいずれかを選択します。手術後は補助化学療法といって、再発を防ぐための抗がん剤治療を行います。抗がん剤治療のため定期的な通院が必要です。

大腸がん・ステージ4の治療法

大腸がんステージ4は、他臓器に転移があるものです。転移した病変が切除可能であれば、転移病変と原発病変の根治手術を行います。転移した病変が切除不能であれば、抗がん剤治療を行います。手術は消化器外科医が行いますが、はじめから抗がん剤治療が選択される場合は腫瘍内科医が抗がん剤治療に当たることも多いです。抗がん剤治療のため定期的な通院が必要です。

関連記事: