5、守秘義務違反をしてしまったらどうなるか
ここまで3つの情報漏えいパターンについて説明してきましたが、これらの情報を漏えいし、守秘義務違反と認定された場合、どのようなペナルティが待っているのでしょうか?
(1)「インサイダー情報の漏えい」のペナルティ
会社の内部にいる者が、重要なインサイダー情報を外部に漏えいすると、金融商品取引法167条の2に定める「情報伝達行為」として処罰されます(5年以下の懲役、500万円以下の罰金、金融商品取引法197条の2第1項14号)。
ただし、この情報伝達行為が処罰されるには、漏えい行為以外に、次の3つの要件を満たすことが必要です。
上場会社およびその関係会社のインサイダー情報であること
「他人に対し、利益を得させたり損失を回避させたりする目的」があったこと
他人に対し、インサイダー情報を伝達し、または売買等をすることを勧めること
つまり、従業員が単にインサイダー情報を外部に漏らしただけでは、処罰されないのです。
なお、処罰対象となる者は役員だけではなく、平社員やアルバイトなども含まれるので、注意が必要です。
(2)「営業秘密の漏えい」のペナルティ
営業秘密の漏えいをすると、不正競争防止法違反として、10年以下の懲役、2000万円以下の罰金が科される可能性があります(不正競争防止法21条1項)。
また、懲戒解雇や損害賠償責任といった重いペナルティを受ける可能性があります。
(3)「個人情報の漏えい」のペナルティ
個人情報の漏えいをすると、個人情報保護法違反として、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります(個人情報保護法83条)。
また個人情報の漏えいが公になったことで、会社にマイナスの風評をもたらし、営業上の損害を与えた場合には、不法行為による損害賠償責任を負うこともあります。
個人情報の漏えいは、時に数千人数万人単位の膨大な情報流出を伴うことがあります。
そのような場合、とても個人では負担できないほどの賠償金を負担しなければならなくなるおそれもあります。
過去には、TBC顧客情報流出事件のように、氏名・住所のほか、スリーサイズや施術コース名など、女性にとってデリケートな情報が漏えいされたため、被害者1人につき3万5000円の損害賠償額が認定された例もあります。
6、守秘義務違反でお困りの際は弁護士へ相談を
もし守秘義務違反をしてしまった結果、会社に損害を与えてしまったりすると、懲戒解雇や刑事告訴といった重いペナルティを受ける可能性があります。
違反行為をしたことはもちろんよくありません。
しかし、違反行為がわざと(故意)か、それともうっかり(過失)かなど、言い分もあるのではないでしょうか。
そのような言い分を会社相手に主張し、認めてもらうのは非常に困難です。
法律の専門家である弁護士に相談し、会社と対等な立場に立った上で、問題解決を目指しましょう。
配信: LEGAL MALL