家賃の値上げはどこまで可能?大家さん必読「合法的な家賃値上げ」の方法

家賃の値上げはどこまで可能?大家さん必読「合法的な家賃値上げ」の方法

3、合法手順によってもスムーズにいかない場合の解決方法

大家さんがいくら合法的に手続きを進めても、借主が支払拒否などをすればどうしようもありません。

これらトラブルを解決するには、調停や訴訟といった法的手続きを使う必要があります。

(1)家賃のトラブルは法的手続きで解決できる

家賃に関するトラブルを話し合いだけで解決するのは難しいのが現実です。

家賃の問題は借地借家法などの法律で規律されているので、いざというときは法的手続きで解決しましょう。

(2)調停前置主義

家賃の値上げや値下げに関する問題を法的手続きで解決する場合、訴訟ではなく、まず調停の申立てをしなければなりません(民事調停法第24条の2)。

これを調停前置主義といいます。

調停では当事者や裁判官、書記官などのほかに、民間から選ばれた2名以上の調停委員が同席し、知恵を出し合いながらトラブル解決に向けた話し合いを行います。

調停は、訴訟のような「原告VS被告」といった対立関係ではなく、当事者同士の話し合いでの解決を目指すものですので、「借主はどのくらいの値上げなら応じられるか」を軸に妥協点を探ることになります。

(3)調停が成立しなければ訴訟へ

調停での話し合いがまとまらない場合、それでも家賃の値上げを借主に請求するためには、訴訟に場を移し、大家さんの主張の正当性を証拠によって証明する必要があります。

(4)経験豊富な弁護士を代理人に立てることがポイント

調停では家賃トラブルに詳しく、豊富な経験を有している弁護士を代理人に立てましょう。

先ほど説明したように、調停は訴訟のように証拠によって白黒をつける手続きではありません。

しかし、大家側としては家賃を希望どおりの金額まで値上げすることを目標にするのですから、そのためには「値上げに法的な合理性があることを説得できること」がどうしても必要です。

このような説得を成し遂げるには、借地借家問題に関する知識だけでなく、言葉で相手を納得させる技量を持った弁護士でないと難しいといえます。

調停が不調に終わり訴訟に移行した場合はなおさらです。裁判実務の知識をもたない大家さんが、弁護士を立てずに訴訟で勝訴することは非常に困難ですので、経験豊富な弁護士を代理人に立てるべきであるといえます。

4、家賃値上げを強行するとどうなる?

ここまで家賃の値上げを合法的に行う方法を解説してきましたが、非合法に値上げを強行する方法はあるのでしょうか?

(1)事前通知せずに家賃を値上げしても無効

借主に事前通知をせず、いきなり家賃を値上げをしようとしても、合意が存在しない以上、無効であるといえます。

(2)借主が値上げに同意しない場合、むりやり同意させる方法はある?

借主が家賃の値上げに同意しないからといって、脅迫や暴行、詐欺的言動によって同意させたりすれば、損害賠償責任(強迫・詐欺による不法行為)や刑事罰(強要罪、脅迫罪、詐欺罪)を問われるおそれがあります。

(3)借主が値上げに同意しない場合、法的手続き以外で確実に支払わせる方法はある?

借主が合意しない場合に、法的手続きを取らずに確実に家賃を支払わせる方法は基本的にはありません。

大家さんは地道に説得をくり返すしかないのです。

値上げに応じてくれる可能性を少しでも上げるためにも、説得の際は次の2つのポイントを実践するようにしましょう。

①大家さん自身が顔を見せてお願いする

値上げをお願いする際は、必ず大家さん本人が借主に顔を見せて、自分の言葉で説明することが大切です。

値上げの理由を自分の言葉で上手に説明する自信がない場合は、不動産管理会社のスタッフに説明を任せても構いませんが、その場に同席して「お願いします」と頭を下げることは絶対に必要です。

もちろん、いつも家賃を支払ってくれていることへの感謝の気持ちをしっかり伝えることもお忘れなく。

感謝の気持ちを忘れ、「家賃は支払って当然」といった横柄な態度を見せてしまうと、「納得できる理由があるなら値上げも仕方ないかな」と考えていた借主が、「なんかイヤな感じ……やっぱり値上げには反対する!」と態度を硬化させてしまうかもしれません。

②他の借主も同意していることを示す

日本は良くも悪くも、共同体意識や同調圧力が個人の意思決定に強く影響する社会です。

「他の借主はみな値上げに同意している」という事実をつきつけられると、自分だけ反対している状態が悪いことであるかのように感じてしまうため、借主が根負けし、値上げを受け入れてくれるかもしれません。

関連記事: