3、私道の通行トラブルでよくある事例と解決方法
実際に「私道を通行させてもらえないトラブル」が起きた時は、権利や賃借の状況がどうであれ、その道路の所有者と一度話し合ってみる他ありません。
話し合いでは、通行に関して法的権利を主張したり、あるいは新たに契約を結んだり、あまりにもめるようなら調停・裁判で解決を図るといった対応をします。
ここで具体例を3つ挙げ、何を話し合うべきか確認してみましょう。
(1) 袋地を取得したケース
他の土地に囲まれた「袋地」の取得でトラブルが発生した場合には、民法に基づき囲繞地通行権を主張します。
ただし先ほどもご説明したように、必要最低限の道幅を伝えつつ、私道所有者側に損害が出るようなら相当額の償金を提示しなければなりません。
他には、やはり権利金の有無や金額を提示して、通行地役権などの設定について交渉することも考えられます。
(2)今まで通路として利用されてきた私道の通行を拒否されたケース
土地譲渡や使用方法変更のタイミングで私道通行を拒まれたケースでは、これまでの利用状況から「黙示の通行地役権」もしくは「通行地役権の時効取得」を主張できる可能性があります。
(ア)黙示の通行地役権とは
通行地役権は、契約書や登記がなくても「黙示的」に成立するとされています。
注意したいのは、私道所有者の黙認だけでは足りず「客観的に見ても合理的であると考えられるような特別な事情が必要」(東京高裁昭和49年1月23日判決)も必要である点です。
ここにいう特別な事情は、これまでの使用状況、地役権の必要性、土地購入時に通路として説明を受け、そのように認識していたか等から判断されます。
(イ)通行地役権の時効取得について
舗装等によって外形上認識できる通路であり、かつ相当長期間に渡って(継続的に)通行が黙認されてきた私道については、通行地役権の時効取得を主張できます(民法第283条)。
ここでいう期間は、私有地であるとは認識しようがない「善意無過失」の状態であれば10年、そうでなければ20年とされています(民法第162条)。
(3)みなし道路の通行を拒否されたケース
セットバックによって他人の敷地を通行せざるを得ず、これを拒否されたケースでは、通行の自由権を主張して話し合うことになります。
注意したいのは、最初にみなし道路(二項道路)であるかどうかを役所で確認しておく必要がある点です。
加えて、通行したい側・通行させる側の意見を取りまとめる際にも、具体的に「夜間は迷惑にならないよう自動車のエンジンを切る」等と細かい条件を取り決めることが重要となってくるでしょう。
4、私道の通行トラブルを解決する方法
私道の通行トラブルは民事の領域の問題であるため、警察は介入できません。
あくまでも近隣トラブルとして、裁判所で決着をつけることも視野に入れて、当事者間で話し合っていくことが基本となります。
私道通行権を巡るトラブルの解決の実践的な部分を押さえると、次のようになります。
(1) 警察に相談しても解決できない
まず理解しておきたいのは、私道トラブルを警察に相談しても「民事不介入の原則」により取り合ってもらえないことです。
警察が取り扱えるのは道路交通法違反となるケースですが、私道には原則として道路交通法の適用はありません。
従って、私道に交通の妨害となるような物をみだりに置く行為(第76条第2項)をされたとしても、警察に取り締まってもらうことはできないのです。
(2)私道の所有者と交渉する
繰り返し説明するように、私道の通行トラブルは所有者と交渉するのが基本です。
ところで、私有地を通行される側としては、ただ単に気分が良くないというよりも「交通騒音で睡眠が妨害されるかもしれない」「事故を起こされて建物に被害が出るかもしれない」とのような心配をしています。こうした点を踏まえ、どういった権利や契約の話をするにせよ、双方気持ちよく敷地利用できる提案を考えるべきです。
(3)民事調停や訴訟を起こす
私道所有者との交渉がまとまらなければ、民事調停や訴訟で決着をつける他ありません。
この時、道路の状況・実際の交通状況・今後の通行の必要性等について、詳細な資料を証拠として提出する必要があります。他に、土地を譲渡または相続した時の資料も必要でしょう。
全てを自力で揃えるには多くの労力が必要で、不足が生じるかもしれません。
そこで検討したいのが、弁護士への相談です。
配信: LEGAL MALL