従業員の守秘義務の内容・具体例・漏えい時のペナルティを徹底解説

従業員の守秘義務の内容・具体例・漏えい時のペナルティを徹底解説

3、サラリーマンの守秘義務違反の具体例

 

ここでは、上記3つの守秘義務が問題になる典型的な具体例を紹介します。

(1)インサイダー情報の漏えい

「大もうけできる情報があるんだって?」

「我がA社と米国B社の大型合併情報はまだ誰も知らない。今のうちに我が社の株をたくさん購入しておけば大もうけできるぞ」

「ありがてぇ!」

このように、ある企業が社外に公表していない情報を知った内部の人間が、社外の人間に対してインサイダー取引によって利益になるような情報を漏えいする行為がインサイダー情報の漏えいの典型例です。

インサイダー情報の漏えいは、金融商品取引法違反となり、処罰の対象となる可能性があります。

インサイダー取引はもちろんですが、インサイダー情報を漏えいするだけでも犯罪が成立する場合があるのです。

(2)営業秘密の漏えい

「来年のうちの新商品に使われている最先端技術なんだけど、よければ情報提供するから買わない?」

「うちの商品に使えば売れるだろうし買わせてもらうよ!」

このように、会社が独自に開発した技術の情報等まだ世に知られていない価値のある情報などを、内部の人間が社外の第三者に渡してしまう行為が、営業秘密の漏えいの典型例です。

他にも、他社の許可を得て管理している他社の秘密情報等を無関係の第三者に漏えいするような行為も、同様に営業秘密の漏えいになります。

(3)個人情報の漏えい

「10年間経営してきた通販サイトをたたむことになった」

「じゃあ、今まで集めてきた顧客情報、こっちに安く売ってくれよ!」

このように、企業が収集し、管理してきた個人情報を社外に漏らしてしまう行為が、個人情報の漏えいの典型例です。

個人情報の漏えいは、個人情報保護法違反となり、罰則には懲役刑も定められています。

4、具体的な義務は「規則」を確認

 

「自分には、どのような守秘義務が課されていて、どんな行為をすると守秘義務違反となるのか?」

そんな疑問を抱いたときは、まず会社の就業規則を確認しましょう。

(1)就業規則だけじゃない!社内規則のいろいろ

就業規則には、雇用契約の内容として、労働者に課されるさまざまな義務が明記されています。

特に、重要な情報を取り扱う企業だと、労働者の守秘義務を就業規則に明記し、注意を喚起している場合があります。

ただし、会社の規則は就業規則だけではありません。

たとえば、「個人情報の取り扱いに関する規則」を別途設けて、会社が保有する個人情報の取り扱いについて、労働者に対し特別の注意喚起を促す例もあります。

特に病院や福祉施設のように、重要な個人情報が大量に集まる企業では、このような規則が定められていることが多いです。

病院や福祉施設で働いている人は、医師や看護師、薬剤師、介護福祉士といった専門職だけでなく、清掃スタッフや調理スタッフなどにもこの規則が適用されますので、注意が必要です。

その他にも、企業が個別に「業務ルール」を定めている場合があります。

そのような内部のルールは、就業規則のように、法律で労働者に対する提示義務が課されていませんので、労働者がその内部ルールの存在に気づかないこともあります。

労働者の守秘義務に関心を持った方は、職場の先輩や上司に内部ルールの有無を確認し、内部ルールがある場合は、内容をチェックして、守秘義務違反に該当する事柄を把握しておきましょう。

(2)秘密保持契約書(誓約書)がある時は内容を十分に確認しておく

特に機密性の高い情報を扱う企業の場合、個々の労働者との間で秘密保持契約を結ぶことがあります。

秘密保持契約書(誓約書)には、「秘密が漏えいした場合には、○○円の賠償金を支払う」というように、支払うべき賠償額をあらかじめ明示しているケースがあります。

これは、会社と労働者の間で守秘義務違反を理由とする紛争になったときに、会社側が本来負担すべき損害額の立証を不要にするためです。

賠償額を明記した誓約書を交わしておけば、秘密が漏えいしたという事実を立証するだけで、所定の賠償金を請求できる可能性があるわけです。

これを労働者の側からみると、実際に損害が発生したか否かにかかわらず、秘密保持契約書どおりの賠償金を支払わなければなりませんので、非常に重いペナルティとなります。

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